2009年10月25日
底質環境基準
'''底質の環境基準'''(ていしつのかんきょうきじゅん)とは、水底の底質について国が定めている環境基準のこと。現在、ダイオキシン類(150pg-TEQ/g)についてのみが定められている。底質には有害物質が蓄積されており食物連鎖を通じて人への健康被害が生じており、生態系への顕著な影響が知られている。重金属や環境ホルモン等の有害物質に基準が求められている。
== 内容 ==
[[ダイオキシン類]]のみが定められている。
=== ダイオキシン類 ===
ダイオキシン類対策特別措置法に基づく、ダイオキシン類による水底の底質の汚染に係る環境上の条件につき人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準である。
* 媒体:水底の底質
* 基準:150pg-TEQ/g以下
* 測定方法:水底の底質中に含まれるダイオキシン類をソックスレー抽出し、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法
== 底質の環境中の濃度に係るその他の基準 ==
=== 暫定除去基準 ===
「底質暫定除去基準」として水銀とポリ塩化ビフェニル(PCB)が定められている。
=== 水産用水基準による底質の基準 ===
*河川および湖沼では、有機物などによる汚泥床、みずわたなどの発生をおこさないこと。
*海域では乾泥として化学的酸素要求量(COD)(アルカリ性法)は20mg/g乾泥以下、硫化物は0.2mg/g乾泥以下、ノルマルヘキサン抽出物質0.1%以下であること
*微細な懸濁物が岩面、礫、または砂利などに付着し、[[種苗]]の着生、発生あるいはその発育を妨げないことなどとされている。
*海域では乾泥としてCODOH(アルカリ性法)は20mg/g乾泥以下、硫化物は0.2mg/g乾泥以下、ノルマルヘキサン抽出物質0.1%以下であること。
*海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に定められた溶出試験(昭和48年2月17日環境庁告示第14号)により得られた検液中の有害物質のうち水産用水基準で基準値が定められている物質については、水産用水基準の基準値の10倍を下回ること。ただし、カドミウム、PCBについては溶出試験で得られた検液中の濃度がそれぞれの化合物の検出下限値を下回ること。
*ダイオキシン類の濃度は150pgTEQ/gを下回ること。
=== 水底土砂判定基準 ===
環境中の濃度を示すものではないが、浚渫した土砂(底質)を海面[[埋立]]または[[海洋投入]]するにあたって定められている基準として、「水底土砂に係る判定基準」がある。
== 底質の環境基準の必要性 ==
底質汚染は水俣病の事例のように食物連鎖を通してヒトの健康被害が懸念されている。今後、早急に鉛やヒ素などの重金属類やテトラクロロエチレンなどの揮発性有機化合物さらにPOPs農薬などの有害物質に関する底質環境基準を定めることが必要であるとされている。
== 底質の環境中の濃度の評価について ==
=== 土壌環境基準との比較 ===
底質を浚渫して陸上に上げると土壌となる。底質は土壌の一部であるという考え方もあるが、統一されていない。
しかし、底質汚染が土壌汚染と比べて健康リスクは高いが、人の健康の保護に関する水質環境基準に定められている物質について、地下水の水質汚濁に係る環境基準や、土壌の汚染に係る環境基準が定められているのに対し、現在底質の環境基準は定められていない。
なお、土壌の汚染に係る環境基準は、汚染された土壌から地下水等への溶出の観点から上記の溶出量の基準が定められているほか、農作物に対する影響および農作物に蓄積して人の健康に影響を及ぼす観点から含有量の基準が定められている。
ダイオキシン類については、土壌環境基準値が1,000pg-TEQ/gとなっており、底質環境基準値がその15%となっている。
=== 底生生物と有害物質の関係 ===
平成14年に港湾底泥調査が国の機関により実施され、[[重金属]]濃度と[[底生生物]]の種類数との相関関係が公開されている。底生生物の種類が比較的豊富である限界の濃度であるERLの含有量値を下記に示す。
水銀:0.1mg/kg乾泥
カドミウム:1mg/kg乾泥
銅:34mg/kg乾泥
鉛:46.7mg/kg乾泥
ニッケル:20mg/kg乾泥
クロム:80mg/kg乾泥
亜鉛:150mg/kg乾泥
特に、カドミウム・鉛・水銀についてはERLを超過した底質には底生生物が激減することが公開されている。含有量値と溶出量値との明確な相関関係は認められないが、底生生物が水生生物と同程度の感受性を持ち、エラからの吸収による影響が主体的であれば水産用水基準水質環境基準の近似値が一つの目標となる。
ERL(effects range-low):悪影響があるとした報告例のうち低濃度側から10 パーセンタイル値の濃度(最小影響範囲:底生生物の種類が豊富である限界の濃度)
ERM(effects range-median):悪影響があるとした報告例のうち低濃度側から10 パーセンタイル値の濃度(確実な影響範囲:底生生物がほとんどいない濃度)
ERL以上ERM未満の濃度は潜在影響範囲と呼ばれている。
この手法は底質評価のガイドライン値を提供するものであり、カナダ国家底質ガイドラインおよび、フロリダ州の底質ガイドライン開発の基礎として利用されているほかロサンゼルス・ロングビーチ港で適用されている。
=== 溶出量値 ===
前述したERLにおける含有量値と溶出量値との明確な相関関係は認められないが、底生生物が水生生物と同程度の感受性を持ち、エラからの吸収による影響が主体的であれば水産用水基準(水質環境基準の近似値)が一つの目標となる。
なお、亜鉛の水生生物保全のための環境基準は0.02mg/Lである。|また、河川や港湾の底から地下水へ浸透しているので、地下水の環境基準を基本とした土壌環境基準を底質の環境基準として取り組んでる。
== 外部リンク ==
ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準
化学物質と環境(年次報告書)
ダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質の汚濁のうち水底の底質の汚染に係る環境基準の設定等について(答申)
4 . 基準値(1)基本的考え方 底質中ダイオキシン類が人の健康に影響を及ぼす恐れは、魚介類への取り込み並びに底質から水への巻き上げ及び溶出の2つの影響経路からが考えられる。
?魚介類への取り込みを考慮する方式について
ダイオキシン類については国民摂取実態から魚介類を経由した摂取が多いことが既知の事実であり、また、平成11年度に環境庁が行った調査では、底質中ダイオキシン類濃度と魚介類中ダイオキシン類濃度との関係においては、相関係数が小さいながらも有意な正の相関があることが分かっている。
他方、ダイオキシン類については、国民の平均的なダイオキシン類摂取量が耐容一日摂取量(Tolerable Daily Intake。以下「TDI」という。)に比較して小さく、バランスのとれた食事が大切と整理されている。また、食品としての魚介類の許容上限値が定められていない。
このため、現時点では、対策実施のための底質環境基準の設定において、基準値導出に必要な諸条件が不足しており、この観点から数値を設定することは困難な状況にある。
?水への影響を考慮する方式について
底質中ダイオキシン類は、ダイオキシン類の水への供給源(汚染源)となっており、その影響の程度を勘案して設定するという方式については、底泥中の間隙水の濃度に着目して底質濃度を規定する分配平衡法と、実際にダイオキシン類に汚染された底泥を用いて水への振とう分配試験を行い、水質への影響を考慮する方法の2種類がある。
他にも様々な手法が考えられるが、現時点でデータが得られており、算定が可能な手法として、本報告では、これら両者の手法を勘案して環境基準値を設定することとした。
(2)設定手法
?分配平衡法
底質の間隙水中の化学物質濃度は底質の固相における濃度と平衡状態を形成しており、底質固相の濃度は底質の有機物濃度によって変動する。
つまり、平衡条件下にある底質と水との間の化学物質の分配係数は、?固相中濃度と間隙水濃度との比、及び?有機炭素と水との分配係数と、底質の有機炭素の割合との積、の2つの方法で表すことができる。模式的には、下記の(1)式の様に書くことができる。
Kp = Cs / Cd = foc・Koc (1)
Kp : 底質中、固相と間隙水の分配係数
Cs : 固相の化学物質濃度
Cd : 間隙水中の化学物質濃度
foc : 有機炭素割合(%)
Koc : 有機炭素と水との分配係数(cm3/g org.C)
log Kocは、log Kow(オクタノール-水分配係数)を変数として換算式から算定することができる。換算式としては複数の学説があるが、本報告では、
?PCBのlog Kowの値を主に解析しており、
?諸外国で底質基準値を水質環境基準
値から導出する際に実際に用いられている、下記の式を用いるものとした。
log Koc = 1.03 × log Kow ― 0.61
log Kowの値は、ダイオキシン類の異性体ごとに異なっており、概ね6〜8であるが、本報告では、米Federal Register(1995年3月23日付)に掲載された、栄養連鎖上、濃縮係数が最も大きいとされるlog Kowの数値である6.9を用いるものとする。
log Koc = 6.50
(1)式は下記の様に書くことができる。
( Cs×(1/foc) )/ Cd = Koc (2)
間隙水濃度に水質環境基準値である1pg-TEQ/L(1×10-3pg-TEQ/ml)、有機炭素濃度を5%(同手法を用いる独仏と同じ数値)とし、代入すると、
Cs = 157 pg-TEQ/g
となり、概ね、150pg-TEQ/gとなる。
※ 平成11年度に環境庁が実施した調査結果では、例えば、東京湾の調査地点(20地点)の底質に含まれるダイオキシン類について、異性体ごとに毒性等量換算後の重み付けをして計算したところ、log Kow の数値の範囲は6.9〜7.2であった。
※ 間隙水濃度については、底質からの水への移行のみを考えた場合に水質濃度は底質間隙水濃度を超えないこと、また、底生生物への影響を考慮し、水質環境基準濃度とした。
? 振とう分配試験結果
高濃度のダイオキシン類を含む底質からの、水質への巻き上げ及び溶出の程度を把握するため、平成13年度に環境省において高濃度の底泥の振とう分配試験を実施し、その結果を検討した。
試験対象底泥として、国内の海域及び河川からそれぞれ2検体を採取し、振とう分配試験を行い、試験水中のSS濃度を通常状態まで低減させた場合を計算した。この結果、試験水濃度が水質環境基準である1pg-TEQ/Lに対応する底質濃度の全試験結果の平均値は196pg-TEQ/g であった。
(3)数値
(2)?及び?の結果を比較すると、?の振とう分配試験結果から導出した数値は、?の分配平衡法で導出した値と比較して大きい数値である。
一方、振とう分配試験結果の解析は現時点で得られているデータに基づくものであり、多様な底泥の全てを代表しているとは断言できないことを勘案し、?及び?の結果から、ダイオキシン類の底質環境基準値は150pg-TEQ/g とすることが適当である。
(4)一日摂取量との関係
ダイオキシン類については、食品としての魚介類の許容上限値が定められていないが、他方、国民の平均的なダイオキシン類摂取量については毎年調査が実施されていることから、これらの結果を用いて、本報告で提案する底質環境基準値まで対策を実施した場合の、ダイオキシン類の一日摂取量の試算を行った。
平成12年度におけるダイオキシン類常時監視結果から、底質150pg-TEQ/g 以上の濃度地点について、提案している基準値150pg-TEQ/g まで濃度を低減させた場合、全体の底質濃度の平均値は、計算上、現行の9.6 pg-TEQ/gから7.8pg-TEQ/g となる。
魚介類摂取量のうち、内海魚及び外海魚のダイオキシン類の平均濃度を平成10〜12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告及び野菜、魚介等個別食品中ダイオキシン類濃度等に関する調査研究報告から計算する。
更に、内海魚と外海魚の摂取割合を仮定し、また、内海魚からの摂取量が底質濃度の低減に比して低減すると仮定した場合の、魚介類を経由したダイオキシン類の平均一日摂取量を計算、この結果から、食品経由でのダイオキシン類の平均一日摂取量を推定すると、1.7pg-TEQ/kg/day となる。
※ これらの計算には下記の数値を用いた。
?内海魚及び外海魚平均濃度
平成10〜12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告における野菜、魚介等個別食品中ダイオキシン類濃度等に関する調査研究報告に示された個別食品毎の濃度結果から計算し、内海魚平均2.0pg-TEQ/g、外海魚平均1.2pg-TEQ/g とした。この場合、摂取重量割合を勘案した平均値は1.4pg-TEQ/g となる。
なお、平成10〜12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告によれば、魚介類からの摂取量は71pg-TEQ/day であり、単純に魚介類一日摂取重量の3カ年平均値でこの数値を除すと、0.74pg-TEQ/g となる。
?内海魚と外海魚の摂取重量割合
内海魚4分の1、外海魚4分の3とした。
?1日魚介類平均摂取量
平成9〜11年国民栄養調査結果から、平均96gとした。
?体重
50kgとした。
?魚介類からのダイオキシン類の摂取割合
平成12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告から、76%とした。
5.適用
ダイオキシン類の底質環境基準については、人の健康の保護という観点から見た場合、間接的に飲料水及び魚介類経由の食物摂取による影響を考慮する必要があることから、他の健康項目同様、河川、湖沼、海域を問わず、全公共用水域に適用することが適当である。
6.達成期間
ダイオキシン類については、多様な経路を経て人体に摂取されるため、環境媒体間における移行による時間的遅れ等の要素を考慮すれば、「可及的速やかにその達成維持に努める」等とすることが適当である。
参考となるパワーポイント底質汚染対策の過去・現在・将来 有害物質に関する基準と底質対策
このパワーポイントは、「環境技術支援ネットワーク」及び「おおさかATCグリーンエコプラザ水・土壌汚染研究部会」主催のセミナーで、東京農工大学細見正明教授が2007年に講演されたものです。
http://www.ts-net.or.jp/files/070601_teisitsu.pdf
重金属による底質汚染と重金属底質環境基準のありかた
おおさかATCグリーンエコプラザ水・土壌汚染研究部会オフシャルブログより
底生生物が明らかに減少する重金属濃度は下記の通りです。
水 銀:0.15mg/kg
カドミウム:1.2mg/kgを
ク ロ ム:81mg/kg
亜 鉛:150mg/kg
ダイオキシン類:21.5pg-TEQ/g
http://atcwsr.earthblog.jp/e110975.html
== 内容 ==
[[ダイオキシン類]]のみが定められている。
=== ダイオキシン類 ===
ダイオキシン類対策特別措置法に基づく、ダイオキシン類による水底の底質の汚染に係る環境上の条件につき人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準である。
* 媒体:水底の底質
* 基準:150pg-TEQ/g以下
* 測定方法:水底の底質中に含まれるダイオキシン類をソックスレー抽出し、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法
== 底質の環境中の濃度に係るその他の基準 ==
=== 暫定除去基準 ===
「底質暫定除去基準」として水銀とポリ塩化ビフェニル(PCB)が定められている。
=== 水産用水基準による底質の基準 ===
*河川および湖沼では、有機物などによる汚泥床、みずわたなどの発生をおこさないこと。
*海域では乾泥として化学的酸素要求量(COD)(アルカリ性法)は20mg/g乾泥以下、硫化物は0.2mg/g乾泥以下、ノルマルヘキサン抽出物質0.1%以下であること
*微細な懸濁物が岩面、礫、または砂利などに付着し、[[種苗]]の着生、発生あるいはその発育を妨げないことなどとされている。
*海域では乾泥としてCODOH(アルカリ性法)は20mg/g乾泥以下、硫化物は0.2mg/g乾泥以下、ノルマルヘキサン抽出物質0.1%以下であること。
*海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に定められた溶出試験(昭和48年2月17日環境庁告示第14号)により得られた検液中の有害物質のうち水産用水基準で基準値が定められている物質については、水産用水基準の基準値の10倍を下回ること。ただし、カドミウム、PCBについては溶出試験で得られた検液中の濃度がそれぞれの化合物の検出下限値を下回ること。
*ダイオキシン類の濃度は150pgTEQ/gを下回ること。
=== 水底土砂判定基準 ===
環境中の濃度を示すものではないが、浚渫した土砂(底質)を海面[[埋立]]または[[海洋投入]]するにあたって定められている基準として、「水底土砂に係る判定基準」がある。
== 底質の環境基準の必要性 ==
底質汚染は水俣病の事例のように食物連鎖を通してヒトの健康被害が懸念されている。今後、早急に鉛やヒ素などの重金属類やテトラクロロエチレンなどの揮発性有機化合物さらにPOPs農薬などの有害物質に関する底質環境基準を定めることが必要であるとされている。
== 底質の環境中の濃度の評価について ==
=== 土壌環境基準との比較 ===
底質を浚渫して陸上に上げると土壌となる。底質は土壌の一部であるという考え方もあるが、統一されていない。
しかし、底質汚染が土壌汚染と比べて健康リスクは高いが、人の健康の保護に関する水質環境基準に定められている物質について、地下水の水質汚濁に係る環境基準や、土壌の汚染に係る環境基準が定められているのに対し、現在底質の環境基準は定められていない。
なお、土壌の汚染に係る環境基準は、汚染された土壌から地下水等への溶出の観点から上記の溶出量の基準が定められているほか、農作物に対する影響および農作物に蓄積して人の健康に影響を及ぼす観点から含有量の基準が定められている。
ダイオキシン類については、土壌環境基準値が1,000pg-TEQ/gとなっており、底質環境基準値がその15%となっている。
=== 底生生物と有害物質の関係 ===
平成14年に港湾底泥調査が国の機関により実施され、[[重金属]]濃度と[[底生生物]]の種類数との相関関係が公開されている。底生生物の種類が比較的豊富である限界の濃度であるERLの含有量値を下記に示す。
水銀:0.1mg/kg乾泥
カドミウム:1mg/kg乾泥
銅:34mg/kg乾泥
鉛:46.7mg/kg乾泥
ニッケル:20mg/kg乾泥
クロム:80mg/kg乾泥
亜鉛:150mg/kg乾泥
特に、カドミウム・鉛・水銀についてはERLを超過した底質には底生生物が激減することが公開されている。含有量値と溶出量値との明確な相関関係は認められないが、底生生物が水生生物と同程度の感受性を持ち、エラからの吸収による影響が主体的であれば水産用水基準水質環境基準の近似値が一つの目標となる。
ERL(effects range-low):悪影響があるとした報告例のうち低濃度側から10 パーセンタイル値の濃度(最小影響範囲:底生生物の種類が豊富である限界の濃度)
ERM(effects range-median):悪影響があるとした報告例のうち低濃度側から10 パーセンタイル値の濃度(確実な影響範囲:底生生物がほとんどいない濃度)
ERL以上ERM未満の濃度は潜在影響範囲と呼ばれている。
この手法は底質評価のガイドライン値を提供するものであり、カナダ国家底質ガイドラインおよび、フロリダ州の底質ガイドライン開発の基礎として利用されているほかロサンゼルス・ロングビーチ港で適用されている。
=== 溶出量値 ===
前述したERLにおける含有量値と溶出量値との明確な相関関係は認められないが、底生生物が水生生物と同程度の感受性を持ち、エラからの吸収による影響が主体的であれば水産用水基準(水質環境基準の近似値)が一つの目標となる。
なお、亜鉛の水生生物保全のための環境基準は0.02mg/Lである。|また、河川や港湾の底から地下水へ浸透しているので、地下水の環境基準を基本とした土壌環境基準を底質の環境基準として取り組んでる。
== 外部リンク ==
ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準
化学物質と環境(年次報告書)
ダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質の汚濁のうち水底の底質の汚染に係る環境基準の設定等について(答申)
4 . 基準値(1)基本的考え方 底質中ダイオキシン類が人の健康に影響を及ぼす恐れは、魚介類への取り込み並びに底質から水への巻き上げ及び溶出の2つの影響経路からが考えられる。
?魚介類への取り込みを考慮する方式について
ダイオキシン類については国民摂取実態から魚介類を経由した摂取が多いことが既知の事実であり、また、平成11年度に環境庁が行った調査では、底質中ダイオキシン類濃度と魚介類中ダイオキシン類濃度との関係においては、相関係数が小さいながらも有意な正の相関があることが分かっている。
他方、ダイオキシン類については、国民の平均的なダイオキシン類摂取量が耐容一日摂取量(Tolerable Daily Intake。以下「TDI」という。)に比較して小さく、バランスのとれた食事が大切と整理されている。また、食品としての魚介類の許容上限値が定められていない。
このため、現時点では、対策実施のための底質環境基準の設定において、基準値導出に必要な諸条件が不足しており、この観点から数値を設定することは困難な状況にある。
?水への影響を考慮する方式について
底質中ダイオキシン類は、ダイオキシン類の水への供給源(汚染源)となっており、その影響の程度を勘案して設定するという方式については、底泥中の間隙水の濃度に着目して底質濃度を規定する分配平衡法と、実際にダイオキシン類に汚染された底泥を用いて水への振とう分配試験を行い、水質への影響を考慮する方法の2種類がある。
他にも様々な手法が考えられるが、現時点でデータが得られており、算定が可能な手法として、本報告では、これら両者の手法を勘案して環境基準値を設定することとした。
(2)設定手法
?分配平衡法
底質の間隙水中の化学物質濃度は底質の固相における濃度と平衡状態を形成しており、底質固相の濃度は底質の有機物濃度によって変動する。
つまり、平衡条件下にある底質と水との間の化学物質の分配係数は、?固相中濃度と間隙水濃度との比、及び?有機炭素と水との分配係数と、底質の有機炭素の割合との積、の2つの方法で表すことができる。模式的には、下記の(1)式の様に書くことができる。
Kp = Cs / Cd = foc・Koc (1)
Kp : 底質中、固相と間隙水の分配係数
Cs : 固相の化学物質濃度
Cd : 間隙水中の化学物質濃度
foc : 有機炭素割合(%)
Koc : 有機炭素と水との分配係数(cm3/g org.C)
log Kocは、log Kow(オクタノール-水分配係数)を変数として換算式から算定することができる。換算式としては複数の学説があるが、本報告では、
?PCBのlog Kowの値を主に解析しており、
?諸外国で底質基準値を水質環境基準
値から導出する際に実際に用いられている、下記の式を用いるものとした。
log Koc = 1.03 × log Kow ― 0.61
log Kowの値は、ダイオキシン類の異性体ごとに異なっており、概ね6〜8であるが、本報告では、米Federal Register(1995年3月23日付)に掲載された、栄養連鎖上、濃縮係数が最も大きいとされるlog Kowの数値である6.9を用いるものとする。
log Koc = 6.50
(1)式は下記の様に書くことができる。
( Cs×(1/foc) )/ Cd = Koc (2)
間隙水濃度に水質環境基準値である1pg-TEQ/L(1×10-3pg-TEQ/ml)、有機炭素濃度を5%(同手法を用いる独仏と同じ数値)とし、代入すると、
Cs = 157 pg-TEQ/g
となり、概ね、150pg-TEQ/gとなる。
※ 平成11年度に環境庁が実施した調査結果では、例えば、東京湾の調査地点(20地点)の底質に含まれるダイオキシン類について、異性体ごとに毒性等量換算後の重み付けをして計算したところ、log Kow の数値の範囲は6.9〜7.2であった。
※ 間隙水濃度については、底質からの水への移行のみを考えた場合に水質濃度は底質間隙水濃度を超えないこと、また、底生生物への影響を考慮し、水質環境基準濃度とした。
? 振とう分配試験結果
高濃度のダイオキシン類を含む底質からの、水質への巻き上げ及び溶出の程度を把握するため、平成13年度に環境省において高濃度の底泥の振とう分配試験を実施し、その結果を検討した。
試験対象底泥として、国内の海域及び河川からそれぞれ2検体を採取し、振とう分配試験を行い、試験水中のSS濃度を通常状態まで低減させた場合を計算した。この結果、試験水濃度が水質環境基準である1pg-TEQ/Lに対応する底質濃度の全試験結果の平均値は196pg-TEQ/g であった。
(3)数値
(2)?及び?の結果を比較すると、?の振とう分配試験結果から導出した数値は、?の分配平衡法で導出した値と比較して大きい数値である。
一方、振とう分配試験結果の解析は現時点で得られているデータに基づくものであり、多様な底泥の全てを代表しているとは断言できないことを勘案し、?及び?の結果から、ダイオキシン類の底質環境基準値は150pg-TEQ/g とすることが適当である。
(4)一日摂取量との関係
ダイオキシン類については、食品としての魚介類の許容上限値が定められていないが、他方、国民の平均的なダイオキシン類摂取量については毎年調査が実施されていることから、これらの結果を用いて、本報告で提案する底質環境基準値まで対策を実施した場合の、ダイオキシン類の一日摂取量の試算を行った。
平成12年度におけるダイオキシン類常時監視結果から、底質150pg-TEQ/g 以上の濃度地点について、提案している基準値150pg-TEQ/g まで濃度を低減させた場合、全体の底質濃度の平均値は、計算上、現行の9.6 pg-TEQ/gから7.8pg-TEQ/g となる。
魚介類摂取量のうち、内海魚及び外海魚のダイオキシン類の平均濃度を平成10〜12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告及び野菜、魚介等個別食品中ダイオキシン類濃度等に関する調査研究報告から計算する。
更に、内海魚と外海魚の摂取割合を仮定し、また、内海魚からの摂取量が底質濃度の低減に比して低減すると仮定した場合の、魚介類を経由したダイオキシン類の平均一日摂取量を計算、この結果から、食品経由でのダイオキシン類の平均一日摂取量を推定すると、1.7pg-TEQ/kg/day となる。
※ これらの計算には下記の数値を用いた。
?内海魚及び外海魚平均濃度
平成10〜12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告における野菜、魚介等個別食品中ダイオキシン類濃度等に関する調査研究報告に示された個別食品毎の濃度結果から計算し、内海魚平均2.0pg-TEQ/g、外海魚平均1.2pg-TEQ/g とした。この場合、摂取重量割合を勘案した平均値は1.4pg-TEQ/g となる。
なお、平成10〜12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告によれば、魚介類からの摂取量は71pg-TEQ/day であり、単純に魚介類一日摂取重量の3カ年平均値でこの数値を除すと、0.74pg-TEQ/g となる。
?内海魚と外海魚の摂取重量割合
内海魚4分の1、外海魚4分の3とした。
?1日魚介類平均摂取量
平成9〜11年国民栄養調査結果から、平均96gとした。
?体重
50kgとした。
?魚介類からのダイオキシン類の摂取割合
平成12年度ダイオキシン類の食品経由総摂取量調査研究報告から、76%とした。
5.適用
ダイオキシン類の底質環境基準については、人の健康の保護という観点から見た場合、間接的に飲料水及び魚介類経由の食物摂取による影響を考慮する必要があることから、他の健康項目同様、河川、湖沼、海域を問わず、全公共用水域に適用することが適当である。
6.達成期間
ダイオキシン類については、多様な経路を経て人体に摂取されるため、環境媒体間における移行による時間的遅れ等の要素を考慮すれば、「可及的速やかにその達成維持に努める」等とすることが適当である。
参考となるパワーポイント底質汚染対策の過去・現在・将来 有害物質に関する基準と底質対策
このパワーポイントは、「環境技術支援ネットワーク」及び「おおさかATCグリーンエコプラザ水・土壌汚染研究部会」主催のセミナーで、東京農工大学細見正明教授が2007年に講演されたものです。
http://www.ts-net.or.jp/files/070601_teisitsu.pdf
重金属による底質汚染と重金属底質環境基準のありかた
おおさかATCグリーンエコプラザ水・土壌汚染研究部会オフシャルブログより
底生生物が明らかに減少する重金属濃度は下記の通りです。
水 銀:0.15mg/kg
カドミウム:1.2mg/kgを
ク ロ ム:81mg/kg
亜 鉛:150mg/kg
ダイオキシン類:21.5pg-TEQ/g
http://atcwsr.earthblog.jp/e110975.html
Posted by 大阪水・土壌研究会員 at 19:38│Comments(0)
│底質汚染分科会