2009年11月07日
生物多様性EXPO 2010 in 大阪
生物多様性EXPO 2010 in 大阪
〜地球のいのち、つないでいこう〜

開催日時
平成22年3月20日(土)〜21日(日)10:00〜17:00(設営:19日/撤去:21日)
会場
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)?
〒530-0005 大阪市北区中之島5-3-51
展示会場 :3F イベントホール、
セミナー会場:12F 1202会議室 出展小間数 約170小間(約170法人、団体、自治体)
主催 環境省
生物多様性とは
仕事や勉強の手をちょっと休めて外を眺めてみると、コナラの木が風に揺れ、モズの高鳴きが聞こえてきます。植物や鳥、昆虫、魚、土の中の微生物まで、地球上には500万種から3000万種もの生き物が存在するといわれています。
多様な種は食物連鎖や共生などの関係を保ちながら生態系のネットワークを作っています。砂漠の生態系もあれば、熱帯雨林の生態系もあります。同じ種でも、黒部川と信濃川のイワナが遺伝的に違うように、遺伝子にも多様性があります。こうした地球上の多種多様な生き物のつながりを「生物多様性」と呼びます。
生物多様性はいま危機に陥っています。現在わかっている地球上の生物の種は164万2189種。そのうち4万4838種を調べたところ、約40%に当たる1万6928種が絶滅の危機に瀕していることがわかりました。開発による生息地の減少や、乱獲、化学物質による大気や水の汚染、地球温暖化に伴う環境の変化など、人間活動が大きな原因になっています。
ウグイスやハチがいなくなっても、私たちの生活とは関係ないと思っていませんか?実は生物多様性は私たちの暮らしと密接にかかわっています。今日使った紙やテーブルは、東南アジアの天然木を加工して作られたものかもしれません。医薬品や化粧品は森の中の微生物を利用して製造されたものかもしれません。果物や野菜はハチが受粉してくれています。おいしい水が飲めるのも、森が水を涵養し濾過してくれるからです。森は洪水や気候も調節してくれます。人間はこうした生物多様性の恵みなしには生きていけません。
生物多様性が失われれば、食料危機や水不足に陥ったり、自然資源を持続可能に利用できなくなる恐れがあります。企業にとっては商品(製品)の原材料となる食料や微生物、森林資源や鉱物資源を持続的に調達できなくなり、経営リスクにつながりかねません。
かけがえのない生物多様性を守るために私たちは何ができるのでしょうか。企業は生産工程の上流から下流で生物多様性に負荷を与えない配慮が求められます。たとえ合法な原材料でも、生物多様性上、保護価値の高い木材や魚などの原材料なら、使用しないことが肝心です。工場を建設する際に里山の生物多様性を破壊しない注意も必要でしょう。
都市に暮らす人々は、日常の消費行動を見直すことで生物多様性の保全に貢献できます。「レインフォレストアライアンス」認証など生物多様性を守るコーヒー農園を認証したコーヒーや、希少種など森林生態系を保全するFSC(森林管理協議会)認証の紙や家具を購入するなど、消費で応援することも大事でしょう。自然の中に出かけて自然の恵みを体感することも大切です。
開催趣旨
2010年は、国連が定める『国際生物多様性年』であるとともに、生物多様性条約の『2010年目標の年』でもあるなど、生物多様性にとって大変重要な節目の年です。そして、来年10月には、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が愛知県名古屋市で開催されることが決定しています。
この会議は世界各地から約1万人が参加するもので、今世紀に入って国内で開催される最大規模の国際会議です。COP10では、生物多様性への事業者の取り組みについても活発に議論されると予測され、開催国及び議長国である日本には、国際的なイニシアティブの発揮が求められています。
COP10を目前に、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する事業者の役割について世界の関心が高まる中、国内では生物多様性についての認識が十分浸透しているとはいえません。
地球環境問題と密接に関連しあいながらも、環境問題の中でも難しく捉えられ、理解が進んでいないのが現状です。 事業者の取り組みも、現状では未だ一部の先進企業にとどまり、国内の取り組みは、まだこれからの段階です。
生物多様性がもたらす様々な恩恵は、すべての生物の生存基盤であり、私たちの暮らしにとってなくてはならないものです。従って、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する普及啓発と民間参画の取り組みが急務であり、企業だけでなく、地方公共団体、NPO、そして全ての生活者の参画が望まれるとともに、今後より継続的に活動を推進し、活性化していくことが求められています。このような現状の中、今回、福岡・大阪において、生物多様性をテーマとした初の総合的な展示会「生物多様性EXPO 2010」を開催する運びとなりました。
生物多様性に配慮した事業や研究に取り組む事業者やエコツーリズム等を通じて地域活性化を図る団体、さらには一般消費者が集い、これら関係団体の取り組みとその重要性の周知を加速するとともに、先進企業の取り組みを参考に、新たなビジネスチャンスとして捉えていただく場として、初の試みとなります。
景気低迷の折、様々な事業者が集うことで、新たな事業開拓の可能性と雇用の創出、一次産業の付加価値の発掘など、地域活性化を図ることも目的としています。これに先立ち、2009年10月〜12月の期間、仙台、名古屋、東京地区における環境関連の展示会などに、生物多様性ブースの出展を展開して参ります。
今後、国際社会に発表された温室効果ガス削減目標の実現、地球温暖化対策とあわせて、世界的に注目度の高い「生物多様性」に対する数々の取り組みの活性化に向け、初の総合展示会となる本事業に、ぜひご参加とご協力のほど宜しくお願い申し上げます。
http://biodiv-expo.jp/about/purpose.html

開催内容に関するメリット出展料は無料。コストパフォーマンスの高い出展が可能です。環境問題をテーマとした展示会は景気低迷の現状でも年々関心が高まっています。 事業者の生物多様性に取り組むべき方向性等についてマクロな動向から地域に密着した取り組みまで、多角的な情報収集・情報交換が可能です。
事業者向けのセミナーの実施や、有識者による生物多様性とビジネスに関するパネルディスカッションなどを実施します。 環境省が事業者等の取り組みの方向性についてまとめた「生物多様性民間参画ガイドライン」の説明会(福岡会場)も予定しています。
出展者名や活動内容に関する露出機会が拡大「生物多様性EXPO 2010 」公式ウェブサイトに出展者名と出展内容を掲載します。 来場者向け(当日配布)パンレットに出展者名を掲載します。 来場促進の施策一般および事業者の来場促進のための広報を徹底し、地元メディアを活用した効率的な開催広告を実施します。 日経グループの各メディアや、環境系雑誌広告などを活用し、ビジネスユーザーや、環境意識の高いユーザーへの開催告知を展開します。 開催地区のターミナル駅(福岡駅・梅田駅)にて、注目度の高い広告の大量掲出を行います。
ATCグリーンエコプラザ セミナーレポート 生物多様性国家戦略と企業への期待
■講師
環境省自然環境局 生物多様性地球戦略企画室長
亀澤 玲治氏
はじめに
地球上に生命が誕生したのは36〜38億年前であり、生物の大絶滅は現代までに5回あったとされています。そして、現在は第6回目の大絶滅時代を迎えています。
現在の大絶滅とこれまでの大絶滅時代との違いは、まず、絶滅のスピードがあげられます。恐竜時代は1000年に1種であったのに対し、現在は1年に4万種の勢いで絶滅しており、単純計算で恐竜時代の4000万倍のスピードです。また、これまでの絶滅の原因は、火山爆発説、隕石衝突説等とされていますが、現在の絶滅の原因のほとんどは人間活動の影響と考えられています。
日本でも、オオカミ、トキなどが絶滅していますが、具体的に人間への影響はないとお考えになられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、人間は自然界(生物多様性)から多くの恵みを得ており、また、因果関係が複雑で人間がわからないことも多いため、むやみに絶滅させてよいわけはありません。今の時代だけでなく、将来世代にわたる持続可能な利用を確保するためにも、特定の希少種の保護、限定的な自然の保護ではなく、より幅広い概念としての生物多様性保全が必要となってくるでしょう。
生物多様性とは
生物多様性には、3つのレベルの多様性があります。まずは生態系の多様性。日本の中でも干潟、サンゴ礁、湿原や森林など、いろいろなタイプの生態系があります。次に種の多様性。哺乳類をはじめ、鳥類、両生類、植物や微生物も含めて、それぞれに種は多様に存在しています。最後に種内の多様性です。同じ種でも、地域によりゲンジボタルの発光周期が違うことや、メガネトリバネアゲハの翅の色が生息する場所によって異なるなどの例が知られています。
つまり生物多様性とは、それぞれの地域に固有の自然があり、それぞれに特有のいきものがいる、そして、それぞれがつながっているということと言い換えることができるでしょう。
人間は、食料や木材ばかりでなく、実にいろいろな面において自然界から恵みを得ています。たとえば、インフルエンザ治療薬タミフルは中華料理の材料である八角からの抽出物が原料のひとつとなっており、抗がん剤の中にはニチニチソウやイチイから抽出することができるものもあります。さらに工業製品として、スズメバチのまゆから精製された「ホーネットシルク」は、スポンジ、繊維などとして利用されていますが、細胞が表面に付着しにくい特性を利用した高齢者の床ずれ治療用フィルムの開発など、今後、医療分野への応用が期待されています。
これら直接的なものばかりでなく、生物の形や機能の応用であるバイオミミクリーの面でも、生物多様性は、人間にとって未来の可能性を多く秘めていると言えるでしょう。たとえば、500系のぞみの先頭車両はカワセミのくちばしの形状を参考にしたとされており、蓮の葉の表面にある微細な凹凸が雨水をはじく機能は、塗料に応用されています。
ミレニアム生態系評価
このように人間に多くの恵みをもたらす生物多様性の状況を調べるため、2001年から2005年にかけて、国連の呼びかけで95カ国1400人の専門家が参加し、地球規模の生態系評価が行われました。その結果、すでに陸地面積の4分の1が耕地に、また漁獲対象種の4分の1は資源崩壊の危機にあることなどが報告されました。
また、結論の中では、食料、木材、水、気候安定など自然が人類に供給する機能(生態系サービス)の3分の2が世界中で低下しており、今後、必要な資源やサービスが不足し、採取等が規制されることなどにより、利用コストが大きくなる可能性が指摘されました。
この結果を踏まえ、生物多様性条約事務局が2010年目標(注:2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標)の進捗状況について15の指標により評価したものが、地球規模生物多様性概況第2版です。この概況によれば、15の指標のうち、12項目で悪化傾向となっており、2010年目標の達成は非常に厳しいとされています。
「民間の参画」に関する決議
2006年3月にブラジルで開かれた生物多様性条約第8回締約国会議(COP8)で、初めて民間企業の参画に関する決議が行われました。
その内容としては、民間部門の活動は、生物に重大な影響を与えているものの、条約実施への貢献が最も少ないこと。一方、民間部門の優良な取り組みが、条約実施に大幅な貢献をもたらす可能性があることであり、企業に求めることとして、以下のように決議されています。
2010年目標貢献のための自主的な取り組みについて報告すること
企業の経営方針や企業行動を条約の3つの目標(生物多様性保全・持続可能な利用・遺伝資源の利用による利益の公正衡平な配分)に適合させること
締約国会議や補助機関会合、専門家会合などの会合に参加すること
また、政府に対しては、民間部門への生物多様性の重要性の周知徹底、生物多様性国家戦略の作成への参加や条約達成に資する活動を民間に対して促すこととされました。
日本の生物多様性国家戦略
最初の日本の生物多様性国家戦略は、1995年に策定されました。1993年の生物多様性条約発効後2年以内という早い時期に策定した点、生物多様性という新しいキーワードのもとに関係各省が参画したという点については評価できますが、各省の施策の羅列になっていること、また作るのを急ぐあまり民間の意見聴取が不十分であるという批判もありました。また、公共事業関係の法令の環境面での見直しなども踏まえ、2002年に策定されたのが現行の新・生物多様性国家戦略です。
現行の生物多様性国家戦略の特徴として、まず、わが国の生物多様性の現状を3つの危機として整理したことが挙げられます。第1の危機は、いわゆる人間活動や開発による危機。第2の危機は、里地里山のように、人間が働きかけをすることで維持されていた生態系が、産業構造の変化などにより人間の働きかけが減少してきた危機。第3の危機は、ブラックバス等の外来生物による生態系のかく乱の危機です。それに対する今後取り組むべき3つの方向を、保全強化、自然再生、持続可能な利用とし、これらを踏まえて、重要地域の保全と生態的ネットワーク、里地里山の保全、自然再生をはじめとする7つの主要テーマを掲げています。
これらの取り組みを2002年より、各省と一緒に進めてきました。各主体の役割について書いた項目の中で、事業者および国民については「生物多様性の保全と持続的利用に対して自主的積極的に行動することが大切」とされているだけで、具体的な行動内容については触れられていません。現行の国家戦略の策定から5年が経ち、現在、その見直しを進めています。具体的な検討はこれからですが、見直しに当たっての視点として企業活動との関連で考えられることを書き出してみました。
生物多様性国家戦略の見直しに向けて
まず、地球規模の視点が必要という点です。特に日本は資源輸入大国の立場から、国内の自然資源の有効活用ができているかを見直すこと、また資源輸出国の生物多様性についても配慮していく必要があるでしょう。
また、生物多様性保全に対し、企業が具体的に何をすればよいか、何に気をつけるべきかをまとめたガイドラインの作成を考えています。国家戦略の中で作成を打ち出したあと、企業の意見も伺い、現実的な内容となるよう作成していきたいと思います。
普及広報については、企業というより、企業にお勤めの方を含めた広く国民全体ということですが、地域や学校活動への浸透と、一般向け広報の強化が必要であり、生物多様性の恵みを利用するという点では消費者としての意識を高めていければと考えています。
生物多様性保全と持続可能な利用に取り組む民間部門の例
民間部門でもすでにさまざまな取り組みが始まっています。
水産物のMSC認証マークは、持続可能な利用を考慮した漁場や漁法から得られる水産物について、その流通の過程での分別管理も確認した製品に付与されるマークであり、国内では、大手スーパーであるイオンがそのマークを貼ったキングサーモンやたらこなどを店頭に置き始めています。またFSC認証マークは、持続可能な森林の管理経営について認証されるもので、認証森林から産出された木材・木材製品について、流通過程も含めて管理されたものに認証マークが付与されています。
生物多様性保全のための企業の取り組み例としては、鹿島建設の生態系保全行動指針の策定や、全日空の「チーム美らさんご」、サントリー「水源林の保全」、三菱商事「サンゴ礁保全プロジェクト」などがあります。またCSRだけでなく本業で生物多様性保全に取り組んでいる例として、イオンのMSC認証製品の取り扱いのほか、カゴメで、トマトの受粉活動に従来利用していた外来種のハチを在来種に切り替えた例などがあります。民間部門の取り組みは、いまや植林、里山管理、サンゴ礁保全、外来種対策などいろいろな分野に広がっており、手法としても、資金援助や社員参加、原料調達など、多岐にわたっています。
環境報告ガイドライン
また、環境省では、環境報告書の普及に努めていますが、現在、環境報告書のガイドラインの中に生物多様性の保全の促進という項目を入れるべく改定作業を進めています。今後、生物多様性保全の視点から環境報告書に盛り込むべき情報としては、FSC認証を得た木材の利用や、希少種の生息地を保全した宅地開発など、いろいろな取り組みが考えられると思います。ここで例示した項目にどういうことが該当するかというのは、先に述べた企業活動ガイドラインの中でも、より具体的な内容を明示するよう考えていく予定です。
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)日本招致
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が2010年に開催されますが、この会議の日本招致が今年1月、閣議了解されました。2010年は、「2010年目標」の目標年でもあり、国連が定めた「生物多様性年」でもあるため、生物多様性にとって大きな節目の年になると思われます。
今年3月にドイツで行われたG8サミットの環境大臣会合では、生物多様性が温暖化と並ぶ議題として取り上げられ、国際的な関心が高まっています。来年のCOP9の開催国であるドイツは、今年のサミットの開催国でもあります。来年2008年のサミット開催国である日本も、その流れを引き継いでCOP10開催を成功させ、生物多様性に対する関心をさらに高めていきたいと思います。
さいごに
生物多様性という言葉は、一般にはまだまだ知られていません。環境省が3年前に行ったアンケートによれば、生物多様性という言葉を知っている人は約1割、聞いたことがある人を含めても3割程度であり、国家戦略については、聞いたことがある人を含めても6.5%という状態でした。
しかし生物多様性は、初めに述べたように私たちの暮らしと密接な関係があります。生物多様性が守られることで私たちの“暮らし”が守られています。生物多様性は、平たくいえば生物の“いのち”と言い換えることができます。“暮らし”も“いのち”も、英語で言えば同じ“LIFE”です。つまり、いのちに依存している暮らし、“LIFE on Life”と言うこともできます。
生物多様性の持つ多くの側面のうち、一般の方に理解していただくには、食からのアプローチがわかりやすいかもしれません。例えば、日本人の好物であるマグロの世界の漁獲量のうち、4分の1は日本人が消費し、その6〜7割は輸入に頼っています。買い物の際に、どこの国から輸入しているか確認していただければ、日本人の暮らしがどこの国の生物多様性に依存しているのかがわかるかもしれません。
http://www.ecoplaza.gr.jp/event/eco_seminar_report/report/190701/index.html
〜地球のいのち、つないでいこう〜

開催日時
平成22年3月20日(土)〜21日(日)10:00〜17:00(設営:19日/撤去:21日)
会場
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)?
〒530-0005 大阪市北区中之島5-3-51
展示会場 :3F イベントホール、
セミナー会場:12F 1202会議室 出展小間数 約170小間(約170法人、団体、自治体)
主催 環境省
生物多様性とは
仕事や勉強の手をちょっと休めて外を眺めてみると、コナラの木が風に揺れ、モズの高鳴きが聞こえてきます。植物や鳥、昆虫、魚、土の中の微生物まで、地球上には500万種から3000万種もの生き物が存在するといわれています。
多様な種は食物連鎖や共生などの関係を保ちながら生態系のネットワークを作っています。砂漠の生態系もあれば、熱帯雨林の生態系もあります。同じ種でも、黒部川と信濃川のイワナが遺伝的に違うように、遺伝子にも多様性があります。こうした地球上の多種多様な生き物のつながりを「生物多様性」と呼びます。
生物多様性はいま危機に陥っています。現在わかっている地球上の生物の種は164万2189種。そのうち4万4838種を調べたところ、約40%に当たる1万6928種が絶滅の危機に瀕していることがわかりました。開発による生息地の減少や、乱獲、化学物質による大気や水の汚染、地球温暖化に伴う環境の変化など、人間活動が大きな原因になっています。
ウグイスやハチがいなくなっても、私たちの生活とは関係ないと思っていませんか?実は生物多様性は私たちの暮らしと密接にかかわっています。今日使った紙やテーブルは、東南アジアの天然木を加工して作られたものかもしれません。医薬品や化粧品は森の中の微生物を利用して製造されたものかもしれません。果物や野菜はハチが受粉してくれています。おいしい水が飲めるのも、森が水を涵養し濾過してくれるからです。森は洪水や気候も調節してくれます。人間はこうした生物多様性の恵みなしには生きていけません。
生物多様性が失われれば、食料危機や水不足に陥ったり、自然資源を持続可能に利用できなくなる恐れがあります。企業にとっては商品(製品)の原材料となる食料や微生物、森林資源や鉱物資源を持続的に調達できなくなり、経営リスクにつながりかねません。
かけがえのない生物多様性を守るために私たちは何ができるのでしょうか。企業は生産工程の上流から下流で生物多様性に負荷を与えない配慮が求められます。たとえ合法な原材料でも、生物多様性上、保護価値の高い木材や魚などの原材料なら、使用しないことが肝心です。工場を建設する際に里山の生物多様性を破壊しない注意も必要でしょう。
都市に暮らす人々は、日常の消費行動を見直すことで生物多様性の保全に貢献できます。「レインフォレストアライアンス」認証など生物多様性を守るコーヒー農園を認証したコーヒーや、希少種など森林生態系を保全するFSC(森林管理協議会)認証の紙や家具を購入するなど、消費で応援することも大事でしょう。自然の中に出かけて自然の恵みを体感することも大切です。
開催趣旨
2010年は、国連が定める『国際生物多様性年』であるとともに、生物多様性条約の『2010年目標の年』でもあるなど、生物多様性にとって大変重要な節目の年です。そして、来年10月には、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が愛知県名古屋市で開催されることが決定しています。
この会議は世界各地から約1万人が参加するもので、今世紀に入って国内で開催される最大規模の国際会議です。COP10では、生物多様性への事業者の取り組みについても活発に議論されると予測され、開催国及び議長国である日本には、国際的なイニシアティブの発揮が求められています。
COP10を目前に、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する事業者の役割について世界の関心が高まる中、国内では生物多様性についての認識が十分浸透しているとはいえません。
地球環境問題と密接に関連しあいながらも、環境問題の中でも難しく捉えられ、理解が進んでいないのが現状です。 事業者の取り組みも、現状では未だ一部の先進企業にとどまり、国内の取り組みは、まだこれからの段階です。
生物多様性がもたらす様々な恩恵は、すべての生物の生存基盤であり、私たちの暮らしにとってなくてはならないものです。従って、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する普及啓発と民間参画の取り組みが急務であり、企業だけでなく、地方公共団体、NPO、そして全ての生活者の参画が望まれるとともに、今後より継続的に活動を推進し、活性化していくことが求められています。このような現状の中、今回、福岡・大阪において、生物多様性をテーマとした初の総合的な展示会「生物多様性EXPO 2010」を開催する運びとなりました。
生物多様性に配慮した事業や研究に取り組む事業者やエコツーリズム等を通じて地域活性化を図る団体、さらには一般消費者が集い、これら関係団体の取り組みとその重要性の周知を加速するとともに、先進企業の取り組みを参考に、新たなビジネスチャンスとして捉えていただく場として、初の試みとなります。
景気低迷の折、様々な事業者が集うことで、新たな事業開拓の可能性と雇用の創出、一次産業の付加価値の発掘など、地域活性化を図ることも目的としています。これに先立ち、2009年10月〜12月の期間、仙台、名古屋、東京地区における環境関連の展示会などに、生物多様性ブースの出展を展開して参ります。
今後、国際社会に発表された温室効果ガス削減目標の実現、地球温暖化対策とあわせて、世界的に注目度の高い「生物多様性」に対する数々の取り組みの活性化に向け、初の総合展示会となる本事業に、ぜひご参加とご協力のほど宜しくお願い申し上げます。
http://biodiv-expo.jp/about/purpose.html

開催内容に関するメリット出展料は無料。コストパフォーマンスの高い出展が可能です。環境問題をテーマとした展示会は景気低迷の現状でも年々関心が高まっています。 事業者の生物多様性に取り組むべき方向性等についてマクロな動向から地域に密着した取り組みまで、多角的な情報収集・情報交換が可能です。
事業者向けのセミナーの実施や、有識者による生物多様性とビジネスに関するパネルディスカッションなどを実施します。 環境省が事業者等の取り組みの方向性についてまとめた「生物多様性民間参画ガイドライン」の説明会(福岡会場)も予定しています。
出展者名や活動内容に関する露出機会が拡大「生物多様性EXPO 2010 」公式ウェブサイトに出展者名と出展内容を掲載します。 来場者向け(当日配布)パンレットに出展者名を掲載します。 来場促進の施策一般および事業者の来場促進のための広報を徹底し、地元メディアを活用した効率的な開催広告を実施します。 日経グループの各メディアや、環境系雑誌広告などを活用し、ビジネスユーザーや、環境意識の高いユーザーへの開催告知を展開します。 開催地区のターミナル駅(福岡駅・梅田駅)にて、注目度の高い広告の大量掲出を行います。
ATCグリーンエコプラザ セミナーレポート 生物多様性国家戦略と企業への期待
■講師
環境省自然環境局 生物多様性地球戦略企画室長
亀澤 玲治氏
はじめに
地球上に生命が誕生したのは36〜38億年前であり、生物の大絶滅は現代までに5回あったとされています。そして、現在は第6回目の大絶滅時代を迎えています。
現在の大絶滅とこれまでの大絶滅時代との違いは、まず、絶滅のスピードがあげられます。恐竜時代は1000年に1種であったのに対し、現在は1年に4万種の勢いで絶滅しており、単純計算で恐竜時代の4000万倍のスピードです。また、これまでの絶滅の原因は、火山爆発説、隕石衝突説等とされていますが、現在の絶滅の原因のほとんどは人間活動の影響と考えられています。
日本でも、オオカミ、トキなどが絶滅していますが、具体的に人間への影響はないとお考えになられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、人間は自然界(生物多様性)から多くの恵みを得ており、また、因果関係が複雑で人間がわからないことも多いため、むやみに絶滅させてよいわけはありません。今の時代だけでなく、将来世代にわたる持続可能な利用を確保するためにも、特定の希少種の保護、限定的な自然の保護ではなく、より幅広い概念としての生物多様性保全が必要となってくるでしょう。
生物多様性とは
生物多様性には、3つのレベルの多様性があります。まずは生態系の多様性。日本の中でも干潟、サンゴ礁、湿原や森林など、いろいろなタイプの生態系があります。次に種の多様性。哺乳類をはじめ、鳥類、両生類、植物や微生物も含めて、それぞれに種は多様に存在しています。最後に種内の多様性です。同じ種でも、地域によりゲンジボタルの発光周期が違うことや、メガネトリバネアゲハの翅の色が生息する場所によって異なるなどの例が知られています。
つまり生物多様性とは、それぞれの地域に固有の自然があり、それぞれに特有のいきものがいる、そして、それぞれがつながっているということと言い換えることができるでしょう。
人間は、食料や木材ばかりでなく、実にいろいろな面において自然界から恵みを得ています。たとえば、インフルエンザ治療薬タミフルは中華料理の材料である八角からの抽出物が原料のひとつとなっており、抗がん剤の中にはニチニチソウやイチイから抽出することができるものもあります。さらに工業製品として、スズメバチのまゆから精製された「ホーネットシルク」は、スポンジ、繊維などとして利用されていますが、細胞が表面に付着しにくい特性を利用した高齢者の床ずれ治療用フィルムの開発など、今後、医療分野への応用が期待されています。
これら直接的なものばかりでなく、生物の形や機能の応用であるバイオミミクリーの面でも、生物多様性は、人間にとって未来の可能性を多く秘めていると言えるでしょう。たとえば、500系のぞみの先頭車両はカワセミのくちばしの形状を参考にしたとされており、蓮の葉の表面にある微細な凹凸が雨水をはじく機能は、塗料に応用されています。
ミレニアム生態系評価
このように人間に多くの恵みをもたらす生物多様性の状況を調べるため、2001年から2005年にかけて、国連の呼びかけで95カ国1400人の専門家が参加し、地球規模の生態系評価が行われました。その結果、すでに陸地面積の4分の1が耕地に、また漁獲対象種の4分の1は資源崩壊の危機にあることなどが報告されました。
また、結論の中では、食料、木材、水、気候安定など自然が人類に供給する機能(生態系サービス)の3分の2が世界中で低下しており、今後、必要な資源やサービスが不足し、採取等が規制されることなどにより、利用コストが大きくなる可能性が指摘されました。
この結果を踏まえ、生物多様性条約事務局が2010年目標(注:2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標)の進捗状況について15の指標により評価したものが、地球規模生物多様性概況第2版です。この概況によれば、15の指標のうち、12項目で悪化傾向となっており、2010年目標の達成は非常に厳しいとされています。
「民間の参画」に関する決議
2006年3月にブラジルで開かれた生物多様性条約第8回締約国会議(COP8)で、初めて民間企業の参画に関する決議が行われました。
その内容としては、民間部門の活動は、生物に重大な影響を与えているものの、条約実施への貢献が最も少ないこと。一方、民間部門の優良な取り組みが、条約実施に大幅な貢献をもたらす可能性があることであり、企業に求めることとして、以下のように決議されています。
2010年目標貢献のための自主的な取り組みについて報告すること
企業の経営方針や企業行動を条約の3つの目標(生物多様性保全・持続可能な利用・遺伝資源の利用による利益の公正衡平な配分)に適合させること
締約国会議や補助機関会合、専門家会合などの会合に参加すること
また、政府に対しては、民間部門への生物多様性の重要性の周知徹底、生物多様性国家戦略の作成への参加や条約達成に資する活動を民間に対して促すこととされました。
日本の生物多様性国家戦略
最初の日本の生物多様性国家戦略は、1995年に策定されました。1993年の生物多様性条約発効後2年以内という早い時期に策定した点、生物多様性という新しいキーワードのもとに関係各省が参画したという点については評価できますが、各省の施策の羅列になっていること、また作るのを急ぐあまり民間の意見聴取が不十分であるという批判もありました。また、公共事業関係の法令の環境面での見直しなども踏まえ、2002年に策定されたのが現行の新・生物多様性国家戦略です。
現行の生物多様性国家戦略の特徴として、まず、わが国の生物多様性の現状を3つの危機として整理したことが挙げられます。第1の危機は、いわゆる人間活動や開発による危機。第2の危機は、里地里山のように、人間が働きかけをすることで維持されていた生態系が、産業構造の変化などにより人間の働きかけが減少してきた危機。第3の危機は、ブラックバス等の外来生物による生態系のかく乱の危機です。それに対する今後取り組むべき3つの方向を、保全強化、自然再生、持続可能な利用とし、これらを踏まえて、重要地域の保全と生態的ネットワーク、里地里山の保全、自然再生をはじめとする7つの主要テーマを掲げています。
これらの取り組みを2002年より、各省と一緒に進めてきました。各主体の役割について書いた項目の中で、事業者および国民については「生物多様性の保全と持続的利用に対して自主的積極的に行動することが大切」とされているだけで、具体的な行動内容については触れられていません。現行の国家戦略の策定から5年が経ち、現在、その見直しを進めています。具体的な検討はこれからですが、見直しに当たっての視点として企業活動との関連で考えられることを書き出してみました。
生物多様性国家戦略の見直しに向けて
まず、地球規模の視点が必要という点です。特に日本は資源輸入大国の立場から、国内の自然資源の有効活用ができているかを見直すこと、また資源輸出国の生物多様性についても配慮していく必要があるでしょう。
また、生物多様性保全に対し、企業が具体的に何をすればよいか、何に気をつけるべきかをまとめたガイドラインの作成を考えています。国家戦略の中で作成を打ち出したあと、企業の意見も伺い、現実的な内容となるよう作成していきたいと思います。
普及広報については、企業というより、企業にお勤めの方を含めた広く国民全体ということですが、地域や学校活動への浸透と、一般向け広報の強化が必要であり、生物多様性の恵みを利用するという点では消費者としての意識を高めていければと考えています。
生物多様性保全と持続可能な利用に取り組む民間部門の例
民間部門でもすでにさまざまな取り組みが始まっています。
水産物のMSC認証マークは、持続可能な利用を考慮した漁場や漁法から得られる水産物について、その流通の過程での分別管理も確認した製品に付与されるマークであり、国内では、大手スーパーであるイオンがそのマークを貼ったキングサーモンやたらこなどを店頭に置き始めています。またFSC認証マークは、持続可能な森林の管理経営について認証されるもので、認証森林から産出された木材・木材製品について、流通過程も含めて管理されたものに認証マークが付与されています。
生物多様性保全のための企業の取り組み例としては、鹿島建設の生態系保全行動指針の策定や、全日空の「チーム美らさんご」、サントリー「水源林の保全」、三菱商事「サンゴ礁保全プロジェクト」などがあります。またCSRだけでなく本業で生物多様性保全に取り組んでいる例として、イオンのMSC認証製品の取り扱いのほか、カゴメで、トマトの受粉活動に従来利用していた外来種のハチを在来種に切り替えた例などがあります。民間部門の取り組みは、いまや植林、里山管理、サンゴ礁保全、外来種対策などいろいろな分野に広がっており、手法としても、資金援助や社員参加、原料調達など、多岐にわたっています。
環境報告ガイドライン
また、環境省では、環境報告書の普及に努めていますが、現在、環境報告書のガイドラインの中に生物多様性の保全の促進という項目を入れるべく改定作業を進めています。今後、生物多様性保全の視点から環境報告書に盛り込むべき情報としては、FSC認証を得た木材の利用や、希少種の生息地を保全した宅地開発など、いろいろな取り組みが考えられると思います。ここで例示した項目にどういうことが該当するかというのは、先に述べた企業活動ガイドラインの中でも、より具体的な内容を明示するよう考えていく予定です。
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)日本招致
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が2010年に開催されますが、この会議の日本招致が今年1月、閣議了解されました。2010年は、「2010年目標」の目標年でもあり、国連が定めた「生物多様性年」でもあるため、生物多様性にとって大きな節目の年になると思われます。
今年3月にドイツで行われたG8サミットの環境大臣会合では、生物多様性が温暖化と並ぶ議題として取り上げられ、国際的な関心が高まっています。来年のCOP9の開催国であるドイツは、今年のサミットの開催国でもあります。来年2008年のサミット開催国である日本も、その流れを引き継いでCOP10開催を成功させ、生物多様性に対する関心をさらに高めていきたいと思います。
さいごに
生物多様性という言葉は、一般にはまだまだ知られていません。環境省が3年前に行ったアンケートによれば、生物多様性という言葉を知っている人は約1割、聞いたことがある人を含めても3割程度であり、国家戦略については、聞いたことがある人を含めても6.5%という状態でした。
しかし生物多様性は、初めに述べたように私たちの暮らしと密接な関係があります。生物多様性が守られることで私たちの“暮らし”が守られています。生物多様性は、平たくいえば生物の“いのち”と言い換えることができます。“暮らし”も“いのち”も、英語で言えば同じ“LIFE”です。つまり、いのちに依存している暮らし、“LIFE on Life”と言うこともできます。
生物多様性の持つ多くの側面のうち、一般の方に理解していただくには、食からのアプローチがわかりやすいかもしれません。例えば、日本人の好物であるマグロの世界の漁獲量のうち、4分の1は日本人が消費し、その6〜7割は輸入に頼っています。買い物の際に、どこの国から輸入しているか確認していただければ、日本人の暮らしがどこの国の生物多様性に依存しているのかがわかるかもしれません。
http://www.ecoplaza.gr.jp/event/eco_seminar_report/report/190701/index.html
Posted by 大阪水・土壌研究会員 at 18:06│Comments(0)
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