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2010年02月06日

小鳥が丘の被告の故意過失、当時の認識

平成19年(ワ)第1352号 損害賠償請求事件

原告 藤原 康 外2名

被告 両備ホールディングス株式会社

次回期日  平成22年1月19日

準備書面4

平成22年1月18日

岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中

                       被告訴訟代理人

         弁護士 菊池捷男 弁護士 首藤和司 弁護士 財津唯行 弁護士 安達祐一

= 第1 被告の故意過失について =
1 これまで原告らが行っている、不法行為に基づく損害賠償請求における要件事実の一つである「故意・過失」についての主張は、概要以下のとおりである。

(1)被告は、旭油化が汚染し続けた土壌が有害物質で汚染されている事を十分に認識して(もしくは認識し得た状態で)、旭油化の敷地を買収した(訴状第2の5一、平成19年12月10日付原告ら準備書面第2の1)。

(2)それにもかかわらず、被告は抜本的な無害化工事を実施しなければ到底造成地としてはならない本件土地につき、ごく一部の土壌を搬出除去し、表層土に石灰を混入させて中和凝固させただけの簡便かつ不十分な対策をなし、表層土に盛り土をしただけで、危険物質や土中のドラム缶等を除去することなく土地を宅地として造成し、分譲した(訴状第2の5二、第2の7、平成19年12月10日付原告ら準備書面第2の1、第2の4、平成20年11月17日付原告ら準備書面第1の5)。

(3)被告は、汚染の事実が表面化しても危険はないと断言して、原告らに対して何らの対策をとろうとしなかった(訴状第2の5三、第2の7)。

2 このうち
(3)については、被告に対策義務(少なくとも損害賠償義務)があることが前提の主張であるし、
(1)については単独で故意過失を構成するものではないから(汚染があったとしても、無害化して売却すればよいだけのことである)、結局のところ原告らの主張する故意・過失についての主張は、
(2)すなわち、被告が当時行った対策工事が、当時の土壌の状態について被告が認識しあるいは認識し得た事実に基づき、技術的・科学的水準に照らして、必要十分なものだったか、それとも原告らが主張するように、簡便かつ不十分なものだったかという点に収斂される。

= 第2 被告における当時の認識について =
=== 1 旭油化における悪臭の原因についての認識 ===
(1)そもそも、原告らは臭気の原因が油等によって汚染された土壌にある旨主張しているようであるが、当時そのような理解がされていなかったことは、以下のような事情から明らかである。

ア 旭油化は、ソーダ油さいや廃白土(食用油などを作る際に出る、植物性油と白土の混合物で、産業廃棄物)などを分解、生成して塗料の原料や燃料を生産、販売する会社として認識されていたこと(甲第1号証の1、2)

イ 一般的に、悪臭の原因は、工場内に放置された汚泥や廃白土の分解、生成の過程から発生する悪臭が、工場施設のほとんどに屋根がないため周辺に拡散されたことによると認識されており、土中に不法に投棄された油、産業廃棄物ないしはそれにより汚染された土壌が存在するとは考えられていなかったこと(甲第1号証の1、2)。
 岡山県においても、悪臭の原因は「分解釜を主体とする製造施設の老朽化及び脱臭設備の不備、汚水処理施設の処理能力及び管理不足、製造廃液及び脱水汚泥の場内放置、原料、製品ドラムの貯蔵方法、施設の不備並びに清掃の不徹底による」ものと認識していたこと(乙第26号証)

ウ 本件土地から検出された化学物質は、機械洗浄の溶剤が原因と思われるが(乙第9号証)、機械洗浄の溶剤を適切に処理することなく不法に廃棄していたとの話は当時存在しなかったこと(甲第1号証の1、2、甲第1号証などでも悪臭と水質汚濁に言及されているだけである)

(2)よって、被告が本件土地を取得した昭和57年頃当時において、
?旭油化に関するものとして一般的に認識されていた問題点は、悪臭と、せいぜい水質汚濁程度であり、油ないし化学物質による土壌汚染については全く認識されていなかったこと、
?またその悪臭の原因は、工場内の原料や製造過程から不可避的に発する悪臭を、旭油化が適切に処理することなく大気中に放出したことが原因と考えられており、旭油化が廃棄物を不法に土中に投棄しているとか、油が地面にしみこむままに放置しているとかいった事実は存在しなかったと思われるし、仮に存在していたとしても、旭油化と何の関係もない被告が認識することは不可能であったこと、は明らかである。

=== 2 必要な対策工事についての認識 ===
(1)そのため被告も、悪臭の原因は石鹸等を作成するための原料、作製工程、製造後に排出される廃棄物(煤煙等)であると考えて、旭油化の操業を停止させ、建物を撤去し、悪臭の原因となっている原料・廃棄物を破棄すれば、悪臭は除去でき、本件土地に関する問題は解決するものと考えた(乙第24号証第2の2、4、第3の6)。
 もっとも、被告には、具体的にどの物質が悪臭を放っているかについて断定することは出来なかったから、本件土地上のコンクリート等構造物をはじめ、廃白土や油脂付着物などのすべてを旭油化に除去させるとの内容で即決和解を行った(甲第3号証)のである。

(2)原告は、現在本件土地に存在する黒い汚泥(甲第15号証)が、旭油化撤退当時から存在したかのような主張をしているが、即決和解直後の本件土地は、かなり強い悪臭はあったものの、地面はおおむね普通の色をした土壌と白っぽい土に、油のような何となく色が違う程度の黄色っぽいものが付着したような部分とが入り交じったような状態であり(乙第24号証第3の3、4)、現在見られるような黒い汚泥は存在していなかった。
 また、臭いも、現在問題になっているような油臭ではなく、タンパク質の腐ったような臭いであった。

(3)そのため、被告(ないし旭油化)は、本件土地を、商業的に利用できる土地へと生まれ変わらせるため、以下のような対策を行った。

ア 旭油化は、不十分ながらも、建築物、製造施設、原料ドラム缶、場内汚泥(廃白土のことと思われる)の搬出を行った。この点は昭和58年1月10日、岡山県により、廃棄物の搬出が確認され、撤去作業の完了が確認されたこと(乙第26号証)から明らかである。

イ また、旭油化が行った搬出作業によっても悪臭が十分除去できたとは思えなかったため、被告は昭和59年2月頃、株式会社東山工務店に対し、油分の多い土壌の搬出作業を3673万2000円で依頼した(乙第24号証第4の1)。
 この際被告は、東山工務店に対し、「汚れがひどい部分を処分して、分譲地として支障がないようにして欲しい」と依頼し、東山工務店はそれに従って、ドラム缶や油分が多い土壌を搬出し、廃棄した。

ウ また被告は同時期に、株式会社ナップに対して消臭工事を依頼し、ナップは本件土地に粉末状の石灰を撒いて重機で撹拌し、土地の表面をならすという消臭工事を行った。

(4)被告は念のため、造成を行うまで3年程度その土地をそのままにしておいたが、その間ににおいがひどくなるようなことはなかった(乙第24号証第4の5、6)。
 また悪臭の原因が取り除かれた以上、その後悪臭は空気中に拡散していき、将来的には全く問題が無くなると予想される状態になった。

(5)従って、当時の対策工においては、悪臭を発生させる直接に原因だった工場等の建築物、及び廃白土や油脂付着物などの廃棄物が完全に除去され、工場や廃棄物からしみ出した油がしみこんでいる可能性のある土壌もその大部分が除去され、わずかに土壌に残っているかもしれない油から生じる不快感(悪臭)についても石灰を撒くことで取り除かれ、十分な対策がなされた。
 また当時の科学的知見で、本件で検出されているようなトリクロロエチレンやシス―1、2―ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン(以下「トリクロロエチレン等」という)についての危険性を認識することは不可能であった。
 なぜなら、これらの物質が土壌を汚染することによる危険性がはっきり認識されるようになったのは、平成15年に施工された土壌汚染対策法及び同施行令において、当該物質が特定有害物質に指定されてからのことだからである(それまで土壌汚染については、農用地におけるカドミウム、銅、ヒ素についての汚染について定めた「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」があるだけであった)。

 またトリクロロエチレン等などという旭油化の行っている事業とは無関係な物質が土中に存在しているなどと言うことを予想することはできなかったのである。したがって、当時の技術的・科学的水準に照らせば、当該対策工は、本件土地にまつわる問題を解決する上で、必要十分なものだったのである。


=== 3 その後分譲当時における土地の汚染状況についての認識 ===
(1)そして、この対策工が十分なものだったことは、以下の事実経過からも明らかである。

ア 昭和62年4月頃、すなわち被告が本件土地の宅地造成のため、開発許可申請の準備に取りかかった頃、本件土地における悪臭は、「せいぜい風のないどんよりした天気の日にドブ川のような臭いがする程度」(乙第25号証第3の2)「それほど臭いが強いというわけではなく、何となく臭いがする、という程度」(乙第27号証第2の2)になっていた。

イ また、当時の土壌の表面は、「畑の土が乾いたような白っぽいというか灰色っぽい色の土」(乙第25号証第3の3)「田んぼの土が乾いたような、グレー色」(乙第27号証第2の1)で、黒い土壌は見受けられなかった。

ウ 岡山県ないし岡山市は、小鳥が丘団地につき、昭和62年10月1日、昭和62年2月23日、昭和63年11月26日、平成2年3月20日に、順次開発許可を行った。

エ 被告は、上記開発許可に基づき、東山工務店に対し、本件土地における造成工事を、純粋な通常の造成工事として依頼した(乙第25号証第4の1)。

オ 造成工事の過程で、
(ア)宅地として既存の道路と高度を合わせるために、川沿いにある土壌を団地の南側に移動する工事を行った。その際にショベルカーで川沿いを数メートル掘り返す作業を行った。

(イ)高台にある住宅のため、将来掘りぬきの駐車場として使用するための空間として、地表から数メートル下の土地を大きく掘り抜いたが、周囲の色の違う色の土が出てきたり、黒い汚泥や汚水、悪臭が発生したりすることはなかった(乙第25号証第4の3)。

カ 造成工事完了後、岡山県(ないし岡山市)の職員が検査済証を発行するため現地を見聞したが、悪臭等について何らの指導を受けることはなく、検査済証は問題なく発行された(乙第25号証第5の1)。

キ 本件土地における住宅建築の際、黒っぽい土が出てくることはあったが、それは現在見られるような、真っ黒で、水分を多量に含み、非常に広範囲にわたって分布するようなものではなく、むしろ濃い灰色で、水分量はさほど多くなく、土中の一部にのみ存在する塊状で、団地内のごく一部(把握されていたのは2か所のみ)にだけ存在しているに過ぎず、上述した「わずかに土壌に残っているかもしれない油」の域を超えないものであった(乙第27号証第3の4,5)。

ク 宅地造成後、懸念されていた悪臭については、「特に雨上がりの日、あるいは夏場に・・・側溝の周辺など団地の数か所でかすかに臭う、という程度」(乙第27号証第2の4)にまで低減され、ほぼ解消した。

(2)以上の通りであるから、造成工事が完了し、分譲が開始された時点においても、前記対策工が不完全であったことをうかがわせるような事情はなく、むしろ異臭がほぼ完全に消滅していたこと(この点については原告らも認めるところである)、土壌の色が表層部から地下数メートル部分までのほとんど全てが通常のものになっており、油分を含んでいる部分は、そのごく一部で発見されるにとどまるものになっていたこと、行政側も問題なく開発許可、検査済証を発行していたことなどを考えれば、対策工が完璧に行われていたと評価できる状態になっていたのである。

(3)これは何も、被告が勝手に「対策工が十分に行われた」と思いこんだという意味ではない。
 なぜなら、本件土地上に建物を建築するに当たっては当然基礎工事が行われ、地面を数十cm程度掘り返しているし、また本件団地内の住宅は全て個別浄化槽を採用しており、浄化槽(5人槽)を埋設するために、縦約2.2メートル、横約1.1メートル、深さ約1.7メートル程度の縦穴を掘っているから(乙第22、23号証。いずれも一般的な浄化槽についてのものである)、もし黒い汚泥や汚水が出たり、悪臭が新たに発生したとすれば、必ずその時点で問題になっているはずである。

 しかし、わずか団地の2か所程度から、黒っぽい土が出てきたのみで、住民からも、特に問題視されることはない程度に過ぎなかった。
 原告らは、建物建築を行った業者(被告を含む)が、このほかにも汚泥や悪臭が発見されたにもかかわらず、それを隠蔽した旨主張するかもしれないが、当時わずか数年の間に小鳥が丘団地に30余件の住宅が建築されているのであることを考えてみてもらいたい。
 自宅は一般市民にとって一生の買い物であるから、建物建築前、建物建築中を問わず注文主やその家族、購入を考えている人など様々な人が幾度も現地に足を運んでおり、その延べ数千人にも及ぶほどの人間の目を全て欺いて、汚泥や悪臭を隠蔽することは不可能である。
 原告ら自身も、購入当時には悪臭や汚泥には気づかなかった旨述べていることも、本件土地に客観的な異常があるようには見えなかったことを裏付けている。
 また発見された油分についても、本書面第2の1(1)で述べたような旭油化の操業態様を前提とすれば、ガソリンや重油のようなものではなく、むしろ植物性の油にすぎないから、人体に対し健康上の被害があるわけでもなく、また土中にあれば臭いについても問題にはならない者であると当時は認識されていた。

 土中に土以外の物質が仮に存在しているとしても、それが即土地の瑕疵にあたると言えないのは当然であり、それを全て完全に除去しなければ販売が許されないわけではない。
 宅地であれば、その土地上に建物を建築するについて支障となる質、量の異物が地中に存在するために、その土地の外見から通常予測されうる地盤の整備、改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合に瑕疵にあたるという判例(東京地判平成14年9月27日)に照らせば、本件のように建物を建築する上で全く支障がなく(現に20年を経過した現在に至るまで宅地として使用されている)、そのまま土中に埋め戻しても何ら悪影響がないと当時の科学的知見では思われていた油をそのままにした上で分譲を行ったとしても、対策工が不十分だったとされるいわれはないのである。

(4)なお、これらの事実を前提とすれば、当然現在本件土地に存在している黒い汚泥がどこから来たのか(土中深く、容易には認識できない深さに存在していた油が毛細管現象により地表付近までしみ出してきたのか、土中にあった何らかの物質が化学反応を起こして汚泥に変化したのか、当時存在していた黒い土壌が何らかの理由で拡散していったのか(それにしても油の総量が増えたとは考えられないから、やはりどこから来たのかは問題となる)、それとも別の機序によるのか)も問題となりうるが、この点については現在調査中であるので、その結果を待って改めて反論することとする。
 ただいずれにせよ、当時の科学的知見でこれを予測することは不可能だったのである。そもそも科学が20年以上発達した現在においても、この黒い土壌がどこから来たのかを未だに解析できていないことを考えれば、20年以上前の科学でそれを予想しろというのが不可能であることは自明である。

4 以上の通りであるから、対策工事を行った時点、あるいは本件土地を分譲した時点において、本件土地が油やテトラクロロエチレン等の化学物質により汚染されていることを被告が認識していた事実はないし、また認識することは不可能であった。そしてそのような事実を前提としてみるに、対策工事は当時の科学的・技術的水準から見て必要十分なものであった。

5 従って、被告には本件不法行為についての故意または過失はないのである。


http://blogs.yahoo.co.jp/kotorigaoka/MYBLOG/yblog.html

http://geocities.yahoo.co.jp/gl/kotorigaoka/view/20100203

http://blogs.yahoo.co.jp/kotorigaoka/50146935.html

等を参考にしましたが、不正確や不適性な内容が含まれている場合がありますので、各自の責任に閲覧してください。








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Posted by 大阪水・土壌研究会員 at 12:46│Comments(2)小鳥が丘団地土壌汚染
この記事へのコメント

地下水位が高いですね?

製品要求品質に影響する全てのプロセスの管理が必要ですね
Posted by ATCグリーンエコプラザ水・土壌研 at 2010年02月06日 12:49

テトラクロロエチレン等は比重が水より重いですが他の油はたいてい水に浮きますよね!
Posted by ATCグリーンエコプラザ水・土壌研 at 2010年02月06日 12:51
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小鳥が丘の被告の故意過失、当時の認識
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