ナチュログ管理画面 釣り 釣り 近畿 アウトドア&フィッシングナチュラムアウトドア用品お買い得情報

2009年12月27日

第171回国会 環境委員会 畑明郎先生の発言

第171回国会 環境委員会 第5号
平成二十一年四月十四日(火曜日)

       大阪市立大学大学院特任教授日本環境学会会長        畑  明郎君

  本日の会議に付した案件
○土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(内閣 提出、衆議院送付)

○委員長(有村治子君)
 ただいまから環境委員会を開会いたします。
 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案を議題といたします。

○参考人(畑明郎君)
 大阪市立大学の畑と申します。
 資料としましては、昨年十一月に日弁連の機関誌の「自由と正義」という雑誌があるんですけれども、それに土壌汚染対策法の特集がありまして、それの巻頭論文を付けております。二番目には大塚先生も書かれていますので、また参考にしていただければと思います。

 元々、私は七年前にここに、法律できるときの、制定のときの参考人で、大野参考人と私とあと二人の方だったんですけれども。そのときに、ちょうど五月だったんですけれども、四月ですから今、似た時期ですけれども、非常に問題はいっぱいあるということで、当時は一応民主党の福山議員の紹介でこれ参加したわけですけれども、十五項目ぐらい問題あるということで、中でも大きな問題点は、二番目の、この法律はやっぱり土壌汚染の事後対策法である、未然防止法ではないということです。

 それから、地下水の汚染の防止の観点がほとんどないと。土は人間が動かさないと動かないんですけれども、地下水は勝手に動きますので、そこの防止の対策がこの法律では非常に問題があると。

 それから、五番目の三条の調査対象ですね、これが一番問題なんですけれども、いわゆる水質汚濁防止法の有害物質使用特定施設の廃止時、それも法律施行後の廃止時、さらに宅地等への転用する場合だけ、そういう形で非常に法対象を狭くしていると。それから、それ以外にも金属鉱山・製錬所、廃棄物処分場の跡地周辺、軍事基地等を対象外にしていることです。

 それから七番目が、調査、対策を原則として汚染原因者でなく土地所有者等に義務付けている点です。

 それから十番目が、対策は原則として覆土、つまり五十センチ以上の盛土でよしとする、土壌の浄化は特別な場合だと。これは保育園とか幼稚園とかそういう場合だけだという感じになっておりまして、この法律制定時から非常に問題があったと思っております。

 とても土壌汚染問題の根本的解決につながる法律とは言えませんし、そればかりか、土壌汚染を覆土で隠ぺいし、言わば臭い物にふたをする、後世に負の遺産を残すことを合法化するざる法ではないかということで批判したわけです。
 やはり法施行後五年、今六年ですけれども、たった現在、そのざる法性はますます明らかになったのではないかと思っております。

 二番目のは、もう御存じのように、先ほど言われましたように、法対象が非常に、二%しかないとか、廃止工場の八割は調査を逃げている、つまり宅地等に用途を転用しないということで、ブラウンフィールド化している。
 それから対策も二%しかないと。それから、四条の調査命令も、発動したのは五件。これは、環境省は課長会議の何か通達出していまして、一キロ以内ぐらいに直接水道の飲み水に使用している場合だけ発令しろ、それ以外発令するなというそういう通達を出しておりまして、結果的に五件しかないと。しかも、それは岩手県とか鳥取県とか、皆さん御存じの特定の知事がおられたときしか、県しか命令を出しておりません。そういうことで、非常に実効性の乏しいざる法となっていると思います。

 それで、いわゆるこの法律自身は盛土、舗装等で摂取経路を遮断する対策で十分であると言っているんですけど、リスク管理といっておりますけど、汚染土壌が残っている限り半永久的に管理する必要があるわけですね。

 特に問題なのは地下水の問題です。土壌が汚染されていますと、必ずそれに接触している地下水は汚染されます。その地下水は勝手に動きます。ということで、確かに直接都市部では飲み水にしていないんですけど、地下水によって汚染が拡散するという点で、その地下水のくみ上げ処理とか遮水壁で囲むとか幾つかの方法があるんですけど、一〇〇%水をカットすることは技術的には困難です。
 幾らお金を掛けても困難です。ということで、こういうリスク管理には非常に問題があるということで、やはりリスクゼロ型の掘削除去の方が結果的には多く採用されているし、その方が私はいいと思っております。

 当然それを掘削除去した汚染土壌については適正に処理することは当たり前のことでして、これは技術的に、最近、秋田とか川崎とか幾つかにその汚染土壌をきれいにするプラントもできておりますし、問題はコストですね、お金が掛かりますから。その負担をだれがするかという問題だと思っております。

 それから三番目の、大野さんのおられる土環センターの調査によれば、いわゆる製造業だけじゃなくてサービス業も含めて九十三万か所ぐらい汚染地があるんではないかと推定されています。
 これの調査費用が二兆円で、浄化費用が十一兆円で、合計十三兆円の土壌浄化ビジネスです。既に二〇〇七年でほぼ二千億円近い、年間二千億円の土壌浄化ビジネスになっております。二〇〇八年はちょっと景気の悪化で初めて落ち込むようですけど、それまではずっと右肩上がりで土壌浄化ビジネスの業界は成長しております。

 それと、あと汚染地ですけど、基本的には東京、関東、近畿、中部の三大都市圏のいわゆるオールドエコノミーというか、そういう重化学工業の工場地帯のところに多いということです。

 それから四番目は、私自身いろんな事件にかかわっているんですけど、基本的には市民、住民の依頼によってやってきたものが二十件以上あります。その中で法対象になったものは、この二十件のうちわずか三件です。
 大阪のカネボウの中研の跡地、神戸の日本テルペン化学、川西の中央北地区、これは皮なめし工場です。ということで、大半が法施行前に廃止された工場、事業場や廃棄物処分場周辺の跡地です。ということで、法施行前に廃止された工場跡地、特に有害物質を取り扱っていた事業場をやっぱり法対象にする必要があるし、ドイツなんかでは廃棄物処分場の跡地周辺も法対象にしております。

 あと、先ほど出ましたように、私はこの二番目の、?の大阪アメニティパークの、OAPの事件にかなり三年間ぐらいずっと住民に頼まれてかかわったんですけど、このときには土壌汚染対策法は全く役に立たなかったです。宅建業法でやっと三菱は対策とか調査をやったということになったわけですね。

 それからあと、七番目以降、そこに滋賀県の例がありまして、私、滋賀県に住んでおりまして、有村委員長も滋賀県出身だそうなんですけど、守山、野洲とか信楽では、これは水道の飲み水の汚染が起こりました。
 それから、住友大阪セメント、セメント工場もいろいろ問題あるんですけど、それから、今、滋賀県の知事が栗東の新幹線の駅止めましたけど、この産廃処分場の問題がもう一つありまして、そういう周辺で地下水汚染、土壌汚染が起こっております。

 それから、このテルペン化学で、神戸の、非常に印象的だったんですけど、法対象になっているんですけど、法施行時に稼働していた施設では使っていた薬品だけの元素を、有害な元素を対象にしていまして、過去にあった施設の有害物質についてはこれは法対象にならないんだという解釈を神戸市、環境省がしておりまして、それは何かの間違いじゃないかと思ったんですけど、あくまで自主的調査だと。非常に法律自身を狭く運用していると。
 いわゆるこういう土壌汚染というのは、一回汚染されますと十年、二十年、三十年、数十年間は蓄積します。そういう意味で、過去の汚染も考慮して調査、対策しないと意味がないと思うんですけど、非常に法律の運用が狭くなっている問題があると思っております。

 それから、ここには書いていませんけど、武田薬品の神奈川の湘南工場の最近例知ったんですけど、これは工場の廃止は最近なんですけど、施設が法施行前に廃止されていた、だから法対象にならないと。神奈川県の条例でやっと対象になったという事例がございます。
 あと、四日市の例のフェロシルト事件とか産廃処分場の問題とか、あと岐阜とかです。僕自身は、ずっとイタイイタイ病を起こした三井金属の神岡鉱山の排水・土壌汚染対策を四十年近くやっておりますけど、ここは一応今成功しましたけど、工場の下に汚染土壌が残っていまして、約九十トンぐらいカドミウムが残っているんですけど、完全に地下水くむまでに処理するには百年掛かると言われています。

 そういう意味で、汚染土壌を残しますと非常に半永久的に処理コストが掛かるということです。結果的には取ってしまった方が安く上がる。これは産廃処分場でも一緒なんですけど、豊島とか青森、岩手のように全量撤去した方が後々ランニングコストというか排水処理とかいろんなリスク管理の費用が結果的には安く上がると思っております。

 それから、皆さん御存じの築地市場の問題です。この問題につきまして、一応最近かかわっておりまして、もう御存じなので飛ばしますけど、これは面積的には日本最大の土壌汚染地になりますということで、一千億じゃなくて六百数十億円対策費が掛かる。
 それも、二メートル土取って、汚染土壌は下に残ります。汚染地下水は半永久的にくみ上げて処理する、このコストがまた掛かります。そういう対策を東京都がやろうとしています。

 今回の法律の件ですけど、僕は基本的にはやっぱりリスクゼロ型の掘削除去の土壌浄化対策の方がいいと思っていますし、盛土、封じ込め等は、こういう安易な対策は問題があると思っています。特に今回の法律はそういう点を、何か掘削除去を排して安易な対策、安上がりな対策を推進、推奨しようとしているということで問題があると思っています。

 そういう意味で、東京都の条例とか滋賀県の条例のいわゆる一定規模以上の土地の改変、これは今回の法律には適用されているんですけど、問題はあとは、東京都、あと神奈川県横浜市、川崎市、大阪府等が採用しているんですけど、過去に有害物質を取り扱っていた工場、事業場については条例の対象にするということはやっぱり法律についてもやっていく必要があるんじゃないかと思っています。
 それと、滋賀県の条例は、今回、環境省の委員会では全く取り上げられなかったんです。私は滋賀県に今住んでいるんですけど、一応、二〇〇七年に滋賀県の公害防止条例、一部を改正しまして、地下水汚染の未然防止、それから地下水汚染の早期発見と改善、法施行前に廃止された跡地を土壌調査の対象とするというこういう条例を定めて、もう施行しております。
 こういうことをやっぱり全国の法律でもやってほしいなということです。やはり条例、要綱の方が進んでいると思いますし、進んだ条例、要綱を参考とした根本的な法改正をやっていただきたいと思っております。

 終わりの部分はもう繰り返しになるんですけど、特に強調しますと、やはり法施行前、実際に僕が土壌汚染の問題にかかわっていると、ほとんどは法施行前の工場、事業場の跡地なんです。それも製造業だけじゃなくて、もちろんガソリンスタンドとかそういうサービス業なんかもあります。
 そういう法施行前に有害物質を扱っていた工場跡地とか廃棄物処分場の跡地を法対象にする必要があるんじゃないかと思っております。これは日弁連の意見書でも提案されていますし、地方自治体、神奈川県とか先ほどの滋賀県とか東京都とか、条例ではそういうことを定めているところもあります。

 それから、やっぱり土壌汚染の未然防止です。こういうことも今回全く入っていませんが、やはり長期的にはこれをやっておかないと、いったん汚染された土は、先ほど大野さん言われましたように、一〇〇%きれいにすることは技術的にはできません、多分幾らお金を掛けても。
 そういう意味で、やっぱり汚染しないということが一番大事ですので、未然防止をやっていく必要がある。そのために、やっぱり操業中の工場、事業場についても滋賀県のように井戸を掘って調べる、常時監視するとかそういうことが大事ではないかと思っております。
 そういう意味で、確かに今回の法改正は法対象を一定拡大するプラス面あるんですけれども、マイナス面もありまして、特に掘削除去を排するということは問題があるんじゃないかと思っています。

 それと、築地市場の移転問題に関連しまして民主党が修正案を出しまして、衆議院で修正案が通ったようですけれども、いわゆる土壌汚染対策法施行以前の廃止工場、事業場であっても、公園、学校、市場等の、これは築地市場を完全に意識しているんですけれども、そういう公共施設等に利用する場合は法対象とするということが通ったことはそれなりに画期的だと思うんですけれども、私としてはやっぱりすべての施行前の有害物質を扱っていた廃止工場、事業場も法対象にすべきではないかと思っています。

 そういう意味で、東京都環境条例とか滋賀県の条例とか、あと川崎市、横浜市、大阪府等の進んだ条例、要綱を参考にした抜本的な法改正を今後やっていただきたいと思っております。

 あと、新聞記事を幾つか、朝日新聞とか、それから公明党さんの聖教新聞も頼まれまして、最近、三月に。これ百万か所ぐらい汚染用地がある、築地市場のことも書いてくれよということで少し写真とちょっとコメントが入っております。
 それと、社民党の社会新報とか、赤旗とか東京新聞とか、あと毎日新聞とか朝日新聞等にも書いておりますし、あと、最後にちょっとありますように、中国の土壌汚染問題、最近中国は恐らく空気も水も土も食べ物も汚染されていまして、非常に問題がありまして、最近中国の土壌汚染のこともやっておりますので、また参考にしていただければと思っております。

○参考人(畑明郎君) 
 まず、附則三条につきましては、これはもう築地市場の移転問題で衆議院の川内議員なんかと私一緒にやっているんですけど、やはり法施行前の廃止工場、事業場をその法対象にしないという附則三条は取っ払うべきだと私は思っております。

 それから、二番目の一定規模の問題ですけど、これはこれでそれなりに評価できるんですけど、ただ、規模だけでやっていいのかという問題があると思います。例えば、水質汚濁防止法の排水基準の適用の仕方なんですけど、有害物質を扱っている場合は排水量に関係ありません。
 普通は排水量一日五十トン以上という場合に排水基準を掛けるんですけど、僕は以前京都市の公害の局におりましたけど、そのときには、有害物質を扱っている、それが出る、排水に出るところは排水量に関係なしに排水基準の規制を掛けております。
 そういう意味で、やっぱり有害物質を扱っている工場、事業場については、規模についてはむしろ取っ払うべきだと私は思っております。

 それから、民主党案の今回の、公共施設等に転用する場合に調査を義務付ける、これはこれでそれなりの意義は、築地市場の移転問題を法対象にするという意味で意義はあると思うんですけど、ただ、これだけではまだ問題があると思っています。

 やはりさっき、何度も言うんですけど、過去に有害物質を扱っていた工場、事業場は基本的には汚染している可能性が強いですので、僕もいろいろ、大阪のUSJも住金の跡地なんですけど、あの場合なんかはほとんど工場の敷地内に産廃を埋めていたんです、それも大量に七十万トンという。それが今ジュラシック・パークという恐竜のパークになっているんですけど。

 それで、過去に工場、事業場が工場敷地内に産廃を埋めたりとか、それから別に故意でなくても非意図的に液が漏れてしまった、それで床から、それから排水、例えばあとは排水溝です。必ず排水パイプというのは、時間がたちますと穴が空きます。だから、穴が空いて、そこから廃液が漏れてしまって汚染してしまう。
 これは大学なんかでもそういう例はありますし、先ほどのカネボウの中央研究所なんかはほとんどその下水管の途中で液が漏れてしまって土壌汚染してしまったという例がありますので、そういう意味で、やっぱりその有害物質を扱っていた工場、事業場については汚染の危険が強いということで調査を義務付けるべきだと思っております。

○参考人(畑明郎君)
 
 掘削除去の問題ですけど、いわゆる環境基準の設定の根拠なんですけど、よく行政とか企業は直ちに影響はないとかいう言い方するんですけど、元々環境基準等はどういう形で設定されたかといいますと、やはりイタイイタイ病とか水俣病のように非常に低濃度の有害物質を長期間暴露することによって被害が起こるわけです。そういう意味で、じわじわと来るものですから、目に見えてすぐ人が倒れるとかそういう急性中毒ではないんです。
 そこを逆手に取って、影響はすぐないとか、出ていないとか、直ちに健康に影響はないという形ですぐ行政は逃げる場合が多いんですけど、やはり長期的な影響を考える必要があるということで、土壌の汚染とか地下水の汚染を残すということはやっぱり将来いろいろな問題が起こる可能性があるということで、掘削除去の方がいいと思いますし、それから費用対効果ですけど、これは時間スケールを考慮しないと駄目だと思うんですね。

 例えば岩手県の例ですけど、旧松尾鉱山という硫黄鉱山があるんですけど、これ岩手県の方は御存じなんですけど、日本で一番大きい鉱山がありまして、いまだに酸性の水が出てくるんです。北上川を汚染するということで、非常にでっかい排水処理設備が造られています。これ半永久的に稼働しています。それを国とか岩手県は税金でやっているわけです。
 そういうコストは莫大なコストになります。そういう意味で、青森・岩手県境の不法投棄のときに、当時の増田知事が、やはり長期的に見ると全量撤去した方が安上がりであると、この松尾鉱山の例を考慮して岩手県はそういう判断を取ったと聞いております。

 そういう意味で、本当に、当面はそれは掘削除去はコストは掛かりますけど、長期的に見ると、そういう維持管理コストを考えるとそんなに高いものではないという場合もあるということです。

 それから、覆土の問題ですけど、これは用途を非常に限定されます。例えば、通常、ビルなんかを建てる場合は基礎工事をやるわけです、くいを打ったりとかですね。下をかき混ぜますから、そういう工事をしたら、下に汚染土壌が残っているとその汚染土壌の対策も要りますし、五十センチぐらい覆土しても、これは豊洲の例ですけど、あそこは地下水位がほとんどゼロメートルのときがあるんですけど、土を多少上へ入れても、地下水が上昇してきて雨水と地下水が混ざり合ってまたその入れたきれいな土が再汚染される危険性が高いんです。

 OAPでもこれは実際に起こったんですけれども、五年ぐらいでもう起こっちゃったんです。ということで、その五十センチぐらいの覆土では将来的には安全な対策にならないし、地下は触れなくなると、地下の倉庫とか地下の構造物を造れなくなる、造りにくくなるという問題はあります。
 OAPにつきましてはどうするかといいますと、五十年後建て替えるときにやりますということで三菱は説明している。当面は、二メートル土入れ替えて、地下水はくみ上げて今延々と処理しているんです、コストを掛けて。取りあえずそういう、これは暫定的な対策だと私は思っております。恒久対策はやはりきれいにするということが大事じゃないかと思います。

○参考人(畑明郎君)
 
 今、大塚先生言われましたように、これは廃棄物の問題と一緒でして、廃棄物処理法上いろんなマニフェストとかやっておりますけど、やはり不法投棄はなくなっておりませんし、僕自身も滋賀県の栗東とか四日市の日本最大の不法投棄の大矢知の問題にもかかわっているんですけど、これ同じことが起こり得ると思います。法律で幾ら汚染土壌のマニフェストを定めてフォローしたとしても、やはり限界はあると思います。
 そういう意味で、やはりもう少し排出者責任をどう担保していくかという、これは廃棄物も一緒ですけど、取っていく必要あると思います。

 これは残土についても一緒でして、残土も結構怪しいものがありまして、僕は汚染土壌も残土も廃棄物扱いというか、廃棄物処理法の対象にすべきだと思います。そういう意味で、もちろん廃棄物処理法ももっと強化しないと駄目なんですけど、強化した上で汚染土壌と残土等を管理していく。

 最近でも残土に関連して、石原産業のフェロシルト事件というのがありましたけど、こういうことはついこの間も起こったばかりですよね。あれ、フェロシルトの回収に五百億円掛かるんですよ、これ石原産業が負担して、三年間赤字決算なんです。やっぱりいったんそういう不法投棄しますと非常にコストが掛かるという問題はありますので、この辺は、せっかく法律作ったんですから、きちっとそれは運用というか施行していってほしいなと思っております。

○参考人(畑明郎君)
 
 これは日経新聞等でも拝見しましたけど、この環境債務ということをこういう企業の会計の中に入れていくことについては大賛成ですし、ストック型汚染と僕らは言っているんですけど、土壌汚染と産業廃棄物の問題というのがやっぱり現在はかなり先送りされていると。
 言わば臭いものにふたをしてわざと調査しないとか、調査してもできるだけ安価な対策で終わらせて、将来世代にやっぱり負の遺産を送っているところがあると思いますので、やっぱり早めにそういう資産計上していくことはいいことだと思っていますし、非常に面白いのは、上場企業で一番環境債務たくさん計上しているのはOAP事件を起こした三菱マテリアルです。

 それと、僕はイタイイタイ病のことをずっとやっているんですけど、結局、イタイイタイ病の場合、公害を出せば結果的に高く付いた例なんですけど、ほぼ掛かった費用が六百億円以上掛かっております。もちろん、死んだ人は、補償を出していますけど、帰ってこないということで、そういう絶対的な損失があるんですけど、経済的な損失という意味で六百億円以上掛かっています。やっとその汚染された農地の復元が来年ぐらいに終わります。

 結局ほぼ四十年ぐらい掛かって、最近、三井金属の神岡の社長は朝日新聞に「私の視点」で書いていましたけど、結局四十年掛かって解決したと。そして、住民と企業が信頼関係ができたということで、結局、百億円の公害防止投資を事件が起こる前にやっておけば六百億円の被害は起こらなかったわけです。
 結局、公害を出せば、後で非常に社会的コストも企業も負担が重くなるということで、やはり事前にそういう環境債務を計上して対処していくことが今後大事になるんじゃないかと思っております。


○市田忠義君
 日本共産党の市田です。
 畑参考人にお聞きいたします。
 陳述の中でもお述べになりましたが、畑参考人は、リスクゼロ型の掘削除去等の土壌浄化対策、これを排して盛土や封じ込めなどの安易な対策の推奨に今度の法改正がなりかねないと、そう指摘をされています。

 私も、今回の改正案で掘削除去の偏重ということが強調されて、現行の指定区域を要措置区域と要届出区域に分類をして、知事が技術的基準に基づいて指示する制度を新たに盛り込んでいると、これが掘削除去の抑制につながるのではないかという懸念をしております。

 私事ですが、私は築地に四年前に住んでいまして、今、豊洲に住むという皮肉な、豊洲への移転には私は反対でありますけれども。
 畑参考人は、東京ガスの豊洲工場跡地問題あるいは大阪アメニティパークなど多くの土壌・地下水汚染事例にかかわってこられたわけですが、先ほどもお述べになりましたけれども、このリスクゼロ型の掘削除去を抑制して覆土や封じ込めなどのリスク管理型を普及するということについて改めてもう少し詳しくお伺いしたいのと、若干他の参考人の方からも出されたことなんですが、掘削除去というのはかえって汚染地域が広がって汚染の拡大につながるのではないかという考え方についてどうお考えかと。
 コスト問題はよく分かりました。中長期的に見れば、中途半端な処理はかえってお金が掛かるというのはよく分かりましたが、今の点について御意見をお伺いしたいと思います。

○参考人(畑明郎君)
 
 確かに、今回の形質変更届管理区域、それから要措置区域ということで、従来の指定区域を二種類に分けて、結局対策を緩める。そして、掘削除去をできるだけやらさないという方向になるおそれは十分あると思っております。

 それで、リスク管理という、これは言葉はいいんですけれども、元々この環境リスク論というのはどこから来たかといいますと、アメリカから来たものでして、これBSE問題が一番典型なんですけれども、いわゆる全頭検査なんか要らない、百万人に一人しかBSEにならないんだ、全頭検査のコストは無駄だと。
 要は、アメリカの場合はリスクとベネフィットを比較してベネフィットの方が大きければリスクはある程度我慢すると。みんな飛行機とか自動車は交通事故の可能性があるけれども乗るでしょう、ベネフィットがあるから乗るでしょう、環境も一緒ですという形で、こういうことを中西準子なんかは言っているんですけれども、経産省もそういうスタンスなんですけれども、これは僕は全く間違っていると思います。

 基本的には、僕はやっぱりEUが取っている予防原則、これは朝日新聞の知恵蔵に環境リスク論とEUの予防原則を比較して書いたことがあるんですけれども、やはり、今EUが進めているRoHS規制とかREACH規制という化学物質の規制は、言わばカドミウムとか水銀とか危ないものはもう製品に入れていかない、工業製品に入らなければできた廃棄物、廃製品も危ないものが入っていないということです。
 鉛とか先ほどのカドミウム、水銀など、基本的には六物質に対してはもうやれている。日本のメーカーもEUに輸出はそれができている。自動車とか電気製品を輸出していますから、対応できるんです。

 更にもっと、三万種類というすべての工業製品、化学物質に対して規制を掛けようとすると、従来は医薬品と同じように、医薬品だけが安全を証明しなければ販売できなかったんですけれども、すべての工業製品についてメーカーが安全を証明する義務を持たせるという、そういうREACH規制は今もうヨーロッパで始まっています。順次強化されていきますけれども。そういう動きがあります。

 それから、やっぱりリスク管理というのは問題ありますし、本当にリスク管理できないんですよね。土壌は確かに人が動かさなければ動かないんですけれども、地下水は勝手に動きますから、これはどこへ行くか分からないということで、何か法案にもちょっとありましたように、海辺の埋立地はいいんだと、汚染されていても。これはもう論外でして、やっぱり廃棄物処分場は山の中に造るか海に埋めているかどっちかなんですけれども、山の場合はもちろん排水は河川の上流に入ってきますし、海の場合もやはり、大阪湾のフェニックスとかありますけれども、東京湾の埋め立てていますけれども、やはり海の汚染を起こします。
 完全にその汚染水を海に流さないことはできません。今、遮水していますけれども、あれは堤防だけ遮水していまして底は抜けていますので、必ず汚染が海に広がります。それで魚の汚染も起こりますし、そういう意味で問題があるということです。

 それと、確かに掘削除去した土地をどう処理するかというのはもちろん問題なんですけれども、僕のかかわった京都府の日本最大のクレー射撃場、これは麻生首相が好きらしいんですけれども、要するに鉛の散弾、これを撃つんですよ。それで皿を割るらしいんですけれども。当然鉛の散弾がそこへ散らばって、クレー射撃場の中が鉛で土が全部汚染されちゃったんです。
 その土、今京都府立の施設なんですけれども、京都府は十億円以上掛けて全部、秋田県の小坂にあるんですけれども、土壌処理施設で土をきれいにしてまた戻す、そういうことをちゃんとやっているんです。

 そういう意味で、それは搬出土壌の処理の仕方、適正な処理をやっぱりどう担保するかという問題でして、これは産廃と一緒でして、ただ今の現状からいくともちろん産廃と同じように汚染土壌がどこへ行っているか分からぬという問題は起こり得ると思いますので、それは十分注意しながらやっていくしかないと思っております。ただ、技術的にはできると思います。


○参考人(畑明郎君)
 
 だから、今回のもちろん一定規模以上の、多分三千平米ぐらいになると聞いておりますけれども、それはもちろん改善、今の法律の、ざる法のざるを少し目を埋める、目を小さくするということにはなると思いますけれども、完全にざるは目が埋まった状態ではないと思っております。

 やはり法施行前の有害物質を扱っていた工場、事業場、これは水質汚濁防止法の特定施設以外にもいっぱい出ていますので、やっぱり有害物質を例えば運搬とか保管したところでも汚染は起こっていますので、それから交通機関とかそういうところなんかでも起こっていますので、やっぱり過去のこれは負の遺産だと。製造業の当初負の遺産という言葉が言われたんですけれども、土壌汚染は。過去の負の遺産をいつかの時点で一掃するためには、きちっとまずはやっぱり調査をすべきであると。

 もちろん一〇〇%の工場が全部汚染されているとは僕は言いませんし、多分半分ぐらいだろうという土環センターの推定なんかもありますけれども、やっぱりやってみないと分かりませんから、調査はまずちゃんとすべきである。
 これはカドミウム汚染米と一緒でして、ついちょっと前、一九九八年ぐらいに、五十ヘクタール単位にワンポイントでじゅうたん的に米を全部調査したら、またいっぱい準汚染米が出てきたという問題がありました。そういう意味で、やっぱり危ない可能性のある工場、事業場については調査を法的に義務付けてしていくべきであると。
 あと、対策はどうするかというのは、やっぱりケース・バイ・ケースになると思いますけれども。

○参考人(畑明郎君)
 
 私は元々の出身が京大の工学部の金属でして、それでずっと金属にこだわってやっているんですけど、金属というのは、確かに人間生活とかいろんな経済に役立っているんですけど、プラス面とマイナス面があって、金なんかは全く毒性がないんですけど、金以外の金属はほとんど何らかの毒性はあります。鉄なんかもたくさん取ったらやっぱり問題なんですけど。

 確かに、それで必須金属で見ましても、多過ぎても少な過ぎても駄目なんですね。これは、生物は人間も含めて海から生まれた関係で海の中のやっぱり金属の濃度というのが影響しているんですけど、そういう意味で、例えばカドミウムとか水銀とか鉛とかは元々生物とか人間が利用しなかったんです。カルシウムとか鉄とか銅とか、こういうものは生物が利用したのでこれは必須金属になっているんですけど、全く利用しない不要な金属というのがあるんです。

 そういうものの典型的なものが水銀であり、カドミウムであり、鉛とか六価クロムとか、そういう非常に有害な重金属なんです。そういうものはやっぱり基本的に、水銀は水俣病を起こしましたし、カドミウムはイタイイタイ病を起こしたと。鉛はもう古来からある毒物なんですけどね。これはもうギリシャ・ローマ時代からいろいろ毒ありますし、砒素なんかもそうですけど。

 そういう明らかに人体に有害と分かっている金属についてはできるだけ使っていかないようにしようと、特に工業製品に使っていかないと。例えば、水銀なんかかて、昔はいろいろ、おしろいとかそれから不老長寿の薬とか、多分早く死んだと思うんですけど、そういうものに使われていたぐらいなんですけど。
 それらは、明らかにやっぱり有害なものはできるだけ減らしていこうという意味で、僕の書いた本にはいろいろ書いてあるんですけど、やっぱりEUは、ヨーロッパが進めているこういう、元々これは北欧とかスウェーデンの方から始まったんですけど、有害な金属をやっぱり規制していく、工業製品には使っていかないと。そうすると、やっぱり安全な工業製品なので、後、環境汚染も少ないし、廃棄物についても処理、リサイクルしやすくなる。根本的にはそれやらないと。

 それで、金属というのは基本的にはなくならない、地球上からなくならないんです。量は常に一定なんです。全部地下資源にあった分ですから、鉄はさびて酸化鉄になりますけど、鉄そのものの量は、地球上の存在量は変わらないです。隕鉄が降ってきて、その分は鉄が増えたかも分からないですけど。そういう意味で、絶対、金属はどこに行っても形変えるだけで、なくならないんですよ。

 だから、有害な金属というのは、一回使うとどこかに行っちゃうんです。例えば、水銀でも今、石炭火力発電、石炭の中、少し水銀入っているんですけど、豊洲も石炭からガス造っていましたので水銀汚染あるんですけどね。そういうのは、火力発電は飛んでいるんですよ。アメリカなんかでは一番多いんですよ。中国からも今、水銀が飛んでいるという話もありますし。

 そういう意味で、やっぱり危ないものが入っているものはできるだけ削減しよう、減らしていこうと。一遍にゼロにはできませんから。そういう動きというのはヨーロッパを中心に今始まっていますので、やっぱり日本も余りアメリカに追従するんじゃなくて、さっきのリスク論ですね、リスクとベネフィットを比較して、少々のリスクは我慢しろというんじゃなくて、やっぱり予防原則というか、安全なものにしていく、すべての消費するものとか物を、物資をですね。これは食べ物も含めてだと思いますけどね。

 例えば農薬なんかも、結構昔は米にも水銀の農薬とか、それから今でも果樹、リンゴとかああいうものは砒素、鉛系の農薬なんかも使われていましたし、シロアリの駆除剤はあの和歌山のカレー事件で砒素が、亜砒酸が使われていましたし、そういうのがまだ使われているんですよね。そういうものをやっぱりどんどん減らしていくか代替のものに替えていく。

 例えばカドミウムについては、昔はニッカド電池、まあ今も使われているんですけど、カドミウムはやっぱり問題があるということでだんだんリチウムイオン電池に切り替わっていっていますし、そういう代替のものがあるものについては替えていく。

 ただ、自動車の鉛バッテリーは今代替はないんですよね。だから、リチウムイオン電池で自動車搭載型というのはまだ十分実用化されていませんので、そうなれば鉛バッテリーも使わなくて済むというようなことになると思います。
 以上です。

○参考人(畑明郎君)
 
 一番いい例はイタイイタイ病だと思うんですけど、先ほども少し紹介しましたけど。
 僕は、だから、三井金属については評価しているんですけど。結局、カドミウムの排出量をほぼ四十年間で十分の一以下にしまして、神通川のカドミウムの水質は鉱山の上流も下流もほぼ一緒になったと。
 もちろん、ゼロエミッション、ゼロ排出にはならないですね。ゼロにはできないんですけど、少しは出るんですけど。それで、ほぼ無視できるぐらいの濃度になって、自然界レベルになって神通川は清流に戻って、下流の農地も復元田ということで、千ヘクタールぐらい復元して、数百億円の費用が掛かったんですけど、来年終わると。また汚染物質流したらまた再汚染されますから、これも一種の未然防止だと思うんですけど。

 それで、三井金属つぶれたかといいますと、決してつぶれていませんね。今、三井金属は先ほど言いました鉛の、自動車のバッテリーの日本最大のリサイクル工場になっているんです、神岡鉱山が。今、神岡鉱山は、鉱石は掘っていませんけど、自動車のバッテリーを回収して、それをまた鉛にして、自動車のバッテリーは非常にシンプルな製品でして、プラスチックの箱に鉛の電極が入っているだけです。
 あと硫酸が入っていまして、まあ硫酸は処理したらいいので、プラスチックと鉛はまた再利用できるんです。あとそれ以外にも三井金属は、皆さん持っている携帯電話の中の銅の薄い箔というんですけれども、回路に使うんですけれども、これの世界トップシェアなんですよ。最近ちょっと何か経営苦しいようですけれども、それでも倒産はしていないし、神岡鉱山も操業を続けながらちゃんとそれなりの利益を出して、経済と環境の両立というのができたわけですね。
 それで、この前、朝日新聞にも神岡の、まあ三井の取締役ですけれども、神岡の社長は「私の視点」に、今四十年たって成功したと、対策は。

 これは、参議院の議員やられた近藤忠孝イタイイタイ病の弁護団長がNHKの「その時歴史が動いた」にも出ておられましたけれども、弁護団も被害者も企業を評価しているんですね、今。一応企業、経済活動と、上流の神岡鉱山は操業を続けています、工場。鉛、亜鉛造っているんですけれども。しかし、それで下流の農業も両立するということで、やっぱり経済と環境の両立はやればできるんだと。

 アジアの問題ですけれども、一応このアジアの土壌汚染で私、最近、韓国とか台湾とか中国の調査やっているんですけれども、特に中国は皆さん御存じのようにひどい状況でして、僕は主に南の方の広東省とか湖南省の鉱山を見に行ったんですけれども、ほとんど排水は垂れ流し状態です。
 もう鉄分を、真っ赤な水がそのまま垂れ流されて、谷間は全部泥の海になっていると。下流にがんの村が幾つかできていると。がんの原因もよく分からないんですよね、砒素なのか。多分、砒素でがんになっていると僕は思うんですけれども。あと、カドミウムによってイタイイタイ病みたいな患者も出ていまして。

 そこの省の研究所の人がいろいろ調べていまして、その人に調査、案内してもらって、うちの中国の留学生がガイドしてくれたんですけれどもね。それで、日本にも一応中国の研究者を呼びまして、それで日本の富山とかイタイイタイ病の視察もやってもらいまして、これはテレビとか毎日新聞なんかに紹介されたんですけれども。
 それで、復元の現場なんかも見せたんですけれども、それをそのまま中国に持っていくのは無理ですね。中国にそんなお金がないとか。やはり、日本の経験を生かしてほしいんですけれども、このままいくと中国は環境よりも経済成長優先でいっていますから、何か行くところまで行かないと反省しないのかなという気はあります。

 だから、日本としては、やっぱりできるだけ日本の経験を知らせて、こういう解決の仕方をしたんだということでそれを紹介して、それを中国側がどうやって自分でやっていくかという、そのときに技術援助とか経済援助できることはやっぱり日本がやっていくべきだと思っております。
 以上です。
○荒井広幸君 ありがとうございました。
○川田龍平君 川田龍平です。
 土壌汚染対策法を始め環境関係法は市町村の役割が重要だと考えていますが、現実に地域で土壌汚染の問題が生じた場合に市区町村が住民への汚染状況の説明や緊急的な対応を行うことになると思いますが、環境省と都道府県、それから市区町村の相互に補完的な体制を整える必要があるかどうか、その点でこの法律が十分かどうかということ、あるいは課題があると考えているかどうかを参考人にお聞きしたいと思います。各参考人、お願いします。

○参考人(畑明郎君)
 
 難しい問題なんですけれども、一応二つの事例で紹介したいと思いますけれども。
 一つは、滋賀県の栗東の産廃問題ですけれども。栗東市は住民も含めて、僕はほとんど行政からは委員に呼ばれないんですけれども、珍しく栗東市の調査委員には住民推薦で入っていまして、それで栗東市としていろんな対策案の意見を出しているんですけれども。
 それに対して滋賀県は、今、嘉田知事なんですけれども、嘉田知事は有名なんですけれども、新幹線の駅は止めたんですけれども、それからダムもある程度止めようとしているんですけれども、この産廃問題についてはからっきし駄目でして、今、栗東市とか周辺の住民の反発を食らっていまして、要は住民はやっぱり全量撤去を要求しているんですよね。確かに僕らも全量撤去が一番望ましいんですけれども、コスト的に二百数十億掛かるので無理なので。

 ただ、県が考えている案は、要するに遮水壁で、ソイルセメントの遮水壁で囲って水をくみ上げて処理して産廃を残そうという、そういう案で四十五億円なんですけれどもね。僕らはそれよりも安い方法で効果的な対策ができますということで、底の粘土層が破壊されているんですけれども、その粘土層の修復と、明らかにドラム缶が三千本以上入っているのが分かっているので、そういう明らかに有害なものはやっぱり全部掘削して掘り起こす。
 そういう対策は二十億円ぐらいで済むんですよね。そういう提案を栗東市として、その委員会として提案しているんですけれども、県の方はそれをつぶしに来ていまして、県の対策案を強引にやろうとしたんですけれども、結局は、周辺の住民の同意が得られない、自治会の同意は得られないし、七つの自治会のうち一つしか同意が得られなかったし、議会でも、多分これは自民党と共産党が反対してちょっと通らない可能性が強いので、結局、県案についてはちょっと棚上げになっているんですけれども。
 そのときに環境省が果たした役割は非常に悪い役割をやっていまして、要は、環境省がどうも全量撤去をやるなと、現地封じ込めやれと。これは土壌汚染対策法と同じスタンスでして、土壌汚染対策法も掘削除去をやめろと、できるだけ現地封じ込めとか土かぶせて終わりにしろと、それと同じことがやられていますね。

 これは、四日市の日本最大の不法投棄、百六十万、百七十万立方メートルが不法で、全部足すと三百万立方メートル、巨大なごみの山ができているんですけれども。そのときも、当初、県は不法投棄の部分については全量撤去をしますという案を出したんですけれども、それに対して環境省は、聞くところによると、環境省が圧力を掛けて、結局むちゃくちゃひどい対策なんですけれども、土かぶせて雨水だけ処理する、それで終わりにしようという。

 岐阜の、あと椿洞の産廃の不法投棄事件でも、これは市長が当初、全量撤去をやりますということの方針を打ち出していたんですけれども、環境省がいろいろ圧力を掛けて一部撤去で百億円という形で決着ということで、そういう意味でやっぱり今、県とか環境省が市町村に対して果たしている役割というのは決して余り好ましくないという状況だと思っております。

○川田龍平君
 ありがとうございます。
 岡山市の小鳥が丘団地では、平成十六年に岡山市の水道局による水道管入替えの工事のときに土壌汚染が発見されて、これまで揮発性の有機化合物であるトリクロロエチレンが最大で環境基準の二十七倍、ベンゼンが二十六倍検出されるほどの状況にあると。
 このため、窓を閉めていても異臭によって眠れない人であったりとか、頭痛や鼻炎などに悩まされる人であったり、中には住宅ローンが残っているにもかかわらず引っ越しを余儀なくされた人もいると聞いているんですが。

 この土壌からの揮発経由による摂取、また住宅地における土壌汚染の場合というのがどうなのかという、長期的に濃度が高くない水準の暴露環境の中での暮らし、健康被害を受ける場合も考えられますが、こうした低濃度の長期暴露による健康被害について、参考人の意見を、答えられる方に答えていただきたいと思うんですが。

○参考人(畑明郎君)
 
 これは私の資料にも書いていますように、私も三回ほど現地に行きまして、住民にも頼まれまして、それで今裁判にもなっております。
 それで、この団地ってちっちゃい四十戸足らずの団地なんですけれども、団地の入口というか、道に入ると、川田議員も行かれたんですかね、もうぷうんと変な油臭いにおいがするんですよ。それで、二十四時間それを吸っていまして、多分外出した方が気分がいい、家にいると気分が悪くなると。実際に何かいろいろ発疹とかできものができたりとか。
 台所の下に物入れがあるんですけれども、その床がコンクリートを張っていないところが何か噴火口みたいになっていまして、ガスが噴き出してきているんですね、メタンガスとかいろんなガスが。それから、庭の土がぶわぶわになっているんです。非常に軟らかくなっているんです。下から噴き出してきて、一部黒っぽい油そのものが出てきて、十センチ掘りますともう真っ黒けの油まみれの土なんですよ。これは元々何か廃油のリサイクル業者でして、そのかすをまた豊島に持っていったというんです。豊島の産廃業者と何かセットだったらしいんですけれども。

 そういうところで健康被害がある、実際に健康被害が起こって裁判を起こしているんですけれども、全く行政の方は、もう岡山市も県も取り合おうとしないと。基準もないと。土壌汚染の大気の基準はないんですよね。土壌の溶出量とか含有量しかない、地下水の基準しかありませんからね。そういう意味でやっぱり裁判に訴えられない、裁判やってもこれは勝てるかどうか分からないと。

 もう日常的にずっと、それで、外へ引っ越したいけれども、その家はもう銀行の担保価値ゼロなんですよ。全然お金も貸してくれない、売れない、その家ももういろいろマスコミに出ていますから。そういう悲惨な状況になっているところがあります。だから、実際に人が住んでいるところで日常的にVOC揮発していきますから、そういう大変なところの問題が起こったところがあるんですけれども、それに今の土壌汚染対策法は全く役に立たないという意味で、大気の基準なんかも設定要ると思います。

 ただ、さっきの豊洲の問題でも、これ、ベンゼン、シアン、水銀は蒸発するんですよね、常温でも。それの基準はないという、やっぱりそういう問題はあると思います。大気汚染防止法で少し大気の環境基準はあるものはあるんですけれどもね。土壌汚染についてはないということで、問題あると思っています。
 以上です。
○川田龍平君 ありがとうございます。
 それから、今、汚染原因者の分社化を内容とする、水俣病についてなんですけれども、分社化を内容とするこの与党法案というのは今国会に提出されているんですが、汚染者負担の原則が今度薄くなる傾向にあるという印象を持っていますが、この土壌汚染法とこの汚染者負担の原則についての参考人の御意見を伺いたいと思います。これも答えられる方で結構です。


○参考人(畑明郎君)
 
 だから、この汚染者負担原則ですね、基本的には従来の公害法はそれで貫かれているんですけれども、特に土壌汚染については、農用地の土壌汚染防止法はイタイイタイ病を契機として制定されたんですけど、これは基本的には汚染原因者負担です。だから、神岡鉱山、三井金属が土壌復元費用を、これは国の法律があって少し減額されていますけど、基本的には企業負担、人体被害の補償に農業被害の補償すべて、だから五百億円近い金額を企業は支払っているんです。
 それが水俣病の場合、僕はチッソは非常にけしからぬと思うんですけど、三井金属はやっぱり、財閥系企業とそうでない企業の違いか、世間体があるのか知らないですけど、やっぱりきちっと三井金属は、三井財閥の一員だったし、対応を取って原因者負担を貫いているし。

 この土壌汚染対策法が元々できたときに、やっぱりその汚染者負担原則は全く貫かれない、土地所有者責任主義と言われていましたけどね。それで、汚染原因者がオーケーしたら所有者が請求できますよと言っていますけど、普通はオーケーしないです。汚染原因者イコール土地所有者だったら問題ないんですけど、汚染原因者は必ず逃げますから。
 それをまた証明しようとするとやっぱり裁判しかないとか、そういういっぱい、カネボウでもこれ裁判起こっているんですよ、企業同士が裁判やっているという。

 やっぱりそういう意味で、土壌汚染対策法はPPPは貫かれていないということで問題はあると思っています。

 本日はこれにて散会いたします。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/171/0065/17104140065005a.html



同じカテゴリー(改正土壌汚染対策法)の記事画像
改正土壌汚染対策法施行通知 目次
同じカテゴリー(改正土壌汚染対策法)の記事
 土壌汚染対策法 ()無し要点 (2010-07-17 20:35)
 改正土壌汚染対策法施行通知 目次 (2010-07-12 20:48)
 汚染土壌処理業の許可の申請の手続について (2009-11-19 22:53)
 汚染土壌処理業の許可の申請の手続等に関する省令 (2009-11-19 22:44)
 改正後の土壌汚染対策法 (2009-11-19 22:32)
 改正土壌汚染対策法の解説 (2009-11-19 22:19)

Posted by 大阪水・土壌研究会員 at 18:55│Comments(0)改正土壌汚染対策法
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。


削除
第171回国会 環境委員会 畑明郎先生の発言
    コメント(0)