第三次生物多様性国家戦略 第2部第1章第7節 都市

大阪水・土壌研究会員

2009年11月07日 19:42



第三次生物多様性国家戦略 第2部第1章

第7節 都市
(基本的考え方)
 高密度な土地利用、高い環境負荷が集中する都市においては、生物の生育・生息の場は
水や緑豊かな自然的環境を有する空間に限定されます。これまで、都市公園の整備や特別
緑地保全地区などの指定などにより、その保全・創出を図ってきましたが、民有の緑地は
開発などに伴い年々減少してきました。都市における生物多様性の保全を図るうえでは、
これらの空間について、より一層適切な保全・再生・創出・管理を行う必要があります。

 そのためには、生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成の視点から、
生物の生息・生育の核となる地区、生物の生息・生育環境を保全・再生し分布域を拡大す
る地区、これらの地区を結ぶ生物の移動空間となる回廊、及び、これらが安定して存続す
るための緩衝帯など、それぞれの空間が有する役割について配慮する必要があります。
また、今後の人口減少・超高齢社会においては、都市機能を一定の地域に集約し、公共
交通ネットワークで連携させる集約型都市構造(コンパクトシティ)を目指すことが望ま
れますが、その機をとらえ、都市の骨格形成や分節化に資する緑地などについても、上記
の観点から、その保全・再生・創出を図る必要があります。
生物多様性の保全に資する自然的環境の保全・再生・創出・管理のため、水と緑の将来
像を位置付けた都市の総合的な計画である、都市計画区域マスタープランや緑の基本計画
などに即して、都市の形態や自然的環境の様態に応じ、総合的かつ体系的な施策の実施を
推進します。

 具体的には、首都圏、近畿圏などの都市が連坦している地域においては、近郊緑地保全
区域の指定など都市縁辺部における緑地の保全とともに、都市公園や道路、河川、下水道
などの事業間連携による自然的環境の創出により、広域的視点に基づく、水と緑のネット
ワークの形成を推進します。一の都市の単位においても、核となる都市公園や永続性が担
保された緑地や、道路などの緑、水辺、水路、段丘崖などの緑、社寺林・屋敷林などによ
り構成される、都市内の水と緑のネットワークの形成を推進します。

 また、このように保全・再生・創出された自然的環境が生物多様性の保全に貢献するた
めには、その質の維持・向上を図ることが重要であることから、地域在来の植物の活用と
ともに、適切な管理に向けた取組を推進します。

さらに、継続的に自然的環境の保全・再生・創出・管理を行うにあたっては、多様な主
体の参画による取組が重要となるため、普及啓発活動を通じ、その一層の推進を図ります。

1. 緑地の保全・再生・創出・管理に係る総合的な計画の策定

(施策の概要)
 都市においては、都市公園などの公共公益施設の緑地のほか、平地林、屋敷林、生産緑
地、住宅地内の樹木、生け垣などのさまざまな機能や規模の緑地が分布しており、これら
が体系的に位置づけられ、有機的な連携を図りつつ配置されることにより、生物多様性の
保全に資する自然的環境が確保されます。また、緑地の保全・再生・創出にあたっては、
都市公園の整備、道路、河川、港湾などの公共施設の緑化や、特別緑地保全地区、風致地
区、生産緑地地区、市民緑地制度などによる緑の保全など、官民一体となって体系的かつ
計画的に緑化の推進及び緑地の保全に係る施策を展開することが不可欠となっています。

 このため、「都市緑地法」では、住民の生活に最も身近で、地域の状況を的確に把握してい
る市町村が主体となり緑地の保全・再生・創出に関する総合的な計画である緑の基本計画
を策定できることとしています。
 緑の基本計画においては、市町村がその区域内における緑地の適正な保全と緑化の推進
に関して、緑地の保全及び緑化の目標や、その推進のための施策などについて定めること
としています。

1.1 緑の基本計画
(現状と課題)
 緑の基本計画は、平成6年の制度化以降、着実に策定市町村数は増加しており、平成19
年3月末現在で、全国で約630 の市町村において策定され、人口50 万人以上の都市にお
いてはすべての都市において策定されています。
 平成16 年の都市緑地法改正により、地方公共団体の設置に係る都市公園の整備の方針
を計画の記載内容に加えることで、都市公園を含めた都市における緑地の保全と緑化の推
進に関する総合的なマスタープランとして明確に位置づけるとともに、都市における緑の
確保のための主要な手段としての都市公園の整備の位置づけを明確化しています。また、
従来、環境基本計画との調和や都市計画の市町村マスタープランなどとの適合を図ってき
たところですが、景観法に基づく景観計画との調和を保つようにするなど、関連する各種
計画との調和、適合に努めることで、より適切に都市の自然的環境の確保を図っていると
ころです。
 緑の基本計画は、その策定の過程において公聴会の開催などを通じ住民などの意見を反
映するための措置を講じることとしており、都市の望ましい自然的環境の実現に向けた行
政内部における合意形成に加え、地域住民などの多様な主体における緑の保全・再生・創
出への取組に対する幅広い理解、参加意識や気運の醸成が期待されるところです。
今後、より一層、自然と共生し、環境負荷の小さな都市構造の実現に向けて、地球温暖
化、ヒートアイランド現象の緩和、生物多様性の保全などさまざまな環境問題に配慮した
総合的な緑の基本計画の策定を進めるとともに、策定にあたっては、緑の量の確保ととも
に、生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成など、緑の質の確保や、緑
の有機的な結合にも留意することが必要です。

(具体的施策)
○ 未策定市町村における緑の基本計画の策定の推進を図るとともに、既に策定済みの市町
村についても、策定後一定期間が経過したものについては、社会情勢の変化などに対応
した見直しを進めます。(国土交通省)

○ 緑の基本計画の実現を図るため、引き続き、緑地環境整備総合支援事業や緑化重点地区
整備事業などにより、重点的に緑化の推進に配慮を加えるべき地区などにおける緑化の
推進や緑地の保全を進めます。(国土交通省)

2. 緑地、水辺の保全・再生・創出・管理に係る諸施策の推進
(施策の概要)
都市における緑地の保全・再生・創出・管理については、平成15 年に策定された社会
資本整備重点計画(平成15-19 年)において、さまざまな緑地の機能に着目した指標が設
定されているところですが、特に生物の多様性の確保に関連する指標としては、都市域に
おける水と緑の公的空間確保量及び生物の多様性の確保に資する良好な樹林地などの自然
的環境を保全・再生・創出する公園・緑地の整備量が掲げられています。

 水と緑の公的空間確保量については、都市域における自然的環境(樹林地、草地、水面など)を主たる構
成要素とし、制度的に永続性が担保されている空間について、計画期間中にひとりあたり
13m2 を確保することを目標としています。また、生物の多様性の確保に資する良好な樹
林地などの自然的環境を保全・再生・創出する公園・緑地については、計画期間中に約
2,400ha を新たに保全・再生・創出することとしています。平成16 年度に創設された緑
地環境整備総合支援事業では、三大都市圏に存する都市など、緑とオープンスペースの確
保が課題とされる都市において、緑の基本計画又は景観計画に基づき、事業対象区域を設
定し、都市公園の整備、古都及び緑地保全事業、市民緑地の公開に必要な施設整備などを
総合的に支援することで、都市域における水と緑のネットワークの形成を推進しています。

 さらに、都市における生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成の視点
から、緑の基本計画などに基づき、中核となる緑地の保全、拠点的な大規模な都市公園を
整備するとともに、これらを結ぶ回廊となる道路や都市公園、公共公益施設の緑化、さら
には緩衝帯となる民有地の緑地の保全などを進めます。

2.1 都市公園の整備
(現状と課題)
 都市公園は、野生生物の生息・生育環境の形成や自然とのふれあいの場となるなど多様
な機能を有しています。「都市公園法」においても、主として動植物の生息地又は生育地で
ある樹林地などの保護を、その設置目的のひとつとするなど、生物多様性の保全に資する
都市公園の整備を推進しています。平成19 年3月末現在、全国で93,218 か所、109,953ha
の都市公園が整備、管理されています。
 国営公園では、市民とともに動植物の生育・生息空間の保全・再生・創出を行い、生き
ものと共生できる環境づくりを進めています。国営常陸海浜公園では「沢田湧水地」の貴
重な湿地環境の復元に取り組んでおり、絶滅危惧種であるホトケドジョウなどの貴重な生
態系の安定した保全のため、外来種の除草や間伐などを行っています。また、国営越後丘
陵公園や国営飛鳥歴史公園などでは、美しい里山環境を再生するため、雑木林の間伐、下
草刈りなど里山の環境整備を市民参加により積極的に推進しており、林床に生えるヤマユ
リなどの野草も増加しています。国営昭和記念公園では、米軍の基地跡地に緑の回復を進
めており、整備にあたり、雑木林やビオトープ、水鳥の生息に配慮した水辺空間など多様
な自然環境を創出するとともに、維持管理において、カントウタンポポの保護増殖、バッ
タの生息域の保持などの生物に配慮した草刈りを行うなどにより、米軍基地跡地であった
昭和53 年度と比べ、公園内に生息する生物の種類が、鳥類は約3 倍(17 科23 種→29 科
68 種)、昆虫類は約10 倍(36 科77 種→181 科776 種)に増加しています。

 そのほか、「ラムサール条約」登録湿地である谷津干潟をはじめ、希少種、固有種などを
含め多様な生物相を有する干潟・湿地などの保全、昆虫などの生息環境の保全に配慮した
森づくり、生きもののための水辺づくりなど、都市において身近に自然的環境とふれあう
ことのできる空間としての都市公園の特性を活かしながら、生物の生息・生育環境の保全
を積極的に行っています。
 特に、埋立造成地や工場などからの大規模な土地利用転換地などの自然的な環境を積極的に創出すべき地域などにおいて、自然再生緑地整備事業により、干潟や湿地、樹林地の再生・創出など、生物多様性の確保に資する良好な自然的環境基盤の整備を行っています。静岡市のあさはた緑地では、自然再生法に基づく自然再生協議会を組織し、地方公共団体、NGO、国土交通省などの連携のもとに、都市公園による二次的自然環境の保全・再生・活用を推進しています。

(具体的施策)
○ 都市緑化植物園、環境ふれあい公園などについて、国営公園を含む拠点相互間のネット
ワークを強化し、「みどり」の活動拠点としての多面的な機能を高めていきます。(国土交通省)

○ 埋立造成地や工場などからの大規模な土地利用転換地などの自然的な環境を積極的に
創出すべき地域などにおいて、自然再生緑地整備事業の推進により、干潟や湿地、樹林
地の再生・創出など、生物多様性の確保に資する良好な自然的環境基盤の整備を推進し
ます。(国土交通省)

○ 都市における水と緑のネットワーク形成を推進するため、緑地環境整備総合支援事業に
より、地方公共団体が行う都市公園の整備、緑地保全事業などを総合的に支援します。(国土交通省)

2.2 道路整備における生物多様性の保全への配慮
(現状と課題)
 道路の整備においては、生物多様性の保全のほか、良好な景観の形成、二酸化炭素の吸
収などに資することから、樹木による道路のり面、植樹帯、中央分離帯などの緑化を行っ
ています。また、ビオトープの創出や道路のり面の緑化に地域性種苗(当該地域固有の遺
伝情報を有する植物をもとに生産される種や苗)を用いる工法などの採用など、生物多様
性に配慮した取組を進めています。

(具体的施策)
○ 道路においても、『緑』を道路空間の主要構成要素として位置付けて、積極的に緑化を
図るなど、生物多様性の保全に資する取組を進めます。(国土交通省)
○ 道路のり面、インターチェンジなどのオープンスペースを活用し、多様な生物の生息・
生育空間の創出を図ります。(国土交通省)
○ 引き続き、ビオトープの創出など、生物多様性の保全に配慮した取組を進めます。(国
土交通省)

2.3 下水道事業における生物多様性の保全への取組
(現状と課題)
 湖沼や閉鎖性海域などにおいては水質環境基準の達成率が低く、その水質を改善するた
め、高度処理や、合流式下水道(汚水と雨水を同じ管で流すため、一定以上の降雨時に未
処理下水が公共用水域などへ放流されることがある下水道)の改善、ノンポイント対策(雨
天時に市街地などから公共用水域などへ流出する面源負荷の対策)などを進める必要があ
ります。
 一方、都市化の進展により、雨水が浸透しない面積が拡大し、雨水の地下浸透量、湧水
などが減少していることから都市内の河川や水路などの平常時の流量が減少してきており、
都市における貴重な水資源として位置付けられる下水処理水の有効利用の取組をさらに進
める必要があります。
 また、多様な生物の生育・生息場所の創出のために下水道の持つ施設空間を活用するこ
とが求められており、下水道による生態系への影響について総合的に検討し、より生態系
にやさしい配慮を図る必要があります。

(具体的施策)
○ 過密化した都市における貴重なオープンスペースである下水処理施設の上部や雨水渠
などの施設空間において、せせらぎ水路の整備や処理水の再利用などによる水辺の保
全・創出を図り、都市における生物の棲み場を提供し、自然を呼び戻します。(国土交通省)

○ 生態系への配慮が必要な水域において、なじみ放流(放流先の生態などに配慮(水質、
水温、発泡防止)した下水処理水の放流形態(自然浄化、貯留池、浸透など))などを
推進します。(国土交通省)

○ 下水道の整備による公共用水域の水質保全だけでなく、「水環境改善緊急行動計画」に
よる河川事業と連携した水質改善、湖沼や閉鎖性海域における富栄養化の防止などに資
する高度処理を推進します。(国土交通省)

○ 新世代下水道支援事業制度の活用による、下水処理水や雨水の再利用、雨水の貯留浸透
による流出抑制など、広域的な視点からの健全な水循環系の構築に向けて事業を推進し
ます。(国土交通省)

2.4 緑地保全地域、特別緑地保全地区
(現状と課題)
 緑地保全地域制度は、平成16 年の都市緑地法改正により新たに創設された制度であり、
都市計画区域又は準都市計画区域内において、無秩序な市街地化や公害又は災害の防止な
どのため、また地域住民の健全な生活環境を確保するために保全する必要がある緑地につ
いて、一定の土地利用との調和を図りつつ、自然的環境を適正に保全する制度です。都市
近郊の里地・里山などの維持・管理や、大都市地域周辺などにおける自然再生が課題とな
っていることを踏まえ、特別緑地保全地区に比べ緩やかな行為の規制により、一定の土地
利用を行うことを容認しつつ、比較的広域的な見地から緑地を保全することを目的として
います。

 特別緑地保全地区は、都市計画区域内において、無秩序な市街地化の防止や災害の防止
などに資する緑地、伝統的・文化的意義のある緑地のほか、風致・景観に優れた緑地や、
動植物の生息地として保全すべき緑地について、建築物の新築、木竹の伐採などの一定の
行為に対する規制(知事による許可制度)、行為規制に伴う損失補償、土地の買入れなどに
より、その良好な環境を現状凍結的に保存する地区です。特別緑地保全地区は、平成19
年3 月末現在全国で355 地区、2,034ha が決定されています。

 昨今、特別緑地保全地区などの緑地については、土地所有者による管理が十分に行き届
かず、良好な自然的環境としての機能を十分に発揮できないという問題が生じています。
都市における緑地は、都市住民の貴重な財産であるとともに、多様な生物の貴重な生息・
生育基盤であり、その管理は、土地所有者だけでなく、地方公共団体、地域住民などの協
力分担により行われ、次世代へと引き継がれる必要があります。管理協定制度(都市緑地
法など)は、地方公共団体又は緑地管理機構が土地所有者などと協定を締結し、土地所有
者などに代わって特別緑地保全地区などの緑地の適正な管理と保全を図る制度で、適切な
緑地の管理と保全を推進するものです。

(具体的施策)
○ 行為規制に伴う損失補償や土地の買入れ、土砂崩壊防止施設などの緑地の保全などに必
要な施設の整備に対し、国庫補助を行うとともに、生物の多様性を確保する観点から特
別緑地保全地区の指定の促進に向けた取組を進めます。(国土交通省)

○ 生物多様性の保全に資する都市近郊の里地・里山などの自然的環境を保全するため、緑
地保全地域の指定を推進します。(国土交通省)

○ 多様な主体により良好な緑地管理がなされるよう、管理協定制度などの適正な緑地管理
を進める制度の活用を図っていきます。(国土交通省)

○ 都市における水と緑のネットワーク形成を推進するため、緑地環境整備総合支援事業に
より、地方公共団体が行う都市公園の整備、緑地保全事業などを総合的に支援します。
(国土交通省)

2.5 近郊緑地保全区域、近郊緑地特別保全地区
(現状と課題)
近郊緑地保全区域は、「首都圏近郊緑地保全法」、「近畿圏の保全区域の整備に関する法律」
に基づき、無秩序な市街化の防止及び都市の生活環境の保全を図ることを目的に首都圏及
び近畿圏の大都市圏近郊の良好な自然の環境を有する緑地を保全する制度であり、建築物、
工作物の新築、改築、増築などの一定の行為に対し届出の義務を課すもので、緑地の保全
を通じて、生物多様性の保全に寄与するものです。
本区域は、首都圏の近郊整備地帯又は近畿圏の保全区域内の樹林地などで、圏域レベル
で相当規模を有しているものについて、国土交通大臣が指定するもので、区域内で特に良
好な自然の環境を有するなど緑地保全の必要が特に著しく高い地区については、都府県な
どが都市計画に近郊緑地特別保全地区を定めています。

首都圏及び近畿圏では、都市再生プロジェクト(第3次決定:平成13 年12 月)を踏ま
え、自然環境の総点検を行い、「首都圏の都市環境インフラのグランドデザイン」(平成16
年3月)及び「近畿圏の都市環境インフラのグランドデザイン」(平成18 年8月)を策定
しており、これらに基づき適切に自然的環境の保全・再生・創出を図ることが必要です。
近郊緑地保全区域は、首都圏において15,861ha、近畿圏において81,212ha、近郊緑地
特別保全地区は、首都圏において759ha、近畿圏において2,697ha が指定されています(平成19 年3 月末現在)。

(具体的施策)
○ 行為規制に伴う損失補償や土地の買入れ、土砂崩壊防止施設などの緑地の保全などに必
要な施設の整備に対し、適正な補助を行うとともに、生物の多様性を確保する観点から
近郊緑地保全区域などの指定の促進に向けた取組を進めます。(国土交通省)

○ 首都圏及び近畿圏については、それぞれの「都市環境インフラのグランドデザイン」に
位置づけられた保全すべき区域について、必要に応じて近郊緑地保全区域などに指定す
べく検討を進めます。(国土交通省)

○ 都市における水と緑のネットワーク形成を推進のため、緑地環境整備総合支援事業によ
り、地方公共団体が行う都市公園の整備、緑地保全事業などを総合的に支援します。(国土交通省)

2.6 歴史的風土保存区域、歴史的風土特別保存地区
(現状と課題)
 わが国往時の政治、文化の中心などとして歴史上重要な地位を有する、鎌倉市、逗子市、
京都市、奈良市、天理市、橿原市、桜井市、斑鳩町、明日香村、大津市において、わが国
の歴史上意義を有する建造物、遺構などと一体をなす自然的環境としての緑地を保存する
制度(「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」)であり、自然的環境の保全
を通じて生物の生息・生育環境の保全に寄与しています。
 建築物の新築などの一定の行為に対し届出の義務を課することにより良好な自然的環境
を有する緑地などを保全する歴史的風土保存区域は20,083ha(平成19 年3 月末現在)、
一定の行為に対する許可制のもとで、行為規制に伴う損失補償、土地の買入れなどの措置
を講ずることにより良好な自然環境を有する緑地を現状凍結的に保全する歴史的風土特別
保存地区は60 地区約8,832ha(平成19 年3 月末現在)(明日香村における第1種及び第

2種歴史的風土保存地区を含む。)が指定されています。
(具体的施策)
○ 都市における水と緑のネットワークを形成するため地方公共団体が行う行為規制に伴
う損失補償や土地の買入れ、保全などを推進する施設の整備に対し、適正な補助を行います。(国土交通省)

○ 都市における水と緑のネットワーク形成を推進するため、緑地環境整備総合支援事業に
より、地方公共団体が行う都市公園の整備、古都保存事業などを総合的に支援します。(国土交通省)

2.7 風致地区
(現状と課題)
 風致地区は、都市における風致の維持を目的として都市計画に定められる地域地区のひ
とつであり、地方公共団体が次のいずれかに該当する土地について、都市における土地利
用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な土地の区域を指定することがで
きます。

ア 樹林地もしくは樹木に富める土地(市街地を含む。)であって、良好な自然的景観を
形成しているもの

イ 水辺地(水面を含む。)、農地その他市民意識からする郷土意識の高い土地であって、
良好な自然的景観を形成しているもの

風致地区内においては、建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採、土石・廃棄物などの
たい積その他の行為について、政令(風致地区内における建築などの規制に係る条例の制
定に関する基準を定める政令)で定める基準に従い、都道府県などの条例で規制ができる
こととされており、条例で定められた行為については、都道府県知事などの許可を受けな
ければならないこととなっています。

風致地区は、平成18 年3月末現在全国で約169,511ha が指定されています。

(具体的施策)
○ 風致地区は、樹林地、水辺地など、良好な自然環境を維持・創出し、都市における生物
の生息・生育の場を提供していることから、今後も制度の的確な運用を図り、指定の促
進を図るための取組を進めます。(国土交通省)

2.8 市民緑地
(現状と課題)
 市民緑地は、都市計画区域又は準都市計画区域内の300m2 以上の土地又は人工地盤、建
築物などについて、地方公共団体又は緑地管理機構と土地所有者とが契約を締結し、契約
に基づき当該土地を住民の利用に供する緑地(市民緑地)として一定期間(5 年以上)設
置管理されるもので、地域住民の自然とのふれあいの場や生物の生息・生育地となる身近
な緑地を確保しています。
平成19 年3月末現在全国で129 地区、約72ha の市民緑地が設置管理されています。

(具体的施策)

○ 平地林や屋敷林などの既存の緑地の保全のみならず、人工地盤上や建築物敷地内におい
ても積極的に市民緑地制度を活用し、都市における生物の生育・生息域の保全・再生・
創出を推進します。(国土交通省)

2.9 生産緑地地区
(現状と課題)
 生産緑地地区は、市街化区域において緑地機能などの優れた農地などを計画的に保全し、
もって良好な都市環境の形成に資することを目的として都市計画に定められる地域地区の
ひとつであり、公害又は災害の防止や農林漁業と調和した都市環境の保全など良好な生活
環境の確保に相当の効用がある一団の農地などの区域を指定することができます。
 生産緑地地区内においては、建築物の建築などについて、市町村長の許可を受けること
とされており、農林漁業を営むために必要な一定の行為で生活環境の悪化をもたらすおそ
れがないと認められるものに限り、許可されることとなっています。
 生産緑地地区は、平成18 年3月末現在全国で約64,700 地区、約14,661ha が指定され
ています。

(具体的施策)
○ 都市においても農地は生物の生息・生育環境として評価することができるため、今後も
生産緑地地区制度の的確な運用を図ります。(国土交通省)

2.10 屋敷林、雑木林などの保全
(現状と課題)
都市に残された屋敷林など住宅地まわりの緑地については、相続の発生や開発などを契
機として失われており、宅地の細分化の防止などを含め、緑地の所有者のさまざまな意向
も踏まえつつ、多様な保全策を総合的に講じていく必要があります。
 これまでに述べた制度のほか、市街地などに残された屋敷林、雑木林などの樹林で、地
域全体で維持保存していくことが必要と認められるものについては、「都市の美観風致を維
持するための樹木の保存に関する法律」に基づく「保存樹、保存樹林」の指定を行うこと
ができます。また、「都市緑地法」に基づく「緑地協定」のほか、地方公共団体の条例、要
綱など、緑の保全に係る制度の活用に加え、寄付や税制など、多様な制度の活用によって、
緑地の保全を推進し、生物の生息・生育環境の保全を図っています。
 しかし、屋敷林などの市街地の緑地は、相続の発生や開発などを契機として消失を続け
ており、物納された樹林地や、まとまった規模の国公有地などの保全が課題となっていま
す。

(具体的施策)
○ 市街地などに残された屋敷林などの比較的小規模な緑地についても、特別緑地保全地区
や市民緑地の活用を推進し、土地所有者の意向に適切に対処しつつ、その保全を図ります。(国土交通省)

2.11 民有地における緑の創出、屋上緑化・壁面緑化の推進
(現状と課題)
 都市における生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成のためには、建
物が密集する市街地においても、屋上や壁面などを含むさまざまな空間に水や緑の空間を
効果的に創出し、拠点となる緑と緑をつなぐ役割を担うことで、生物の生息・生育環境を
保全する効果が期待されます。全国で積極的に実施されている屋上緑化においては、平成
12 年から平成18 年までに約6,000 件、160ha が整備されており(国土交通省調べ)、都
市のヒートアイランド現象の緩和効果のほか、昆虫や鳥類などの生息空間の確保が図られ
ています。
 また、市街地における緑化の推進を図るため、「都市緑地法」に基づき、都市計画区域に
緑化地域を定め、大規模な建築物の敷地について緑化率の最低限度の規制を行うことがで
きます。緑化地域は、良好な都市環境の形成に必要な緑地が不足し、建築物の敷地内にお
いて緑化を推進する必要がある区域について定められ、都市における生物の生息・生育環
境の創出に寄与するものです。
 また「都市緑地法」に基づく緑化施設整備計画認定制度は、建築物の屋上、空地その他
の屋外での緑化施設の整備に関する緑化施設整備計画を市町村長が認定するもので、緑化
施設に係わる固定資産税の課税の特例措置などが講じられています。緑化施設整備計画は、
平成19 年3 月末現在全国で19 か所が認定されています。

(具体的施策)
○ 緑化地域制度、緑化施設整備計画認定制度などの制度については、民有地の緑化を推進
するために有効な制度であることから、制度の普及に努めます。(国土交通省)
○ 屋上緑化や壁面緑化については、都市のヒートアイランド現象の緩和効果の測定を通じ
た地球温暖化問題への貢献度や、生物の生息・生育環境としての効果について、より実
証的なデータの収集を進め、その効果の把握に努めます。(国土交通省)[再掲(2章6節1.1)]

3. 緑の保全・再生・創出・管理に係る普及啓発など
(施策の概要)
 都市の緑の充実を図るためには、普及啓発活動や国民運動の展開が不可欠であり、地球
温暖化対策や生物多様性の確保が課題となっている今、国において普及啓発活動を積極的
に展開する必要があります。全国「みどりの愛護」のつどいや、全国都市緑化フェアなど
の普及啓発行事を推進するほか、国営公園においては普及啓発や国民運動の展開の拠点と
して、緑に親しむさまざまなきっかけづくりを行い、公園緑地ネットワーク的機能を持た
せるなど、多様な主体による緑の保全・再生・創出を促すための活動の展開を図ります。

3.1 緑に関する普及啓発の推進
(現状と課題)
 緑の保全・再生・創出を推進するため、みどりの月間(4 月15 日〜5 月14 日)や都市
緑化月間(10 月1〜31 日)において、全国「みどりの愛護」のつどい、全国都市緑化フ
ェアなどの開催や「みどりの愛護」功労者表彰、都市緑化及び都市公園等整備・保全・美
化運動における都市緑化功労者表彰、その他の緑の保全・再生・創出に係る表彰などを通
じて、広く都市緑化意識の高揚、緑豊かなうるおいのある住みよい環境づくりを推進する
ための普及啓発を図り、都市地域における生物の生息・生育環境の保全・創出を推進して
います。
 社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)により、企業などによる緑地の管理・運営
の取組を多角的に評価することで、緑に関する活動の意欲の向上や取組の強化を図ってい
ます。平成19 年5 月現在、18 サイト(地区)が認定されております。
 こうした普及啓発活動などによる緑の国民運動を支える幅広い人材の育成や確保、また、
多様な主体による多様な取組を奨励していくため、支援制度の充実とともに広報活動の重
点化が必要とされています。

(具体的施策)
○ 全国「みどりの愛護」のつどいについては、従来国営公園を会場としていましたが、全
国の都市公園を会場とした開催方式とし、より一層国民のみどりに対する意識の高揚を
図っていきます。(国土交通省)

○ 開発事業における緑に関わる取組を評価し、優秀な事例については認定・表彰すること
で事業者の努力を促すため、都市開発における緑地の評価制度を創設します。(国土交通省)

○ 緑化活動に取り組む地域の団体に対して、緑の創出に必要な苗木や機材などに係る助成
などを行う民間における事業などを積極的に支援し、都市における生物の生息・生育環
境の形成に資する緑の創出を図ります。(国土交通省)

3.2 下水道における生物多様性の保全に関する普及啓発
(現状と課題)
 下水道の整備に伴い、下水道に集まる水量は年々増加しており、都市内の水循環や公共
用水域に排出する汚濁負荷の管理など、水・物質循環系に対して、下水道の果たす役割は
非常に大きなものとなってきましたが、下水道が目に触れる機会が少ないため、こうした
下水道の役割が広く認識されていません。住民自らが排水している汚濁負荷が下水道によ
って浄化されていることを理解することは、水質改善、ひいては、生態系など、環境への
意識の向上に繋がります。

 このため、今後は、下水道に対する住民の理解を深め、地域が一体となって水質改善に
取り組む体制づくりを進める必要があります。こうしたことで住民の関心も高まり、地域
に根ざした生態系保全の取組が可能となります。

(具体的施策)
○ 地域住民や教育関係者、NPO と連携し、多様な生態系の生育・生息場所の創出を図る
場としての下水道施設の役割などについて、積極的に情報発信し、住民への理解に努め
ていきます。(国土交通省)
http://www.env.go.jp/nature/biodic/nbsap3/pdf/mainbody.pdf


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