小鳥が丘土壌汚染第20回裁判! 2010年7月7日
2010年7月7日(水)13時15分から岡山地方裁判所で住民訴訟第一次(3世帯)第20回口頭弁論準備手続きが行われました。
前回裁判長から、かなりの分量になると思われるが過去の準備書面と重複して構わないので被告(両備)の注意義務はこれで全部という準備書面を、原告(住民)から再度提出するよう要請があったので、7月5日付で提出しました。
被告(両備)の、過失と宅地開発販売企業の立場で注意義務を怠った点を中心に記述しています。
被告(両備)が土地買収時に和解調書を作成したという確かな裁判記録の証拠があり、被告(両備)の主張する「 何の汚染か分かるはずもなかった 」というのは通用しないし、またそれらの記録により被告(両備)は、汚染原因者である旭油化の権利と義務を引き受けており汚染原因者と同等の立場です。
最初に裁判長は、前回協議した原告(住民)準備書面は提出された、と述べた後、
(裁判長)
被告側から瑕疵担保責任却下の最高裁判例のホームページコピーが提出されている。原告としては過失の内容を主張したが、被告提出の瑕疵担保責任の判例で何を主張したいのですか?
(被告首藤弁護士)
反論書面を近いうちに提出します。
(裁判長)
では反論書面を見てからということで、原告も追加主張があれば出して下さい。反論書面が出れば双方の主張がそろったことになる。
被告が申請している証人尋問は必要ですか。
(被告首藤弁護士)
必要と考えます。
(裁判長)
被告反論書面はいつ提出できますか?
(被告首藤弁護士)
1か月くらいで。
http://blogs.yahoo.co.jp/kotorigaoka/50960659.html
平成19年(ワ)第1352号 損害賠償請求事件
原 告 藤原 康 他2名
被 告 両備ホールディングス株式会社
準備書面
平成22年7月5日
岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中
原告ら代理人弁護士 河 田 英 正
第1 旭油化の違法操業と汚染の実情
1,本件小鳥が丘団地は、旭油化工業株式会社がソーダ油さいや廃白土から塗料や石鹸の原料となる脂肪酸を精製しているといわれていた工場施設があった。本件土地での操業は昭和40年7月からである。
しかし、その工場施設のほとんどに屋根が設置されてなく、むき出しの設備から周辺に悪臭がたちこめて周辺住民からたびたび苦情が寄せられていた。
2,同会社は、昭和48年には廃棄物処理法違反で書類送検されたり、昭和57年5月までの間に、岡山市から悪臭と水質汚濁防止法に基づく施設改善勧告、命令など計8回、岡山県からは河川法違反で施設撤去命令を受けるなど遵法精神のかけらもない違法操業を繰り返して環境を汚染し続け、悪臭で周辺住民を悩ませてきていた。
3,昭和56年ごろには、沼川に油膜が浮き、死んだ魚が浮くなどのことが起きていた。甲10号証の1,2は昭和56年5月に同会社の外観を撮影した写真である。工場敷地内は油分を大量に含んだ汚泥がそのまま放置されていて、ドラム缶などが散乱している状況となっていた。
甲10号証の3は、同年8月23日に共産党に所属する岡山県議、市議らが現地調査をしている状況が撮影されている写真である。同会社工場敷地内に油泥が散乱している状況が撮影されている。
甲10号証の4は、昭和57年1月21日に同会社敷地内を撮影したものであり、基本的になんら改善された痕がみられない。昭和57年6月3日に岡山県は同会社に対して工場内に放置している汚泥を同年8月31日までに除去するよう処理命令を出した(甲1号証の1)。この除去の対象となったのは、工場内に違法に放置されている産業廃棄物や汚泥は3500トンであるとされている。
昭和57年7月27日、同会社と被告会社とで岡山簡易裁判所で和解が成立した後の日である同年12月1日の同会社の工場の状況が撮影されている。工場の操業はなされてはいないが、これらの写真からも敷地内には汚泥はそのまま除去されないまま残っている様子が明らかである。また、底の抜けた貯蔵タンクがそのまま残骸をさらしている様子も撮影されている。
4,同会社が石鹸の原料となる脂肪酸を精製していたというのは表向きの説明であり、実態は廃油などの産業廃棄物処理を業としていた。
底の抜けた貯蔵タンクにこれらの廃棄物を入れて直に地面に浸透させるなどして違法に敷地内において処分されていたものもあった。一部は、豊島の違法な産廃処分場に運搬されるなどして処分されていた。
同会社は、前記和解で設備移転費用として被告会社から受け取った8000万円で吉井町草生地区に瑞穂産業株式会社を設立して、廃油の処理施設を建設し、別の社名で看板を掲げて偽装したうえ、昭和57年11月初旬頃から無届けでの違法操業を始めた。
しかし、この場所においても旭油化時代と同様に敷地内に大きな穴を掘り、その穴に廃油を流し込んで直接に地中にその廃油を浸透させる処理をしていた。
操業が始まるや否やすぐに悪臭、地下水の汚染などの被害が発生し、地域住民らからの強い追及を受けて、操業をやめて施設を撤去せざるをえなくなった。
旭油化は、極めて悪質な体質をもった会社であった。
http://blogs.yahoo.co.jp/kotorigaoka/50964654.html
第2 被告会社の土壌汚染の実態の認識
1,被告会社は、本件旭油化に隣接する小鳥の森団地を昭和50年9月には造成を完了して販売を開始している(被告答弁書、請求の原因に対する認否3項)。
小鳥の森団地造成に際して、隣地の旭油化の操業の状況に関しては、当然にその現状について認識があったはずである。
被告会社は、第1で述べたとおり、旭油化の施設は、ほとんど屋根に覆われている状況になく、悪臭を周囲に放出し、川には 油膜が張り、死んだ魚が浮くなどの環境への被害がみられていた。生活環境に大きな悪影響を与えていた。
こうしたことに地域住民、つまり小鳥の森団地を被告会社から購入して居住者となった人々らからも苦情が寄せられるようになった。
この非難は、旭油化に対してだけでなく、小鳥の森団地を造成して販売した被告会社にも向けられていた。
2,昭和54年頃には、被告会社は、旭油化からの悪臭を根本的に解決するためには被告会社が本件土地を買い取り、旭油化の操業を停止させる以外に解決方法がないとの認識に至った。
つまり、この時点で既にいくら旭油化に対して、改善を要請しても実現される可能性はなく、悪臭問題を根本的に解決するにはもはやこの土地を被告会社において旭油化から買い取って、旭油化の操業の可能性をなくし、被告会社においてこの土地を活用できるようにするしかないとの判断にたったのである。
そして具体的に旭油化に対して行政指導を繰り返していた岡山県からの旭油化への働きかけもなされて、買い取りに向けて被告会社も強力に旭油化と交渉したが、買収金額について合意ができず、いったんは本件土地の買収交渉は頓挫していた。
このように、被告会社は、既に造成して販売もしてきた小鳥の森団地の隣地で旭油化は操業し、住民からその操業に伴う悪臭などの苦情が寄せられ、被告会社において対処の方法等について調査・検討の結果、この問題の根本解決のためには旭油化の土地を取得して旭油化の操業を止める以外にないとの認識に立っていた。
3,上記の買収が頓挫した後も、旭油化の操業は全く改善されることはなかった。
第1項で記載したとおり、昭和48年には廃棄物処理法違反で書類送検されていたし、岡山市から悪臭と水質汚濁防止法に基づく施設改善勧告、命令などが繰り返しなされていたが改善の兆しはなく、被告会社としてもその根本解決に向けて本件土地買収の旭油化との交渉を続けてきていた。
こうした本件土地の汚染の実態、旭油化の遵法精神に欠け、汚染に対しても誠意をもって対応しない悪質な体質については被告会社は十分に認識があった。
そのような状況下において、昭和57年7月27日岡山簡易裁判所において、被告会社と旭油化との間で、本件土地買収の和解が成立した。
この和解は、当事者間で実質的に合意に達し、債務名義をとるためだけのために和解調書とした即決和解の手続きによってなされている。
こうして、被告会社は、悪臭問題の根本的解決の方法として、本件土地を旭油化から取得することを選択して実現した。
被告会社が本件土地を取得した目的は、この旭油化によって汚染されている土地を住宅地として造成し、販売する目的であった。
4,上記和解の内容の概略は
ア、旭油化は昭和57年10月31日限り操業を停止し、同年12月31日までに本件土地上の全ての建物及び地下工作物を撤去し、本件土地上のコンクリート、廃白土及びアスファルト、土地上の油脂付着物を除去して明け渡す。
イ、被告会社は、旭油化に対して建物除去費用、移転補償などとして6690万円を支払う。
ウ、被告会社は、旭油化の工場跡地を一坪あたり6万円、その地上建物を400万円で購入する。
という内容であったが、もともと上記明け渡し期限までに旭油化が建物、設備や廃棄物、油脂付着物などを撤去して明け渡すことは予定されてなく、被告会社は6690万円のイ記載の金額を旭油化に支払っただけで、土地建物の売買代金相当額と撤去されなかった場合の損害賠償額との相殺をして、本件土地を取得したのである。
まさに、汚染の実態については、少なくとも自らア記載の撤去、明け渡し作業をしなければならない当事者として本件の汚染の実態について正確に知っていたし、少なくとも直ちに容易に知りうべき立場にあったのである。
被告は、答弁書において「土壌汚染については知る由もなかった」と明らかに上記事実経過の中からは考えられない不誠実な答弁をしている。
第3 現在、明らかになっている汚染の実態と原因
1,平成16年7月に原告らが居住している小鳥が丘団地の上水道の鉛管給水管をポリエチレン管に取り替えたいとの連絡が岡山市から原告ら住民にあり、7月29日に取り替え工事が開始された。
取り替え工事のため給水管を掘り起こし始めたところ、ただちにそこには油分を多量に含んだ悪臭を放つ黒い汚泥状のなかに水道管が埋められている状況が確認された。そして化学反応の安定性が高いと言われる鉛管の給水管の一部が腐蝕して穴があいている箇所も発見された。
このことが大きく報道されて、被告会社の対応がどのようになるのか注目された。その後の岡山市の調査によればこの時の地下水と土壌から硫酸イオンが検出された。
それまでも、悪臭が漂うといわれていた団地のその原因が土壌汚染が原因であることが白日の下に晒されることになったときである。
2,株式会社ニックテクノリサーチが平成19年4月に実施した『調査結果報告書(土壌汚染状況調査業務)』から少なくとも以下のことが明らかにされている。
①表層土壌ガス調査の結果,全ての調査位置においてベンゼンが検出され,土壌中からベンゼンが揮発している。
②土壌調査の結果,ベンゼン,シアン化合物,鉛,ヒ素などが土壌溶出基準を超えており,土壌がこれらの有害物質で汚染されている。
③土壌調査の結果,土壌含有量基準を満足しているが,鉛,ヒ素,ふっ素,ほう素などの有害物質が検出されている。
④したがって,小鳥が丘団地の土壌はベンゼン,シアン化合物,鉛,ヒ素などの有害物質で汚染されていると言える。
3 乙第5~18号証について
①岡山市役所環境規制課実施の『地下水・土壌分析結果』2004年7月によれば,岩野宅付近の地下水からヒ素が環境基準の15倍,ベンゼンが31倍検出され,土壌からヒ素,ふっ素,ほう素が環境基準以下ながら検出された。
②株式会社三友土質エンジニアリングの『南古都概況調査分析結果』2004年9月によれば,3箇所のボーリング調査(深さ1~5m)でヒ素が土壌溶出基準の1.7~3.2倍,ベンゼンが0.5~26倍,トリクロロエチレンが約27倍,シス-1,2-ジクロロエチレンが約6倍検出された。また,油分が1.3~1.9重量%検出され,油で汚染されている。
③同『南古都表層土壌調査分析結果について』2004年10月(乙第10号証)によれば,ベンゼンが34箇所中8箇所で土壌溶出基準を超え,最高11倍検出された。トリクロロエチレンは1箇所,シス-1,2-ジクロロエチレンは2箇所,ヒ素は5箇所が基準を超え,最高約3倍程度だった。
④財団法人岡山県環境保全事業団の『調査結果報告書(南古都団地内ガス調査業務)』2004年12月(乙第14号証)によれば,表層土壌ガス調査ですべての地点でベンゼンが検知されたほか,特定の地点でジクロロメタン,シス-1,2-ジクロロエチレン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,などが検出され,土壌からベンゼンなどの揮発性物質(VOC)が揮発している。硫化水素に加えてメタンがすべての地点で比較的高濃度(3.2~68%)で検出されたことから,地層内では有機物の嫌気制分解が相当程度進行しており,硫化水素の毒性や,メタンが引火・爆発する危険性がある。環境大気調査では,大気環境基準以下であるが,ベンゼン,ジクロロメタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンなどの揮発性物質が検出されており,環境大気が汚染されている。
⑤ 応用地質㈱の『電気探査結果』2004年12月によれば,全体に低比抵抗であり,1%以上の油分によるとしている。とくに,タンク跡は油の漏洩を示している。タンクの底を抜いて地中に直接浸透させて処理していたことを裏付ける結果である。
⑥ 財団法人岡山県環境保全事業団の『調査結果報告書(南古都団地内土壌化学性状調査業務)』2005年3月によれば,ヘキサン抽出物質量(油分)が0.1~10%検出され,含水率や溶解性塩類濃度が高いことが確認されている。つまり,油分,水分,塩分などが多く含まれる汚染土壌の団塊が確認された。
⑦旭油化は,廃油の処理を貯蔵タンクから直接,工場敷地に投入していた事実があったと原告は主張しているが,電気探査の結果からもタンク跡は油の漏洩があること,タンク跡にタテ型の低比抵抗ゾーンは上に尖った形状を呈するものがあるなどそのことが推認される結果となっている。
4,甲15号証、乙21号証
平成20年5月30日に行われた現地での裁判所による検証の様子を記録したものである。本件団地のどこを掘っても,表層土が黒くなっていて,深く掘るに従ってその汚染度が激しくなって,異臭が漂うことが確認された。
汚染は,本件団地全体に広がっていることが明らかとなっている。
5,被告調査による判断の問題点
①南古都Ⅱ環境対策委員会の『表層土壌調査(10/4~6)に対する意見書』は,「地域の一部の表層土壌から検出された物質は,以前敷地内に立地していた旭油化の機械洗浄の溶剤である可能性が高い。」とするが,機械洗浄の溶剤とする根拠はない。
また,「一部の検体に基準値を超えるものがあるが,非常に高濃度ということではないこと,かつ34検体中8点と全体に拡散していないこと,土中にあること,周辺の地下水の汚染がないこと等を勘案すれば,日常生活上今すぐ重大な問題になるとは考えにくい。」とするが,「基準値を超える汚染土壌が約4分の1に存在すること,団地内の地下水汚染が存在すること,周辺の地下水汚染は充分調査されていないこと,ベンゼン,トリクロロエチレンなどの揮発性物質は,日常的に揮発し,人体に発ガンなどの悪影響があること」から,将来,健康影響が出る可能性は否定できない。
②南古都Ⅱ環境対策委員会の『2004年11月2日付の小鳥が丘環境対策委員会に対する回答書』は,「これらの基準値は,動物実験や工場での作業労働者が化学物質に暴露されて健康影響が出る値に安全率(通常数十倍や数千倍の単位)値を掛けて策定されているので,基準値を超えたからといってすぐに健康影響(急性中毒症状や発ガン)が出るものでない。…住宅の下にある土壌から健康影響が出る可能性は低いと考えられる」とするが,ベンゼンなどの発ガン物質の環境基準値は,10万人に一人が発ガンする濃度として設定されており,基準の10倍の濃度なら1万人に一人が発ガンすること,そもそも環境基準は急性中毒でなく慢性中毒を起こすレベルとして設定されていること,汚染土壌は住宅の下だけでなく,住宅周辺の庭などに存在し,土ぼこりとして人体に摂取されることなどから,環境基準を超える土壌に接すると長期的に健康に悪影響を与えると考えられる。
悪臭のする庭で子供たちが土いじりなどして遊ぶことによる人体への影響は,極めて危険な状態である。
③南古都Ⅱ環境対策委員会の2004年12月27日付け『意見書』は,「汚染源は,汚染原因者である旭油化工業株式会社が設置した(タンク等の)施設から漏洩した汚染物質や,同社が表土を開削して廃棄した汚染物質である可能性が高い。これらの汚染物質が表層土から浸透し,地中に拡散したものと推測される」とし,乙第9号証における「機械洗浄の溶剤原因説」を自ら否定する結果となっている。
④南古都Ⅱ環境対策委員会の2005年3月28日付『意見書』は,「現状の生活環境においては異臭による不快感はあるものの,健康への影響が直ちに懸念されるものではない」とするが,「汚染土壌から日常的に揮発するベンゼン,トリクロロエチレンなどの発ガン物質,急性毒性のある硫化水素が発生,引火性や爆発の危険性のあるメタンの高濃度発生」などを考慮すると,異臭による不快感だけでなく,長期的な健康への悪影響が懸念される。
6,本件宅地の激しい土壌汚染の原因は、旭油化の傍若無人な法を無視した違法 操業の結果であることと、その汚染を完全に除去しないで宅地造成をして住宅地として販売したことに起因することは明らかである。