2010年1月19日(火)16時00分から岡山地方裁判所353号ラウンドテーブル法廷で住民訴訟第一次(3世帯)第15回口頭弁論準備手続きが行われました。
裁判前日(1月18日)に、被告(両備)から提出された準備書面4(予見可能性の主張)に添付された被告側証人(両備社員)3名の陳述書(乙第24号証・25号証・27号証)、を掲載します。
両備社員の陳述書(乙第24号証)です。
陳述書
平成22年1月18日
住所 岡山市兼基×××―×
氏名 ○ ○ ○ ○ 印
第1 身上・経歴
1 私は、本件訴訟の被告である両備ホールディングス株式会社の従業員で、現在は仲介事業部次長をしているものです。
2 私は、本件不動産を被告(当時は両備バス株式会社。以下「会社」と言います)が即決和解で取得した当時、その件についての会社側の担当をしており(当時は平の従業員でした)、またその後の悪臭対策工をどうするかといった問題についても担当しておりましたので、当時のことについてお話しいたします。
第2 本件土地取得の経緯
1 当時会社は、本件不動産の北側にある分譲地(小鳥の森団地)の分譲を行っていたのですが、分譲地を購入されたお客様から、南の方から悪臭がするので、何とかしてほしいという申し入れが、分譲業者である会社や、行政の方にたびたび寄せられていたそうです。ただ、悪臭についての問題は昭和50年頃からあったのですが、小鳥の森団地は順調に分譲され、昭和56年12月までにはその約84%にあたる219区画が販売済みでした。
2 すぐに原因は、南にある旭油化工業株式会社(以下「旭油化」と言います)の運営する工場からの悪臭が原因であると判明しました。よその会社のことですから会社としても対応に苦慮していたようですが、最終的には旭油化自体に操業を止めてもらうしかないとの結論にいたり、本件不動産自体を買い取ることになりました。
ですから本件不動産は、会社が宅地造成なり転売なりしてもうけようと買ったわけではなく、あくまでお客様、もっと広く言えば地方の方に奉仕させていただくつもりで買わせていただいたのです。
(第2 本件土地取得の経緯)
3 しかし旭油化との間で買収金額はなかなか合意に至らず、最終的には即決和解という手続を通すことになりました。その際に私が、代理人である杉本弁護士との間に立つ会社側の窓口として任命されたのです。とはいえ、細かい条件や条項案については杉本弁護士に相手方との間で詰めていただいています。
4 こちらが旭油化に対してお願いしたのは、悪臭を除去すると言うことです。当時旭油化の工場が、高い煙突の先から黒い煙を吐き出し、それが悪臭となっていることは公知の事実でした。
私も会社も、旭油化は油かすを原料として石けん類を作っている会社であり、臭いの元があるとすれば、製造過程か、原料・廃棄物くらいしかないと思っていましたが、具体的にどの過程かは知りませんでした。とにかく操業を止めて、悪臭の元となるものをきちんと廃棄してほしいということを旭油化に申し入れたのです。
即決和解の条項には、6項に「相手方ら(旭油化)は、申立人(会社)に対して、本件と地上のすべての建物及び地下工作物を収去し、本件土地上のコンクリート、廃白土及び、アスファルト部分を除去し、本件土地上の油脂付着物を除去して本件土地を昭和57年12月31日までに引き渡す。」という条項がありますが、当方は工場内で具体的にどのような作業が行われていたかすら知らなかったわけですから、「廃白土」という言葉自体聞いたことはありませんでした。
ですからこの条項は、おそらく相手方から「これこれのものを取り除きます」という話があって決まったものだと思います。なお、南古都?環境対策検討委員会の調査では、今回発見されたトリクロロエチレンなどの化学物質は、機械洗浄の溶剤として用いられた可能性が高いとのことですが、当時旭油化が、機械洗浄の溶剤に化学物質を使っているとか、ましてや機械洗浄の溶剤を適切に処理することなく垂れ流しているなどと言う話は全く出たことはありませんし、そのような噂さえありませんでしたから、私自身も全く聞いたことはありませんでした。
第3 本件不動産取得後の経緯
1 結局即決和解は成立し、その中で、
?会社は旭油化に、不動産の売買代金と建物等撤去費用として2億3146万円を支払うこととする。
?旭油化は、本件土地上のすべての建物及び地下工作物を収去し、本件土地上のコンクリート、廃白土及び、アスファルト部分を除去し、本件土地上の油脂付着物を除去して本件土地を昭和57年12月31日までに引き渡す、
?会社は旭油化に、?のうち8000万円を昭和57年7月31日までに、残金を?の終了後支払う、ということが決まりました。ちなみに?の「コンクリート」というのは地面を覆っているようなものではなく、「土地上にあるコンクリート製の構造物」を指すと聞いています。
2 それで一部金を支払い、残金を支払う前のタイミングで、一度相手がきちんと即決和解通りの工事をしているか確かめる為に現地に行きました。
私が現地に行ったのはこの時が初めてです。残金を支払う前のタイミングだったことは確かなのですが、具体的にどの程度まで工事が進んだ段階だったかは覚えていません。土地上に旭油化の工場がまだあったのか、それとも解体されていたのかも、今となっては覚えていません。ただ、甲第10号証の1,2に写っている青い建物については、見た記憶はありません。
3 私が現地に着いた途端、タンパク質が腐ったような腐臭が漂ってきました。私は、この臭いはかなり強く、これをどうにかしないと、どうにもこの土地を利用することはできないと思いました。
4 ただ、先ほど当時の工場の様子を撮影した写真(甲第10号証)や、現在の土地を掘り返した様子を撮影した写真(甲第31号証)を見せていただいたのですが、この様な黒っぽい土とか、黒い水が見えていたかと言われると、そのようなものを見たという記憶はありません。
もちろん私は現地をくまなく巡ったわけではありませんから、単に気がつかなかっただけという可能性もあります。しかし地面は、概ね普通の色をした土と、白っぽい土に油のような黄色っぽいものが付着したような部分とが入り交じった状態でした。
黄色っぽい部分も、別に油でべたべたしているような感じではなく、なんとなく色が違うな、という程度のものでした。どの場所に集中していたとか、何かが置かれていた場所が特に黄色くなっていたとかについても記憶がありません。
5 それで私は旭油化に対し、杉本弁護士を通じて、「このままでは到底残金を支払う事は出来ない。きちんとこの臭いをなんとかしてくれなければ、和解のときと話が違っていることになる」ということを伝えてもらいました。
また杉本弁護士も現地を見た方がいいといわれましたので、後日一緒に現地に行きました。
6 当時は公害であるとか環境基準であるとかについての認識は全く一般的ではなく、私も含め会社は、とにかく苦情が出されていた臭いをなんとかしないといけないと考えていたわけです。
そして、その臭いの原因というのは、製造過程から出てくる臭いが適切に処理されていない、あるいは製造過程で使用・排出された物質(排煙や廃白土)が悪臭を発しているものと認識していましたから、工場の稼働を停止させ、臭いの発生源になっている物質を除けば、全く問題ないものと考えていたのです。
第4 本件不動産における臭気対策工
1 しかし結局、旭油化の工事は不十分なままに終わりました。
これについてはまた別の民事訴訟が起こされたのですが、結局会社が別の会社に、土地上にあるコンクリート製の構造物等の除去や臭気を減らすための工事をお願いするということで決着が付きました。
株式会社東山工務店(以下「東山工務店」と言います)にドラム缶や油分の多い土壌の搬出作業を、株式会社ナップ(以下「ナップ」と言います)に消臭工事を依頼しているはずです(これらの会社も既に倒産していますし、当時の資料も残っていませんので、あくまで記憶です)。
2 東山工務店には、ドラム缶や油分の多い土壌を搬出し、廃棄物として処理してもらいました。この時に会社がお願いしたのは、汚れがひどい土を処分して、分譲地として支障ないようにしてほしいという事で、具体的にどこそこの場所にある土を何?運び出してくれ、等の具体的な指示をしたことはありませんし、また全体の表層から何mの土を削り取ってくれ、と土地全体の処理をお願いしたこともありません。
もちろん取り残しなどはあるでしょうから、本件土地にあった白色や黄色っぽい油が完全に除去されたとは考えていません。しかし残された油分自体が健康被害など生活に支障がある問題を引き起こすとは私も会社も考えていませんでしたし、建物を建築してここを宅地として利用するに当たっても何ら問題はないと思っていました。
3 その後、ナップが、本件土地に粉末状の石灰(生石灰だったか消石灰だったかは覚えていません)をまいて、重機で撹拌していました。その後土地の表面はキレイにならしてくれていたような気がしますが、他所から真砂土を搬入して覆土したのかどうかについては知りません。
ちなみに、この石灰をまいて消臭するという方法については、おそらくナップから紹介されたものだと思います。少なくとも会社から出た工事方法ではありません。
4 工事後に私も現場を見に行きましたが、臭い自体が完全に消去されたわけではなく、まだ幾分残っていました。それは臭いが気になって困るというようなものではありませんでしたが、住宅地として販売した場合に、特に臭いに敏感な人であれば、それを理由に購入を断られることも可能性としては考慮していました。
ただ、既に臭いの原因は取り除かれているわけですから、これから臭いは空気中に放散されて薄れていくと考えていました。
5 そこで、念のため臭いが薄れるまでさらに3年程度本件土地はそのままにして置いていましたが、もちろんその間、臭いが酷くなるなどの変化はありませんでした。
3年程度経って臭いが薄れたので、この土地を住宅地として販売しても問題ないと判断して、開発許可を取ることになったのです。
6 その後、開発許可がおり、本件土地は宅地として造成されたようですが、開発許可手続以降のことについて私は担当していないので分かりません。
その後、団地を購入された住民の方から臭い等について苦情が出たという話は、平成16年の水道工事がなされるまで聞いたことがありません。
第5 最後に
1 本件土地は決して安い買い物ではありませんでしたが、悪臭を垂れ流していた旭油化の操業を停止させて悪臭を解消したことで周囲の住民からも感謝され、企業として地域のために奉仕できたものとして自負しています。
2 そしてその後20年以上、なんの問題もなく生活できていたわけです。悪臭がしたとも、健康被害があったとも、土壌汚染が発見されたとも聞いたことはありません。
これらの問題を住民の方が言い出したのは、すべて平成16年以降のことです。
3 私も会社も、当時できる最善のことをしています。今になって「土の中に大量に油が捨てられていた」とか、「トリクロロエチレンなどの化学物質で汚染されていた」などの問題が出てきているようですが、上で述べたとおり、臭気対策工事を行った当時には、そのようなことを伺わせる事情は何もありませんでした。
ですから本件訴訟には納得がいかない、というのが正直な気持ちです。
以上
http://blogs.yahoo.co.jp/kotorigaoka/50171373.html
上記内容の適切性を保障するのもではありません。各自の判断願います。