ATCセミナー〜平成20年関西エコオフィス大賞受賞者発表会〜

大阪水・土壌研究会員

2009年11月15日 09:49

おおさかATCグリーンエコプラザ
循環型社会形成推進セミナー 
〜平成20年関西エコオフィス大賞受賞者発表会〜

 関西広域機構(KU)では、身近なところからの省エネルギー等の取組みを通じて、地球温暖化対策を実施する「関西エコオフィス運動」を進めており、この運動への参加オフィスや各種の環境マネジメントシステムの認証・登録を受けているオフィ
スの中から、顕著な効果を挙げているオフィスを、「関西エコオフィス大賞」として毎年表彰しています。 平成20年度は、これらの中から特に先導的で優れた取り組みを行っているオフィスを、「平成20年度関西エコオフィス大賞・奨励賞」として、6事業所を選定しました。
 今回の発表会では、まず関西広域機構(KU)から「関西エコオフィス大賞」の主旨、目的、経緯等をご説明頂き、その後に大賞受賞の2事業所と奨励賞受賞の2事業所にそれぞれの優れた先導的な取り組み内容を紹介していただきます。今回のセミナーで、これらの環境行動内容を広く参加者に理解していただくことにより、関西における先導的な優れた環境行動の普及・推進を図っていく。

開催日時
 平成21年12月11日(金)13:30〜17:00

内容
 主旨説明「関西エコオフィス大賞について」
 講 師:関西広域機構環境・防災部長早金孝氏

 発表1 「京都ビール工場の環境活動『エコ・ブルワリーの実現』」(大賞*1)
  講 師:サントリー酒類株式会社 京都ビール工場 技師長 高田純一氏

 発表2 「山金工業株式会社森田工場のCO2・VOC排出量削減活動」(大賞*2)
  講 師:山金工業株式会社 森田工場 製造部 ISO委員会事務局 担当課長 山腰喜勇氏

 発表3 「エプソンイメージングデバイス株式会社の環境施策について」(奨励賞*1)
  講師:エプソンイメージングデバイス株式会社 経営管理部部長 上條光一 氏

 発表4 「くらこんの継続した環境活動」(奨励賞*2)
  講師:株式会社くらこん枚方工場 常務取締役製造本部長 松井隆史 氏
    *1:大企業部門*2:中小企業・団体部門

主催
 おおさかATCグリーンエコプラザ実行委員会(大阪市、ATC、日本経済新聞社)・ビジネス交流会

協力
 関西広域機構(KU)

受講料
 無料

会場
 アジア太平洋トレードセンター(ATC)ITM棟、おおさかATCグリーンエコプラザ゙内「ビオトーププラザ」

定員
 100名(先着順※受付確認はセミナー開催約10 日前までにFAX またはE-mail でお送りします。)

お申し込み
 おおさかATCグリーンエコプラザ事務局まで
  〈事務局〉〒559-0034 大阪市住之江区南港北2丁目1-10 ATCビルITM棟11F
   おおさかATCグリーンエコプラザ関西エコオフィス大賞発表会(12月11日)係TEL:06-6615-5688
    お申し込みはE−mailで、もしくは下記にご記入後FAXで、お送りください
     E−mail:office@ecoplaza.gr.jp FAX送付先06−6615−5890

http://www.ecoplaza.gr.jp/img/pdf/seminar091211.pdf



参考セミナーレポート
環境経営の最新動向 〜リスクをチャンスに変える知と情〜
■講師

日本環境経営大賞表彰委員会 審査委員 東北大学大学院
生命科学研究科 生態適応グローバルCOE 特任教授 竹本徳子氏

【第1章】日本環境経営大賞08年の審査結果
(1)日本環境経営大賞の概要
 日本環境経営大賞は、「持続可能な社会の構築」に向けて、あらゆる組織の環境文化を醸成し環境経営を促進することを目的として設けられたもので、今年で8年目を迎えました。
 名前からすると政府が主催しているように思われるかも知れませんが、これは三重県が主催している表彰制度で、事業規模の大小・業種・業態にかかわらず、全国から誰でも応募でき、環境経営の"さきがけ"となる活動や優れた成果をあげた組織を表彰しています。自治体として、行政としてこうした事業に取り組んでこられていて、いろいろご苦労もおありかと思いますが、この制度があることで三重県の企業さんが大変グリーンになっている。これはまず三重県さんが表彰されるべきじゃないかと思うほどです。


(2)各部門の評価基準
 これまでに1094件の応募があり、109の組織が表彰されました。08年の日本環境経営大賞は「環境経営部門」「環境価値創造部門」「CO2削減部門」の3つの部門に分かれています。
 まず、持続可能性、つまり環境・経済・社会の3側面で総合的にバランスがとれているかどうか、本当に経営トップが環境にコミットメントしているか、実践体制が整備されているか、そしてその取り組みがきっちり成果としてでているか、ということを見ていくのが「環境経営部門」です。「環境価値創造部門」は、これまでの「環境プロジェクト賞」と「環境連携賞」をひとつにまとめたもので、ライフスタイルをどうチェンジしていくのか、楽しくファッショナブルで素敵な価値創造でエコを広めていくのにどれだけ貢献しているか、を見ます。目的がはっきりしていること、新規性・創造性はあるか、連携の実効性はどうか、実績や効果はどうか、などが評価基準となっています。「CO2削減部門」は新設です。
 本気で削減目標をたてているか、経営トップがコミットメントしているか、実際に削減実績がでているか、費用対効果はどうなのか、サプライチェーンも含めて皆さんに伝える姿勢があるか、取り組みの先進性・持続性・発展性も評価の対象です。

(3)応募の推移
 応募件数の推移ですが、第1回は149件の応募があり、第4回のときに賞を統合しまして214件になりました。第5回180件、第6回145件と減少してきましたので、ここでCO2部門を増やして160件の応募をいただきました。
 環境価値創造に86件、環境経営に38件、CO2削減に36件という内訳です。地域別では事業者数の多い関東が一番なのは当然ですが、東海・近畿からも多いのは、やはり三重県さんから各企業に応募を呼び掛けることで環境度をあげていく、そういう取り組みが効果をもたらしているのだと思います。組織別では中小企業からの応募が増加しました。

(4)第7回「日本環境経営大賞」受賞者
 【環境経営パール大賞】
  ・トヨタ自動車株式会社 堤工場(愛知県)
    持続性あるバランスのとれた経営が評価されました。
  ・速水林業(三重県)
   日本で最初に国際森林認証(FSC)を取得された企業です。
 【環境価値創造パール大賞】
  ・おひさま進歩エネルギー株式会社(長野県)
   市民ファンドの会社で、新しいお金の流れを作っていく点が評価されました。
 【CO2削減パール大賞】
  ・レンゴー株式会社(大阪府)
   段ボールメーカー。中期で削減目標をたてて本気で取り組んでおられます。

 受賞された企業は、いずれも本気でトップがコミットメントされ、本気で未来の持続可能な経営を、あるいは社会を考えて取り組んでおられるところだったと思います。

【第2章】環境経営の最新動向

(1)環境経営に関わるトレンドの変化
●環境経営部門
 長いあいだ省エネとか省資源とかいわゆる3R(リユース、リデュース、リサイクル)のようなテーマが多かったと思います。ISOに取り組んだところでもよく継続的改善って何するの、という話を聞きますが、次に何をしようかなんて考えなくても問題は次から次へとやってくる。
CO2の排出量削減だとか、さらに創エネまで踏み込んでやらなくてはならない。また生物多様性の保全という取り組みも始まっていて、問題は山積みという感じです。一方で病院や学校でのEMS(環境マネジメントシステム)導入も増えてきています。
●環境プロジェクト
 
●環境連携
 ・・・野呂三重県知事がいわれた「新しい時代の公」(公共領域を担う多様な主体間の関係づくり)の理念・・・・

(2)経営環境の劇的変化
  ・・・グリーンニューディールがいまブームのようになっています。環境によって経済を立て直す、という考え方です。その流れにどのくらい乗っていけるかが試されているわけです。

・・・脱化石燃料化を図らないと、経済に少しブレーキをかけてでも削減目標を達成しないと、子供たちになにも残らなくなってしまいます。「地球温暖化対策を強力に推進する」というマニフェストを発表した・・・

【第3章】低炭素社会への移行

(1)経済と環境について
経済とは、「物資の生産・流通・交換・分配とその消費・蓄積の全過程、およびその中で営まれる社会的諸関係の総体」。
また、金儲けをすることではなく「世を治め、民の生活を安定させること。"経世済民"」から・・
つまり経済とは、本来民を救うためのものだったのです。

一方、環境とは何か。何かを「取り囲んでいる周りの世界」。「人間や生物の周囲にあって、意識や行動の面でそれらと何らかの相互作用を及ぼし合うもの」つまりつながりです。あるいは関係性のことだといえるでしょう。

(2)トリプルボトムライン
 トリプルボトムラインといいますのは、企業活動を経済面、社会面及び環境面という3つの側面から評価しようとする考え方で、この3つがバランスよく好循環をしていることが今世紀の企業に求められるというものです。3つをちゃんと報告することがCSR(企業の社会的責任)あるいはサステナビリティ・レポートと呼ばれるようになって、きちんと説明責任を果たしていることが企業価値を高めるといわれています。

 私はそうではなくて、環境というのはイコール生態系のこと、生態系とは人間を含むすべてつまり地球です。地球の上で経済活動を行い、社会活動をやっている。この土台がなくなったら何の意味があるのでしょう。環境の上に経済と社会がありその真中にソーシャルビジネスが今生まれつつあるのではないでしょうか。
 「おひさまファンド」などがその例だと思います。定年退職されてお金も力もある方が、ソーシャルビジネスをされれば、地域は良くなるのではないですか。そのことによって行政の負担も軽くすることができる、そういう制度ができるといいなと思っています。

(3)「持続可能性」サステナビリティとは
 この定義としては、まずブルントラント委員会(環境と開発に関する世界委員会'87)の「Our Common Future」という本の中に書かれているもので、「持続可能な開発とは将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすこと」というのがあります。
 二つ目は経済学者・ハーマン・デイリーがいっている3原則で、「資源利用と廃棄物の排出において、持続可能な利用速度が(再生・代用・無害化できる)速度をこえてはならない」 
たとえばCO2は森林が吸収していますが、この範囲をこえてCO2の排出をしているので、いま温暖化がおこっている、だからブレーキを踏みましょうというわけです。
 もうひとつ科学者の視点としては、スウェーデンの小児科医・カール・ヘンリク=ロベール博士がいったナチュラル・ステップという国際NGOの4つのシステム条件があります。「地殻からの物質の濃度・化学物質・物理的劣化を増やさない。基本的ニーズを妨げない」というもので、分解できないものはつくらないとか、森林を切りすぎない、魚を獲りすぎないということと、どこにいても基本的ニーズは妨げられないということです。

 山奥にいたらGDPがあがっても誰も幸せになれない。地球にダメージを与えることなく山奥の人の基本的ニーズを満たすにはどうすればいいかを考えなければなりません。いまや都市人口、つまり消費人口が50%をこえました。生産が追いつかなくなったらどうなるのか。それで持続可能な社会といえるのでしょうか。

(4)20世紀型経済成長論の破綻
 何故そんなことが起こったのか。大量生産・大量消費・大量廃棄、つまり消費が増えて生産が増えれば、雇用が増えて貧困はなくなるという夢物語がありました。実際は人口が増え、ゴミが増え、そして格差も増大したわけです。しかもそれだけではなく、生物の多様性も喪失してしまった。生態系サービスも劣化してしまった。これは何かというと、乱獲や汚染、開発といった人間の活動によって自然の恵みが得られなくなっている、ということなのです。

 気候変動や自然災害は人間が原因であると考えるかどうか。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)はかなりの程度まで人間が原因であると述べています。では生態系の劣化は人間生活にどう影響するのでしょう。生態系サービスには、食糧や水、木材、燃料などを供給する「物質供給サービス」と、気候の調節や洪水の調節、病気や害虫の制御、浄水作用といった「調節的サービス」、そして美的文化、精神文化、教育といった「文化的サービス」の3つがあげられます。物質供給サービスも調節的サービスも、人間生活の安全性やベターライフ、健康などに必要なものを与えてくれます。しかしながらこうした生態系サービスの多くが低下してきていると国連の「ミレニアム生態系評価」は報告しています。
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【第4章】リスクをチャンスに変える知と情

(1)生態系サービスの傾向から生じるリスクとチャンス
 こうした状況を受けてリスクとチャンスをどう捉えるか。たとえば工場を持っている企業では、リスクとしては原材料が減ってくる、生産性の低下が起きる、生産量が減る、ひどい場合は業務の中断も起きる、といったことになります。 ・・・・といったチャンスが生まれるでしょう。

(2)本業のリスクをチャンスに変える知と情
 皆さんの本業に対するリスクは何なのか、これをまずしっかり知ることが大事です。生物多様性もそうですし、環境影響評価をきっちりやってください。・・・・・実は本大賞の3年前の環境プロジェクト賞受賞企業です。

【第5章】生物多様性保全について

(1)生物多様性ガイドラインと宣言
 日本では05年に鹿島建設さんが、「鹿島生態系保全行動指針」を出したのを皮切りに、企業の宣言が相次ぎ、生物多様性保全のさまざまな取り組みがなされてきました。09年3月には日本経団連が宣言。09年8月には環境省の「生物多様性民間参画ガイドライン」が作成されました。
 キーは、生物多様性の保全ということと、生物多様性の構成要素の持続可能な利用ということです。取り組みの方向としては、事業活動とのかかわりを把握するよう努めるということと、生物多様性に及ぼす影響の低減を図り、そのための措置をとる、そして持続可能な利用に努めるということです。またそのための推進体制を整備するよう努める、となっています。

(2)環境激変への生態適応に向けた教育研究
 ・・・一緒に実践活動を行っています。

【まとめ】
環境経営に取り組む際の課題
・まずトップが持続可能な社会を目指すという覚悟をする。トップの覚悟なくしては何も始りません。その時に「知」と「情」のバランスをうまくとることが大切でしょう。

・自分たちの活動・製品・サービスを化学的にきっちり評価する。そしてこういう不確実な時代の複雑系に生きているわけですから、柔軟に現実に即して真摯に見直す姿勢が大事です。

・温暖化対策と生物多様性保全対策は別々のものではありません。3Rにしても限られた資源を持続可能に使っていくか、生態系サービスをどう護るのかということと同じことですので、対策もこれらを融合化していくことが有効だと思います。

・最後に自分たちだけでなく、周りの地域・サプライヤー・行政を巻き込みながら進めることです。巻き込むことができれば自信が得られます。プライドが得られます。それは従業員の満足につながり、そこで企業価値がつくられていくのではないでしょうか。

http://www.ecoplaza.gr.jp/event/seminar_report.html

■鹿島生物多様性行動指針■
 鹿島は、「鹿島生態系保全行動指針」を2005年8月に定め、2009年7月には「鹿島生物多様性行動指針」として改訂を行い、それに基づいたさまざまな活動を進めています。

■基本理念
 鹿島は、「100年をつくる会社」として、将来にわたり豊かな環境を維持し、良質な社会基盤を整備していくことを使命としている。
 地球規模での環境への影響が顕在化するなか、生物多様性の劣化は地球温暖化と並ぶ重要な課題であり、その解決には企業として果たすべき役割も大きい。
 鹿島は、生物多様性に関し建設事業を通じてその保全と持続可能な利用に取り組み、人と自然が共生する社会の実現に貢献していく。

■行動指針
 全社員の参加
 鹿島は、自然の恵みに対する社員の意識を高め、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する知識を普及展開し、全社的に取組みを推進する。

■建設事業への展開
 鹿島は、生物多様性に関する情報・技術を活用した提案、工事における環境配慮を推進することで、生物多様性の保全と持続可能な利用を目指す。

■調達における配慮
 鹿島は、調達において生物多様性への影響を考慮し、その回避・低減を図る。

■研究開発の推進
 鹿島は、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する情報や技術的知見を集積し、関連する研究・技術開発を推進する。

■社会的要請の尊重
 鹿島は、生物多様性に関する法令等の遵守にとどまらず、関連施策や社会的要請を把握し、その知見を事業活動に反映させるよう努める。

■コミュニケーションの促進
 鹿島は、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する活動、研究内容を開示し、顧客、地域社会、行政、研究機関、企業、NGO等との連携・対話を図る。
http://www.kajima.co.jp/csr/environment/problem4/index-j.html#seitaikei



との循環型社会の構築と環境ビジネス、環境・CSR経営
■講師
おおさかATCグリーンエコプラザ顧問 同志社大学 経済学部教授
郡嶌 孝氏
はじめに
 ドイツの社会学者、ウルリッヒ・ベックは、今日の近代社会をリスク社会と呼んでいます。我々の社会は、現在、成功しているがゆえに新たな課題、リスクを生んでいます。今日は、私たちがこの新しい課題である環境危機に今後どう対応していくべきなのか、温暖化問題を含めてお話していきます。



21世紀の環境問題と各国の動き
 危機という漢字は、“危”険と“機”会が組み合わさっています。まさに環境危機とは、日本においてはリスクを伴いながら、一方ではビジネスチャンスになったりするのが特徴であるかもしれません。
21世紀の環境問題は、廃棄物および温暖化の問題がとりわけ大きくなってきました。そんな中、先進国の取組みは、温暖化よりも廃棄物問題への取組みの方が少し早かったようです。
 G8のサミットで初めて循環型社会について取り上げられたのは、2003年の、フランス、エビアンでのサミットです。エビアンでは循環型社会を実現する上での、先進国のマテリアルリサイクルについて話し合われました。その後、アメリカのシーアイランドでのサミットでは、小泉前総理の提唱により3Rイニシアチブが合意され、国際会議が行われるようになりました。
実はこれらの契機となったのは2002年のヨハネスブルグサミットです。1992年の地球サミットより10年が経過したこの年、持続可能な生産・開発を約束した「アジェンダ21」の進捗状況を確かめるとともに、次の「持続可能な生産・消費」に取り組む10年のフレームワークを策定することとなりました。
 
アジアとの循環型社会の構築
 昨年、エコプラザ前館長と共に、大阪市と上海の環境問題対話のために上海に行ったのですが、アジアで環境ビジネスを行うのは難しいことがわかりました。中国にとって日本は、再生資源の原料輸入国としてしか位置づけられていないようです。対話の中で、環境用語は、ほぼドイツ語に占められていたことからも、すでにドイツとの環境ビジネスが進んでいることは明らかです。ここに入り込むのは、なかなか容易ではないでしょう。
 では、当面、商売よりも日本の経験の中でどう環境と経済を両立するかということが重要となります。中国をはじめ、海外でも両立しなけれならないという意識はありますが、そのための技術や経験が不足しています。彼らが、技術・経験を身につけた後、開放的調整計画による協力関係が生まれると考えられます。しかしそのためには、まずトレーサビリティが最重要です。
現在、日本のマテリアルフローは、とりわけ静脈産業におけるフローの把握が非常に弱い状況にあります。例えばどのように資源が回収され、資源化され、どう使われているのか。消えた資源は廃棄されたのか、海外に輸出されたのか。廃棄自動車の例を挙げると、多くは海外に輸出されていることはわかっていますが、その後、部品として使われているのか、車のままなのか、海外で何が起こっているのか、トレーサビリティが全く把握できていません。家電についても同様です。
 我々は環境の問題を“見える化”するためには、まずは数値化し、その実態をとらえられるようにしなければなりません。そしてグローバル化の中で循環経済圏を作ることはまだまだ難しい状態にありますが、日本の経験は必ず中国に役立つはずであり、必ずそこにビジネスチャンスはあると考えられます。



エコイノベーションとソーシャルイノベーション
 また、エコイノベーションという面から言うと、今後は次第に製品を売ることから、機能やサービスを売るプロダクトサービスシステム(サービスサイジング)への変換が必要になってきます。
我々が3年前に地球環境戦略機関で研究を始めて以来、経済産業省でもサービスサイジング事業推進委員会が作られ、少しずつサービスサイジングの流れが生まれています。これを大きな流れにするべく、主要産業におけるサービスサイジングの促進を進めていかなければなりません。
 これからは、まさに大企業の中で、サービスサイジングを動脈産業として変えていかねばなりません。

 また環境ビジネスとしては、中間組織の支援をしながら、さらに市民社会における環境への取組みを進めていく必要があります。日本の強みを生かし、環境重視、人間重視の、技術革新・社会革新の実現こそが、経済産業省が描いている環境大国へのビジョンです。まさに我々はエコイノベーションと同時に、ソーシャルイノベーションも伴わなくてはいけません。
その中で、環境をどう価値化するか。皆が見えないCO2をどう見えるようにするかが非常に重要です。まずは環境問題を経済的な価値として見えるようにして、キャップをはめることが大事なのです。
 たとえば社内では、部署ごとに排出権取引、環境税などで規制すれば良いでしょう。企業の中における評価を、売上高や経済価値だけでなく、環境の価値も“見える化”して評価対象にすれば、皆も取り組むようになるかもしれません。経験こそ重要な資産となるでしょう。
 それぞれに何ができるか、環境と経済の両立の中で、今日お話された他の企業の皆さんのお話も参考にして取り組んでいただければ、これも、開放的調整政策のひとつといえるでしょう。どうもありがとうございました。
http://www.ecoplaza.gr.jp/event/eco_seminar_report/report/190801/index.html

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