豊洲専門家会議報告書(案)の内容に関する意見について

大阪水・土壌研究会員

2010年01月31日 17:50

報告書(案)の内容に関する意見について

No. 主なご意見・ご質問(要約) 専門家会議の考え方

1 調査

1
 東京ガスの調査・対策で可とした地点で基準値オーバーが出た原因について
言及が不十分である。

 東京ガス(株)による既往土壌汚染調査・対策は当時の環境確保条例および東京都土壌汚染対策
指針に基づき実施されております。しかし、専門家会議が行った追加調査結果でわかりますように、
新市場予定地内では表層土壌ガス調査で深部の土壌汚染や地下水汚染を把握することは難しく、
ベンゼンによる土壌汚染範囲が全て把握されていなかったと考えられます。
 シアン化合物等の重金属等については、30mメッシュでの深度3mまでのボーリング調査が主であり、深度3mで土壌汚染が
確認された地点についてのみ深度7mまでのボーリング調査が行われており、深度3m以浅の土壌・
地下水の調査しか行われていない箇所が多く、深度方向に土壌汚染範囲が把握されていない地点
(調査が不足していたところ)もありました。
 また、土壌汚染対策はこれらの調査で把握された処理基
準を10倍以上上回る汚染土壌のみを対象として行われており、10倍以下の範囲で処理基準を超過
していた汚染土壌は残存したままとなっていました。このような事実を報告書(案)の第3章に記述し
ております。

2
 いくら時間をかけてもいいから、専門家の方々が一致して安全だと言える状況
になるまで、さらに慎重に徹底的に調査を継続してほしい。

 報告書(案)9章で記述しましたように、生涯曝露による人の健康被害の防止に加え、食の安全・安
心という観点から揮発成分(ベンゼン、シアン化合物)が隙間や亀裂から建物内に侵入することによ
る生鮮食料品への影響が防止されるという要件を満たすと考えられる安全な対策のあり方を提言し
ています。

3
 はじめに移転ありきで専門家会議の調査が進んでいることに大きな不安がある。

 専門家会議は移転ありきで検討しておりません。築地市場の移転は、市場の設置者である東京都
が責任を持って対応すべき問題であると考えております。

4
 「対策に必要な調査として、以下の絞込調査を行う必要がある」とある。であれ
ば、絞込調査を実施してから対策を提言すべきである。

 専門家会議は、詳細調査結果を受け、対策のあり方を提言するところまでとしております。絞込調査
結果が出てきたとしても専門家会議の提言する対策内容が変わることは基本的にありません。

5
 地下の多くの部分の汚染調査を避けた「報告書」に科学的根拠が無い。

 報告書(案)の4.15.1に記述しておりますように、追加調査により、東京ガス(株)による既往土壌汚染
調査の結果をもとに土壌汚染対策を行うと高濃度の地下水汚染が見逃されたままとなってしまう可
能性があると考えられましたので、新市場予定地全体を対象に10mメッシュでの詳細調査を行いまし
た。詳細調査では、表層土壌調査に加えて、深部も含めて汚染状況をスクリーニングするため、帯
水層全体の平均的な地下水汚染状況を調査しました。

6
 広大な敷地にきめ細やかな調査がされ、都民の不安に対し真剣に取り組んで
いることが分かった。

 一生涯この土地に住んだとしても生涯曝露による人の健康被害は防止され、生鮮食料品を扱う市場
となった場合でも食の安全・安心が十分確保されることを目標に、土壌と地下水の汚染対策を提言
しています。

7
 大きな値が計測されている直上・直下で不検出のポイントがあり、このようなこと
が現実に存在するのかどうか。あるいは計測に問題点があるのではないか。

 計量証明事業者が公定法に基づき分析を行っています。また、精度管理により、分析結果の信頼性
の確保も行われていることから、計測に問題があるということはありません。

8
 地下に汚染物質や汚染地下水の「溜まり」があると、そこから汚染が拡大する。
汚染物質、汚染地下水の「溜まり」場所の調査をすべきではないか。

 生涯曝露による人の健康被害を防止するという観点から土壌汚染調査を行っており、不透水層であ
る有楽町層よりも上位の地層全体を対象に調査を行っております。上部から深部に土壌汚染がつな
がっている箇所については、対策実施時に底面管理等で汚染状況を確認していくことで対応が可能
であると考えており、汚染物質が土壌・地下水中に溜まっている場所があれば把握されると考えて
おります。なお、有楽町層については、透水性が土壌汚染対策法に規定する不透水層の基準の
1/26となっており、新市場予定地における層厚が約2〜20mあることから、遮水効果が高く、汚染の
可能性は低いと考えられます。

9
 東京ガスの元社員は、汚染原因は、土の上に直接おがくずを敷き、その上で
タールを練っていたと証言している。それが事実なのか調査したのか。汚染原
因はそれだけなのか。

 東京都が東京ガス(株)に照会したところ、同社が、当時の従業員に実施した調査では、ガス製造過
程で発生したタールスラッジを、地面の上で、直接、木屑と混ぜる作業をしたという話は聞いていな
いとの回答があった、とのことです。


10
 大量のベンゼン・シアンが検出された協力会地区について、当時の東京ガス
担当者、協力会の責任者に当時の状況説明をしてもらいたい。

 東京ガス(株)には、東京都から既に複数回、高濃度の汚染が検出された地点の当時の土地利用
の履歴等についてヒアリング調査を実施しており、その結果は専門家会議で報告されています。

11
 採水にあたってのパージング(孔内洗浄)の徹底度を見たり、地下水の賦存状
況の確認のためには、水位・水温・導電率のその場測定が不可欠だが、一般
公開時に現場をみた限りでは実施されていなかった。

 パージ作業は孔内に溜まった水を揚水により汲み出し、井戸内に周辺から集まってきた新鮮な地下
水を採水しております。井戸内滞水量の3〜5倍量を目安に揚水をしたことで新鮮な地下水と置換さ
れていると判断しています。

12
 時間間隔をおいた繰り返し測定による水質変化の吟味もなされていない。

 報告書(案)の6.2で地下水質のモニタリング結果を報告しています。第7回専門家会議において、極
端に濃度が変動しているものはなく、濃度がある幅に入っているという感じであることを確認しており
ます。

13
 有楽町層の上位の地層は、埋め立てられた人工地層なので、地下水の流況
を解析するには詳細な観察が欠かせないが、今回の詳細調査では必要な情
報が欠落している。

14
地下水の流況を解析するには、報告書(案)の表4.13.4のように、地質と分析
値を関連づけた対比表が必要。

15
 結果が信用できない。

 指定調査機関が試料採取を行い、計量証明事業者が公定法に基づき分析を行っています。また、
精度管理により、分析結果の信頼性の確保も行われていることから、調査結果の信頼性は確保さ
れていると考えております。

16
 絞込調査では処理基準や排水基準を超過した地点のみ数ポイントを調査する
こととなっている。詳細調査でだけでは不十分なことは誰が見ても明らかであ
る。

 報告書(案)の9章で述べている対策に必要な要件を満たす上で、詳細調査および引き続き行われ
ている絞込調査の結果をもとにまとめた対策のあり方が行われれば、9.5で述べているように人の健
康リスクおよび食の安全・安心の観点から問題のない状態になると評価しています。

17
 調査項目について、5・6項目と極めて少なく限定されている。欧米諸国に比べても明らかに少なくこれで結論を出すのは無理がある。

 調査項目は、ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウムの7項目を基本とし、
油汚染に関する項目として油臭・油膜、全石油系炭化水素(TPH)、ベンゾ(a)ピレン、石油系芳香族
炭化水素画分を加え、木くず・タール混じり土壌および浚渫土のPCB、ダイオキシン類も調べてお
り、十分であると考えております。

18
 有楽町層についてまず既存の全データを公開し、地質学の専門家の多様な
意見を集約することをもとめます。
東京都の方で資料をまとめ公表致します。

19
 なぜこの土地に土壌汚染・地下水があるのか。汚染原因はなにか。ガス蒸留
および乾留による有害物質汚染の歴史を明らかにして欲しい。

 汚染原因として考えられる東京ガス(株)豊洲工場の操業履歴および有害物質の使用・排出状況等
を報告書(案)の中に記述しております。新市場予定地以外の有害物質汚染の歴史の整理について
は専門家会議による検討の対象外と考えております。

20
 先生の判断により調査を行い、全面にわたる土壌入れ替え、観測井戸の提言
案は、汚染の実態解決方法について明確にしたことはすばらしい結果であり
成果である。
一生涯この土地に住んだとしても生涯曝露による人の健康被害は防止され、生鮮食料品を扱う市
場となった場合でも食の安全・安心が十分確保されることを目標に、土壌と地下水の汚染対策を提
言しています。

詳細調査では、旧地盤面に対する表層部の土壌汚染状況を把握し、帯水層全体の地下水汚染状
況をスクリーニングすることを目的としました。この調査で絞り込まれた土壌汚染が存在している可
能性の高い範囲について、対策のための絞込調査で詳細な地質状況も確認されることになります。


http://www.shijou.metro.tokyo.jp/senmonkakaigi1/09/kaitou/kaitou.pdf

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